12月6~7日、金沢・熊本・岡山三都市「学都シンポジウムin金沢」への参加のため、夕方の便で学生たちと金沢へ向かいました。
新大阪でサンダーバードに乗り継ぎました。湖西線が強風で不通のため米原まわりで向かうこととなりました。雪で止まらねばヨシとしなければなりません。車中の学生たちは元気で、話題が尽きず、ずっとおしゃべりをしていました。ようやく11時前に到着いたしました。まずは、無事の到着を祝して北陸新幹線の開業を待つ金沢駅で記念撮影です。
シンポジウム当日、学都金沢は12月にしては、まとまった大雪が降ったとのニュースをみました。まず翌朝8時にホテルロビーに集合して、雪が舞い散る中をまち歩きに出かけました。岡山のまちを活性化させるためのヒントを得ることが大きな目的です。
自治体と学生たちの連携がどのように図られているかを現場で学ぶことも大きな授業の目的といたしました。学生たちは、加賀百万石の市民の台所である「近江町市場」、新たなデザインで人気を集める「竪町商店街」、金沢市「学生のまち市民交流館」を視察して回りました。新たな発見と体験を積むことができました。その様子は別添の資料を参考にしてください。
▲ 近江町市場
▲ 竪町商店街
▲ 学生のまち市民交流館
さて、午後から開催されたシンポジウムでは、まず開会挨拶に開催校を代表して、金沢大学 福森義宏 理事・副学長(社会貢献担当)が立たれ、三都市をテーマとしたシンポジウムは平成17年に始まりこれまで定期的に開催してきたこと、そして今回は金沢で開催する運びとなった経緯をご披露くださいました。そして金沢大学のキャンパスは城内にあった当時から地域とのつながりは強く、現在総合移転をした後も、金沢の文化的な発展への貢献をしていると自負しており、金沢市には条例もあり学生は様々な活動に参加し、大学としても参画していること、そして人口当たりの学校数や大学数は全国的にも多く、また大学コンソーシアム石川の立ち上げ等、様々な取り組みをしている様子を紹介くださいました。さらに、平成25年度知(地)の拠点整備(COC)事業に採択され、全学的に地域を志向した地域貢献をすることで地域の感性を備えた地域をつなぐ知(地)の拠点を目指して実施していることを引用されながら、本シンポジウムはこの知(地)の拠点整備事業の一環として開催し、新しい学都の創立、三地域の連携に大きな可能性を感じているとの想いを会場へお伝えくださいました。
▲ 横山壽一センター長
続いて、金沢大学地域連携推進センターの横山壽一センター長より、シンポジウムの目的と趣旨説明が下記のとおりありました。
- あらためて「学都」とは何か、学都の創生とは何かを明らかにし、3都市・3大学がめざす、共通の大学像、都市像を確認する。
- 「学都」研究(岡山大学)「学都」創造(熊本大学)などの成果を共有するとともに、その成果及びそれぞれの都市・大学の特色を踏まえて、「学都」のコンセプトをより明確化する。
- 学生・市民が考える学都とまちづくりを積極的に問題提起してもらい、大学のみならず学生・市民とも共有できる「学都」像を明らかにする。
- それぞれの都市・大学が「学都」の創生・創造に向けて今後取り組んでいくべき課題と方向性を明らかにする。
さて、第一部では、まず「 学都とは何か-各都市の特徴と学生の気質-学都研究から見えてきたもの 学都岡山の実現可能性について-」千田俊樹先生(岡山大学地域総合研究センター教授)が、「西川緑道公園&西川アゴラの取り組みについて」石田尚昭氏(岡山市都市整備局審議監)が、「学都・熊本について」冨士川一裕先生(熊本大学工学部まちなか工房特任教員)が話題提供をされました。富士川先生のお話を紹介しますと、「くまモンが「学モン都市クマモト」と言っている。くまもと都市戦略会議は2010年から行っており、その議論の中で生まれてきたポスターである。様々な取り組みをしており、すでに終わった取り組みもある。政創研という組織が熊本大学として地域を支援している。熊本まちなみトラストを1997年に立ち上げ、熊本大学や熊本学園大学、崇城大学と地域が連携している。また、新町古町町屋再生も2007年から取り組み、地域・学生も参加している。町屋体験のイベントでは県立大学生が居住を開始(2010年)している。清掃活動やライトアップ等も学生が行っている。熊本学園大学がNPOを立ち上げ、ベロタクシーの運行を開始した(2007~2010年)。熊本大学は五校記念館をはじめ学都にふさわしい活動をしている。
