大槌町役場にてヒアリング

役場が被災したため、現在の大槌町役場は、津波被害(1階)、火災被害(2・3階)があった旧大槌小学校を、改修し小学校の建物をそっくり利用しています。改修費は膨大で、賛否が色々あったようです。
大槌町役場にて
ここには、東京大学の支援活動の拠点となる一室もあり、常駐して支援活動を担当している女性が明るく応対してくれました。また、東京大学が提供した実験用小型モビリティも置かれていました。
新大槌町役場東大の部屋
そして、会議室をお借りして、この4月1日付で就任された、大水敏弘副町長(復興担当)から復興の進捗状況と今後の計画についてお話を伺いました。
まず、「新しいまちを創るうえで、今回の津波でほとんどの中心エリアが影響を受けたために、一からやりたいようにできるため、計画段階から既成概念に捉われない発想を導入することが不可能ではないと考えている。例えば道路計画についても規制は横に置いて、住民がずっと住み続けるために良いとされるイメージを持ってもらえる計画を、大胆に描くことができる。つまり、防潮堤も無い段階で、”これなら良いね”、と感じてもらえる計画を提示したい。そのためにはスピードがとても重要であると考えている」と基本的な考え方を述べていただきました。
それに対して、鎌田先生からは「地域住民のニーズをしっかりと拾い、コミュニティが納得できる仕組みを考える必要があります。つまり、道路の整備計画だけでは住民のニーズには十分に応えられないわけで、そこではモビリティ(移動手段や需要ニーズ)を反映した路車一体の都市・交通計画が必須であると考えます」と述べられました。
また、石田先生からは、「超高齢社会を見据えて、とりわけ高台移転を想定した傾斜地の移動を念頭に置いた、大きく分けると、団地内の移動と団地以外の移動を十分に検討・検証し、それに対応するためには既存の規制を除外した大胆な施策を講ずることが大切です。そのためにお役にたてることがあれば、このモビリティ研究会は、純民間の研究団体ですから自由に発言することができますので、必要があればお申し出ください」と対応されました。
大槌町役場にて
加えて鎌田先生から「7月7日には小型モビリティの試乗会を計画しています。ぜひ、多くの住民の方や関係者方々に参加いただきたいと願っています」と提案されると、石田先生から「イギリスの多くの都市では、ショップモビリティと呼ばれる、商店街を自由に行き来するパーソナルモビリティを導入しているケースが一般的になっていて、歩道(歩行速度=時速6キロ)、車道(時速13キロ)、店内(ゆっくり)と移動の用途に合わせて速度を調整できる」という実例の紹介がありました。
そこでは、「道路側もバリアフリーの構造が徹底されていて、こうした高齢者の移動を想定した総合的な路車一体の整備と規制緩和(日本では、免許の要らない電動車いすは時速6キロで右側通行と決められている)が必要である。また、同時に、新しいパーソナルモビリティと公共交通の組み合わせが、団地内の移動と団地以外のストレスのない移動を可能にする」点を強調されました。
こうした提案に大水副町長は「警察も理解を示してくれている部分もあり、今後とも一層の協力を仰ぎたい」と返答され、最後に、「まちの中心核の再生、産業誘致と雇用の確保、被災者の皆さんの住居の高台移転、高齢者医療・介護、町内のモビリティ確保と広域連携など課題は山積する中で、施策の選択・決定時期が迫ってきており、複雑に絡み合う課題を一度に解決するためのシナリオを考えなければならない」との決意を語ってくれました。