高松市再訪


瀬戸内国際芸術祭で賑わう高松市は創意工夫で再開発計画を実践展開中です。
その活動の一環をサポートすべく、ふるさと財団では、地域再生事業として専門家を派遣しています。テーマは、「うみまち商店街を中心とした高松市中央卸売市場での賑わい創出事業」で、派遣した専門家は、株式会社JTB高松支店の山田裕木氏です。
さて、8月29日、再び訪問した今回の2年目の調査では、昨年度の現地調査と比べて、こうしたミッションを活かした“学びのプログラム”造成を目指しながら、サンポート高松エリアとの交通機関やルート検討調査、3品以上の商品開発とその開発に向けたワークショップ(飲食店等)の開催、学びのプログラム、ロゴ、HP等の制作を着実に実践展開してきた様子を説明頂きました。そして3年目の最終ゴールでは、年間食材廃棄量全体の1割近くの削減、年間売上900万円達成を目指しています。
さて、JTB直営の「クセノモズ」には、個人的にも数回訪問していますので何度目でしょうか、地元香川大学教育学部付属小学校の子どもたちと連携して、市場で流通されづらい魚(クセモノ)などを活用したカレー(「香川本鷹カレー」「瀬戸内ハモカレー」)を開発した二品を、今回は、半々で合いかけしてもらい超激辛のタイカレーを汗をかきながら頂きました(サラダ付きで1,000円をお支払いいたしました)。昼食を済ませて、うみまち商店街内店舗(クセモノズ)の2階にある、クセモノズ SICSサステナブルラウンジで現地調査会が開催されました。冒頭、本財団のアドバイザーとして、私から、一言ご挨拶を申し上げました。続いて、高松市の産業経済部高松市中央卸売市場の高尾昌伸市場長から挨拶を受けました。次に高松市より、調査の行程と内容について説明があり、まちづくり連携協定を結んだ高松市さんとJTBさんから豊富な資料でレクチャーを頂き、納得できる熟議の時間を持ちました。こうした豊富な資料に基づく丁寧な説明は高く評価できると感心いたしました。
さて、高松市の中央卸売市場の施設は、建設から40年以上が経過し、老朽化が進んでいます。高松市が策定した「高松市中央卸売市場再整備基本構想・基本計画」では、「瀬戸内の食の発信拠点」として、魅力と活力にあふれた機能的に持続可能な新しい市場を目指す事業を推進しています。一方で、一次産業の担い手不足や高齢化、食料消費の変化、消費者ニーズの多様化等が進行し、漁業取引は減少しています。これらの課題を解決し持続可能な市場としていくため、農林水産業振興による地域活性化が必要不可欠と考え、中央卸売市場のさらなる“食の発信拠点化”推進にむけ、市の中心市街地からの人流確保や利用者の滞在時間の延長による交流人口拡大への取り組みの実現を目指します。
そこでは、中心市街地からの交通強化や市場との親和性が高く魅力のある新たなビジネスコンテンツの創出を行うために、ふるさと財団地域再生事業を活用して、交流人口拡大に向けた中央卸売市場のポテンシャル調査、商品開発+販売マーケティングにより市場でのムダの発生状況とコスト整理、無駄な商材を活かす商品開発、こうした取り組みを情報発信するためのロゴ、HP、冊子物等作成、食を通じて地球の環境や豊かな資源を知り、持続可能性を考える機会の創出をブランディング活動として展開中です。
例えば「香川本鷹カレー」「瀬戸内ハモカレー」の取組は広くメディアで取り上げられました。この実績により、アドバイザーの立場からは、うみまち商店街のPRや社会へのSDGs、サステナブルな意識の醸成に繋げることができたと評価しています。現在はレトルトカレーとしてJTBが民間主導で販売を実施しており、好評につき完売の予定であり、次の商品開発に入っているのと説明を受けました。
さらに、現在、高松市内では、アリーナの建設、大学誘致を含めた東部の“高松サンポートエリア”の開発が進められ、インバウンドを含めた多くの来訪者が見込まれています。このエリアと市場との交通アクセスを令和8年度に向上させることを前提に、市場の年間入込客を、現在の6.9万人から令和10年度10万人に引き上げ、持続可能な市場にすることを目指すことにしています。そして、地域への環境配慮から農林水産物を循環する資源に変えていくと同時に、市場内事業者の経営を圧迫している農林水産物の廃棄コスト削減による経営改善と、取組自体のブランディングによる売上増を目指すことにより、ビジネスを創出する流れを創出しています。
さて、高松市では、青果市場の建て替えで使わなくなった市場跡地に大改装中の「屋島水族館」の動物や魚を移動して「市場水族館」を運営しています。本市屋島にある屋島水族館は、施設の老朽化に伴い、2025年4月7日から改修工事のため休館し、2027年春にリニューアルオープンする予定であり、休館期間中、本市市場の旧青果棟跡地に、仮設の「市場水族館」として、ペンギンやカワウソなどの小型の生き物を展示しています。新たな賑わい創出の場となっている「市場水族館」や本事業で実施予定であるチャーター船を活用した実証実験及び遊漁船等を活用した海業体験プログラム開発の発着点となる専用桟橋等を視察させて頂きました。
また、高松市中央卸売市場本市の交通結節点であるサンポート高松エリアでは、JR高松駅直結の商業施設「高松オルネ」や中四国最大級の収容人数を誇る新香川県立体育館「あなぶきアリーナ香川」等が完成し、同アリーナでは、サザンオールスターズ、乃木坂48のコンサートの次は、小田和正コンサートが企画されているとのことです。こうして、人流が増加している経済効果を更に活かす流れを醸成することが求められています。今後は、外資系高級ホテルの開業が予定されている等、より賑わいのあるエリアになることが期待されています。
さらに、今回の視察日は、瀬戸内国際芸術祭開催期間中であり、女木島を中心に視察させて頂きました。高松漁港では、瀬戸内漁協の湊谷氏の底引き網漁船に乗船体験させて頂きました。今後は、本船を活かすなどして、漁業体験や海苔の収穫製造体験などの体験型プログラムを計画中です。さらに、本事業の目玉である「うみまち商店街桟橋と男木島・女木島を結ぶ航路及び高松港を結ぶ航路の2ルート実証実験」に一つ、うみまち商店街のある漁港から女木島までの往路をチャーター船で実走させて頂きました(もう一つのルートは、8月30日、高松市大西秀人市長が乗船して実証実験、市長と共に乗船予定であった、ふるさと財団の末宗徹郎理事長は新型コロナに感染のため欠席)。この瀬戸内国際芸術祭を活かした新たな観光ルートプランとコンテンツ開発の進捗状況を実査では、女木島&男木島を高松市、JTB、ふるさと財団、香川大学(4年生2名)の混成チームで訪れました。海上ルートからの観光ポテンシャル調査では、この体験の満足感は予想を上回る感動と感激を頂きました。すなわち、風光明媚な瀬戸内の多島美の景観を活かした航路が新たな人流のコンテンツになる事に期待しました。
県都高松市全体の再開発計画は壮大であり、本財団のサポートは、その一部です。一方で、高松市のご担当に解説を頂きながら多面多角な視座から意見や感想を出し合い大いに学びを得ることができました。
益々の本事業の成功を祈念しながら、お骨折り頂いた高松市様、JTB様に感謝いたしました。

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