小泉八雲が3年間英語教員として来ていた頃「極東の将来」という講演をして九州魂の必要性を説いた。その後、夏目漱石も英語教員として赴任し漱石が通った本屋さんを題材にした演劇を先日行った。熊本大学は市内に点在している。市役所を中心に2㎞圏内にある。他の大学もこの中にある。2005年に熊本大学まちなか工房をさらに中心部に作った。研究・教育と連動した地域情報の蓄積(セミパブリックスペースの研究等)、官民まちづくり、市民との定例の学習会(すでに100回を超えている)、まちづくり活動支援等は日常的に行っている。この取り組みはまちづくり大賞をいただいた。県単位で学生数を考えると低いが、市単位で学生数を考えると圧倒的に多い(岡山・金沢との比較において)。学生に学都について聞いてみた(数名だが…)ところ、学都を感じるのは「街中で研究しているとき」、いいまちと感じるのは「大学や暮らし中に町があると感じるとき」だと回答があった。(岡山大学佐藤大介先生議事録より)」といった具体的な取り組みを熱談くださいました。
さらに、浅野秀重先生(金沢大学地域連携推進センター副センター長)から「個性のある学習文化都市 金沢」、西川和宏氏(都市環境マネジメント研究所主任研究員)から「雑誌『學都』の取り組みから」と続き、第1部が終了しました。
休憩をはさみ、第2部の総合ディスカッションは、ワークショップ形式で開催され、冒頭で、松下重雄先生(金沢大学地域連携推進センター准教授)から、全体の説明、さらにきっかけ作りとして溝上章志先生(熊本大学工学部教授)が、「学都」にまつわる問題提起をされました。こうしてチームに分かれて白熱した議論が展開されました。
その質疑応答、問題提起の内容をご紹介しますと下記のとおりです(岡山大学佐藤大介先生議事録より)。
こうして、活気あふれる報告が各グループよりなされ、最後に、熊本大学 両角光男 理事・副学長(人事・労務、企画、組織、情報化、広報担当)と岡山大学 荒木勝 理事・副学長(社会貢献・国際担当)から感想とコメントがありました。
▲ 熊本大学 両角光男 理事・副学長(手前)と岡山大学 荒木勝理事・副学長
結びとして、横山壽一(金沢大学地域連携推進センター長)より「第一部では学都をどうとらえるか地域ごとに考えてもらった。第二部では学生の目線で考えてもらった。学生から積極的な発言がありシンポジウム開催の趣旨は果たせた。学都の定義について何か見出そうとしたわけではない。三都市と言った時に魅力ある地域をどう作るか、魅力ある大学をどう作るか、という視点が中心である。学都は一側面である。たくさんのことを考えるきっかけが生まれる言葉だと感じている。多くの大学が知識を集積し、学生が生活し、地域が歴史や文化遺産が蓄積し、それらが出会うとき、新しいものが生まれる。そして、新しい大学や地域が生まれてくるものだと感じる。総合的に結びつくとはどういった方法が考えられるかは創造的な活動である。知の力、学ぶ機会が生かされていくことによって、大学がある新しい地域を作っていくことができ、大学としても新しい研究や学びのスタイルを作り出すことができる関係だと考えている。こうした発展を地域の違いはあれど潜在的な可能性を持っている。新しい関係や元々ある魅力をどう引き出すか、創造的な取り組みが求められている。学都はかつて言われていることを思い出す活動ではなく、学都という言葉が使われる中で、問い直されてきている。学都をどうとらえ、どうしていくかといった議論によって、一つの方向を探りあうことが、学都・地域を作り上げていくことになる。来年度は熊本大学が引き受けていただくことで了解をいただいた。学生の力でシンポジウム開催という意見もあったので、そういったことも考えて、また違った形で議論が展開できるようにしていきたい。」と挨拶され閉会となりました。
心配された雪によるトラブルもなく、大きな成果をあげることができたシンポジウムでした。開催校の金沢大学はじめ関係者の皆様方に、心より深く感謝申し上げます。本当にありがとうございました。