今回の協議会のテーマは、オープンに伴う周辺の交通渋滞対策についてでした。
6月9日、岡山商工会議所401号会議室で開催された協議会では岡山県警とイオンそれぞれから、交通渋滞を回避するための諸施策について報告がなされました。岡山県警からは岡山市の交通事故発生状況では、人口10万人当たり政令指定都市比較では、岡山市は[1]死者数ワースト1位(平成24・25年)、[2]交通事故件数ワースト2位(平成24・25年)となっており、交通事故の発生が大変に多い都市であるといえます。それを踏まえながら、岡山市中心市街地の渋滞予想イメージ(交通量は立地法指針予測値の2倍)を推計した地図が示され、相当な交通渋滞が予想されるとの見解が示されました。
市民生活等への影響としては、輸送物流環境・緊急車両の円滑な輸送に支障をきたす懸念が示されました。つまり、トラックなどの物流に支障がでる可能性、公共交通の生命線である「定時定速」運行への影響は大問題であるといえます。特に岡山駅は中四国最大の交通結節点であり、新幹線や飛行場へのアクセスに支障が出ると、イオンに関係のない一般の市民や来街者、救急救命やビジネスに影響が出ることは極力避けなければなりません。また、主要幹線道路が渋滞すると、生活道路へ通過交通車両が流入することによる住民の安全への影響も心配です。
「岡山市中心部交通総合対策連絡協議会」が平成25年1月21日に設立され、道路管理者、自治体、教育、警察、公共交通機関、そしてアドバイザーとして岡山大学から環境理工学部の橋本成仁准教授、岡山商工会議所などで構成されて、こうした課題への対応策を協議しています。事務局は岡山県警の交通規制課です。こうしたなかでの、交通対策基本指針は、[1]公共交通機関の利用促進による交通送料抑制、[2]道路改良・交通規制・信号制御等による車両通行の滞留の抑制、[3]生活道路等への車両流入抑制による市民生活の安全確保、と決定され具体策の実施・展開が進められています。
一方で、イオンからイオンモール岡山の通常期交通手段別分担率では、年間来店客数を2000万人として、おおよそ徒歩10%、自転車20%、自動車30%、公共交通40%と予測しています。また、開業当初の交通手段別分担率では、岡山県警のアンケート調査の結果が自家用車利用による来店を73%、また、岡山経済研究所(中国銀行シンクタンク)調査が50%、イオン予測が51%として注目が集まっています。
岡山県警とイオン双方からの報告後、質疑応答の時間がとられました。同協議会アドバイザーとして、小職からは、開業当初は渋滞と混乱が予想されるため、開業後も引き続き「岡山市中心部交通総合対策連絡協議会」などの関係機関が継続的に状況を把握し、その情報を共有しながら広く市民に正確な情報の提供を続けてゆく必要がある点を強調させていただきました。
これは、経験値により自家用車での来店に必要以上に時間がかかると判断した人は、自家用車をやめて、公共交通機関や自転車を利用するように行動を変化させることが考えられるためです。具体にはドイツ南部のシュトゥットガルト市(ベンツ、ポルシェの本社がある都市)にある「総合交通マネジメントセンター」(注)の例を紹介申し上げました。
今回は車の話題が主でしたが、本来は歩行者、自転車、公共交通とした議論を優先して検討する必要があります。また同時に交通弱者対策が求められます。特に、交通渋滞が発生する中で、不測の事態が発生した際に救急車など緊急車両を安全・円滑に通行させるための具体的な施策について質問させていただきました。
今後の施策の進捗状況を注視してまいりたいと思います。
岡山商工会議所「イオンモール岡山出店協議会」開催
注:総合交通マネジメントセンター:シュトゥットガルト市では、2000年に発生した火災が、交通に与えた影響の大きさ(交通マヒ発生)から、交通に関係する組織の多様さと連携の難しさを学んだ。その経験を活かして、2001年に交通および危機管理機能を集約した総合交通マネジメントセンターである「IVLZ(Integrated Traffic Management Center Stuttgart)」が設立された。この総合的な施設が有する機能は、交通管理と危機対応のため、行政、警察、消防、交通事業者という複数組織を一つの建物、一つのフロアに集結させ、総合的で効果的なモビリティマネジメントを実現した点である。こうして、まち全体の交通管制を一手に担い、多様なモビリティの連携を支えている。2002年に業務が開始され、2006年のワールドカップ開催に合わせて事業を本格化した(現在の施設が完成、消防・救急組織も同じ場所に移転)。