広島県府中市訪問(10月22日)

朝一番、ホテルの傍のJR福塩線の府中駅界隈を散歩いたしました。通学時間帯には早く、列車を待つ古老のご夫婦が一組おられました。


10月22日の地元紙中国新聞の朝刊で「芸備・福塩線70駅カードに~明日から配布 対策協、乗車促す」の記事を見つけました。人口減少、過疎化が進み、全国でローカル線存続か廃止の議論が進んでいます。運転免許が無い高校生の通学の足や運転免許を返納した高齢者の病院通いなど、地域の足を如何に確保するかは駅を有する全ての自治体が県境を超えて同じ円卓で議論すべき事案だと改めて思料した次第です。日本の公共交通システムでは、広域連携をしなければローカル線を守ることができない時代が到来しています。

さて、8時20分に府中市の方がホテルまで迎えに来てくださいました。
二日目は府中市内の観光拠点として再活用を目指す老舗旅館「恋しき」視察です。
府中市のHPから抜粋させて頂きますと「恋しき」は、「明治5年、土井利助が恋しきの原型である「旅館土生屋」を開業。その後、当時の財界人・延藤友三郎の提案により名前を「恋しき」と改名します。(中略)大正7年には当時のお金で2万円と言う大金を投入。高僧が母屋の3階から指揮を取り庭園を整備し備後エリアのシンボルとしてその名を広く知れ渡ることとなります。当時、数多くの政治家、文化人が訪れ、犬養毅や岸信介、福田赳夫といった歴代の総理経験者や鳩山威一朗などの大物政治家も宿泊した記録が残っています。文化人では井伏鱒二、吉川英治、田山花袋などの作家、人間国宝の狂言師・茂山千作や備前焼の重鎮で人間国宝の金重陶陽の名前が宿泊者名簿にあります。こうして一時代を築いた恋しきは登録有形文化財基準の「再現することが容易でないもの」に該当するとし登録文化財となり、府中市のシンボルとなりました。」とあります。


また、施設は「760坪の敷地内には本館と4つの離れに囲まれた300坪の日本庭園があります。 犬養毅や井伏鱒二などの政治家や文化人が多く訪れ、府中の歩んだ歴史が刻まれた貴重な文化遺産であり、 国登録有形文化財(建造物)に登録されています。現在は、本館及び離れの貸館・貸室を中心とした事業に加え、庭園はどなたでも無料で観覧していただけます。」とあります。


この文化財の維持・運営には相当の費用が必要であると容易に想像できます。館内を隅々までご案内頂きながら、丁寧な説明を頂きました。そして、2階の広間でミーティングを開始、市の担当者と観光協会から現状と課題、そして将来に向けたビジョンをお聞かせいただき、さらに地域再生マネージャー養父信夫代表理事から、今後の「恋しき」の有効活用による府中市の観光振興、地方創生に向けたプランの説明と提案を受けました。特に府中市は産業の盛んな土地柄であり、伝統のものづくりを伝承する企業や世界をリードする技術を有する多くの企業が地域経済を支えてこられています。観光振興プランでは、電動のベロタクシーやシティサイクルを利用して、まちなかを回遊してもらい、その拠点として木工や家具、仏壇などの職人の技を見学頂き、さらに味噌や菓子などの食、神社仏閣などを巡るプランの説明がありました。


小職からは、岡山市のコミュニティサイクルによる回遊性の向上による地方創生や美作市の電動超小型モビリティ活用による棚田観光の話題、SDGsを視座に置いた真庭市のバイオマス発電を軸とした産業観光、倉敷市水島のコンビナートと瀬戸内海を活かした滞在型環境学習への取組み、井原市の美星天文台と中世夢が原を活用した食を加えた観光誘致、岡山市後楽園のお庭を活かした地元の食材と備前焼を活かしたグルメの会の開催や七五三の前撮りスポットとしての有効活用などで実績を積んでいる事例など、いくつかの話題を提供させて頂きました。

また、岡山シーガルズとの関係では、シーガルズが子供たち向けはもとより、中国銀行支店長会議や企業経営者向けセミナー、岡山大学の授業などで幅広く講演活動を重ね、またFM岡山でのトークショーなどで人気を博していることをお伝えいたし、子供バレーボール教室の開催に合わせた大広間を使ったファン向けの講演会やトークショー企画(河本昭義監督や現役選手、OG、そしてロンドン五輪メダリストの山口舞さん)開催の可能性についてご提案申し上げました。


お昼は、「恋しき」の隣にオープンしている「あわけん」さんで、府中名物の「府中お好み焼き」を食しながら、関係者の皆様と懇親を深めさせて頂きました。広島のお好み焼きとは趣が異なり、パリパリ感と油の生地への染みが絶妙です。美味なる府中焼きを堪能させて頂きました。府中市民の市民食であると説明を受けました。

観光誘致には、食は欠かすことができません。この府中焼きに加えて、数々のご当地の味が開発されることを祈念いたしました。
市や観光協会の皆様に御礼と再会をお約束申し上げ、失礼いたしました。
地域の皆様方の地方創生への「覚悟」をひしひしと感じた視察でありました。