岡山大学地域総合研究センターでは、グローバル実践型教育の一つとして、6月2日から、岡山県や県内企業と協力して、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)からCo-opプログラム「Coop in Okayama」の学生2人(マットさんとヒューさん)を受け入れました。6月15日から、「森林利用グローバルインターンシップ」を受講する学生たちとともに、2ヶ月間以上にわたって、県内における林業、林産業の企業や研究機関などでインターンシップを開始、企業の現場で実務経験を通して、地球環境の改善・保全に欠かせない森林の機能と特性を理解し、持続可能な開発による森林資源の利用についての課題や展望を学んでいます。その最初の実務経験先である、服部興業山林部さんへ、学びの様子を見学、ヒアリングに参りました。現地では、荒木勝理事・副学長自らが、留学生や協力頂いている皆さんに、突っ込んだヒアリングをさせて頂きました。
CO-OPプログラムでは、実際の伐採作業と同じように、まず、作業エリアを確定させます。そして、倒木する木に目印を付けてゆく作業からスタートします。その目利きについては、UBCのヒューさんは、既にカナダの林産企業でCO-OPプログラムの経験を持つため、良いセンスであると評価を頂きました。こうして、例えば、ROAD1(売上目標100万円)、ROAD2(売上目標80万円)、ROAD3(現在の作業)といったように、エリアごと、作業ごとに作業表とコスト表が作成されます。その理由は、生産性を落とさないように作業を実施するためです。また、雨が降ったら伐倒作業は出来ませんが、機械は止まっていてもコストを計算しなければならないため、その他の炭焼きや製材作業なども織り込んで、そこへ人件費を入れ、伐倒した木の販売価格などを入れて作業工程と試算表が作成されています。今回は、学生たちの人件費を入れずに試算されました。また、指導する負担の分は考慮して計算されているとの説明を受けました。
これまでの作業をまとめると、初日15日(月)は、選木作業です。木の種類は杉とヒノキの2種です。カナダではヒノキは珍しく、イエローパイン(松)が主流とのこと。また、チェーンソーの基本指導や実際のチェーンソーの使い方を練習しました。日本に比べカナダは、木が大きい分、チェーンソーのサイズも大きいそうです。16日(火)から間伐作業を実施、実際に、受け口、追い口など、指導頂いた知識を現場で試しながら、1人あたり2本伐倒したと報告がありました。こうした間伐的な作業はカナダでは少ないとヒューさんが話してくれました。また、倒木した木については、枝打ちはしていないが、一方で、ふもとへ下ろすためワイヤーをかける作業について実施しました。17日(水)は、ヒノキの選木と間伐作業を行い、うまく倒れず、他の木に引っかかったケースも出たようです。この日ヒューさんは、6-7本を、岡大生女性2人は4本を倒木したと報告。また、チェーンソーの目立て作業を行い、午後4時に作業終了したとのことです。宿舎へ戻った後は、交代制で洗濯やご飯を作るなど、日常生活も3人で分担しているとの説明も受けました。18日(木)は、雨で作業が出来なかったため、炭焼き作業を体験しました。カナダにも似たものはあるが、中国から輸入することが多く、あまり自分達では作らないようです。
実際の作業では、細い木を釜の中へ立て横びっしりと並べ、レンガと粘土で釜を完全に閉じて、一気に燃焼させるそうです。この炭作りについては、廃材を捨てるのはもったいないので、炭にして、最近では、売り出しています。儲けはあまり無いそうですが、特に、雨の日の業務を創出する目的があるそうです(晴れた作業が出来る日数を業務日とする考え方から、土日を休日にする労働条件改善の観点から効果がある)。現在の作業は、ROAD3であり、あと4日で終了する予定です。切り出した原木は未だ市場へは出していないので、来週は、ランバーマーケットまで市場現場の視察に案内頂く予定です。
さて、働き度についての評価について質問しました。その点については、「いまの段階では、給料計算は難しい。その理由は、この業務を理解するには、最低でも1ヶ月はかかるためで、現在は現場の指示で的確に動く、安全に作業をしてもらうことに心がけています。」とのコメントでした。その一方で、「作業メンバーのKさんが研修のため現場から1週間抜けるため、作業体制には工夫をしなければならないが、その抜ける分、受け入れた学生たちで工夫して、穴を埋めてもらえる可能性はある。また、木を切り出す際の手助けに感謝している。人件費を入れるとしんどいが、それは通常の新人の場合でも同じである。そして自分が出来ることを探している点が、すばらしい」と言っていただき少し安心しました。
マットさんの感想は、「カナダBC州には大きな製材企業が5社あり、作業工程やコンセプトは日本と似ているが、スケールとオペレーションの仕方が違う。つまり、日本とカナダの違いは、カナダは分業が基本で、単一の作業に熟練することが求められる。一方、日本は、チームで作業全体に携わる仕組みである点が違う。つまり、カナダは担当者が同じ作業に従事するが、日本は全ての作業をこなす。そこでは、お互いを見て、次は何をすべきかチームワークを重視することが大事である。また、日本は、細かいところまで配慮された作業労働であり、とても良い体験がつめている。さらに、効率性を考えながら作業をしている。運び方、コスト管理がすごいと感じた。知らないことばかりながら、機械をうまく動かしている。先のことを考えて動けることは、とても大事であり、1週間ごとにコストを考えるようにしている。」
こうしたヒアリングを済ませ、お楽しみのバーベキューを服部興業さんが準備してくださいました。関係者の方はもとより、その家族の皆さんも手料理を作って、もてなしてくださいました。なるべく日本語で会話をしながら、湖畔の別荘のバルコニーデッキで食事を楽しみました。カジカの鳴き声と蛍が飛び交う様に感動です。
とても貴重な経験と時間を過ごしていることを理解できました。
服部興業様の心使いに深く感謝申し上げ就寝しました。
朝は、学生たちが朝食を準備してくれました。
記念写真を撮って失礼しました。