10月18~19日、今回で第6回となる「地域包括医療ケア」ワークショップが、今年度は瀬戸内市裳掛地区を訪れ開催されました。合言葉は、「いま何かが始まる」です。学生たちが地域へ出かけて、地域の皆様から地域包括医療ケアへの取組状況や課題をお聞きして、ワークショップを開催して解決策を考える活動です。今回は、岡山大学、川崎医療福祉大学、美作大学、旭川荘厚生専門学院の学生たちと教職員総勢50名ほどの参加がありました。
▲ 縁路香(よりみちかおり)
まず、裳掛地区小規模多機能施設「縁路香(よりみちかおり)」を見学させていただきました。ここ縁路香さんは、「住み慣れたところで、そこに住む人々と共に、いきいきとした生活を送れる等、小さくても確かなサービス、心の豊かさを大切に、共に支えあい共に育つ介護を提供します。」をモットーに、「1.小さな声にも心の声にも耳を傾けながらいつでも傍に寄り添います。2.笑顔を絶えない毎日の生活をお手伝いします。3.温かい我が家のような生活空間を作ります。4.専門的知識で安全な介護を提供します。」を目指す施設です。とてもアットホームな雰囲気で、施設に通う高齢者の皆さんも「家族や周囲に見守られながら看取られる」幸せを感じることができる活動を展開されています。学生たちは、熱心に施設仕組みや活動の内容についてヒアリングやインタビューをさせていただきました。その後、一旦、宿泊先の「いこいの村」へチェックイン、昼食を済ませたあとで、午後からは、長島愛生園の見学へ向かいました。ハンセン病についてのガイドを頂きながら、ひと通り、施設の見学をさせていただきました。
HPから藤田邦雄園長のご挨拶を引用しますと「長島愛生園では現在300人近い入所者が療養生活をおくっています。この方たちの病気の治療を行い、生活のお世話をすることが愛生園の役目です。ハンセン病そのものは完全に治っていて菌のある人はいませんが、後遺症のために目が見えなかったり、手・足の動きや感覚が鈍くなるなど何かの障害のある人がほとんどです。さらに高齢(平均年齢82.8歳)のため病気や体の不自由さが増しています。
故郷や家族のもとに帰ることができないのは、体の障害のためだけではありません。1930年に長島愛生園はハンセン病の患者さんを集めて治療する目的でできました。国が作った療養所は13ありますがその第1号でした。当時はよい治療法がありませんでしたが、1948年頃からよく効く薬があらわれ次第に治る人が多くなってきました。若くて障害の少ない人は退所しましたが、世の中のハンセン病に対する偏見・差別はあい変らずきびしく、ハンセン病であったことを隠して社会の中で生活しなければなりませんでした。外見で障害がわかるような人は、家族にまでも偏見・差別の被害がおよぶことを恐れて退所できませんでした。国もこの状況をなおすことができないままに40年あまりが過ぎ、1996年にようやく入所者が自由に社会に出ることができるようになりました。しかしそのときには平均年齢は70歳をこえていたのです。年齢や今もある偏見・差別のためにほとんどの入所者の皆さんは、ここで生涯を過ごすことになります。
▲ 収容所と収容桟橋(右下)
このような不幸なことが今後起こらないようにすることが大切で、人権啓発活動に力を入れています。2003年8月長島愛生園歴史館を開館し、愛生園にのこる多くの資料を展示しハンセン病とそれを取り巻く問題についてわかりやすく説明しています。ぜひ一度おいでください。」とあります。
▲ 居住棟と歴史館
現在、瀬戸内市では、長島愛生園が人権擁護活動の一環、つまり、こうした差別をなくすためのシンボルとなるように保存を含め、世界遺産への登録を目指そうとする動きがあります。施設見学コースでの学芸員の方のガイドや歴史館の拝観を通じて、学生たちは真剣に耳を傾け、意見交換をしていました。
さて、見学を終えて「いこいの村」へ戻り、浜田淳医学部教授の挨拶により、地元の皆様方をお迎えしてのパネルディスカッションとワークショップが始まりました。
午前中に見学をさせていただいた「縁路香(よりみちかおり)」の久本澄子取締役看護師さんから、活動の実際と今後の方向性について話題提供をいただきました。また、いつも学生たちがお世話になっていますコミュニティ会議の服部靖会長から裳掛地区における医療介護の課題や地域での見守り活動の実態、そして学生に対する期待が述べられるなど、ざっくばらんな意見を頂戴しました。学生からも意見や質疑が出されました。その議論を踏まえて、7グループに分かれてワークショップに入りました。討論を行った後、チームごとに発表とまとめを行いました。予定時間を1時間以上オーバーするなど、会場は白熱した雰囲気に包まれました。
もちろん、終了後の夕食会は大いに盛り上がり、議論は深夜にまで及びました。
▲ 的野絹代主幹(右下)
さて、翌日も地域の皆さんにお集まりいただき、昨日の議論のテーマをより具体的にして解決策の深掘りにかかります。また、瀬戸内市保健福祉部トータルサポートセンター準備室の的野絹代主幹からも瀬戸内市における「地域包括医療ケア」活動の実際について話題提供をいただくことができました。創意工夫を凝らした行政サービスを展開されている様子に、学生たちから何度も感嘆の声があがりました。
第6回「地域包括医療ケア」ワークショップin瀬戸内市裳掛
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