一橋大学にて念願を果たす

日本金融学会2013年度春季大会

5月25日・26日、日本金融学会の2013年度春季大会が東京国立市にある一橋大学を会場に開催されました。初日、セッション:日本の金融システム(D会場 24教室)にて「労働金庫の財務分析」をテーマに報告させていただきました。
司会は立命館大学の青野幸平先生、討論者は昨年の2012年春季大会に続いて横浜市立大学の藤野次雄先生にお願いいたしました。現在、九州大学の博士課程でご指導いただいている川波洋一先生も顔を出してくれました。また、小職に続いての報告者は、社団法人金融財政事情研究会時代に、オプション取引の書籍を執筆いただいた俊野雅司氏でした(当時は大和総研、現在は成蹊大学教授)。彼とは、生まれが愛媛県、年齢も同じということもあり旧知の仲です。とは申せ、彼は東京大学から、シカゴ大学ロースクール留学、早稲田大学で博士号取得といった、いわゆる天才かつ人格者であります。久しぶりの再会と、二人共、念願かなって大学教員になれたことを喜び合いました。
さて、今回の学会報告を実は心待ちにしていた理由があります。それは、小職は学生時代、4年間、国立市(一橋大学の裏辺り)にアパートを借りておりました。また、現在の自宅も一橋大学の裏門(教職員官舎出口)から、徒歩で10分ほどにあるため、若い頃から一橋大学の学園祭や国立音楽祭などの催事に参加したり、子供たちを散歩に連れて行ったりした経験は数えきれません。
一橋大学にて
大学生の頃、” 一生に一度で良いから、一橋大学の教壇に立つことができたらなあ ” と心のなかで呟いたものです。報告の内容や出来不出来はともかく、念願が叶ったわけです。これまで幾度か、様々な学会や研究会で報告や講演をさせていただきましたが、最も思い出に残る一日となりました。「念ずれば花開く」素直に嬉しかったのです。
一橋大学にて
二日目は、黒田東彦日本銀行総裁の講演がありました。演題は、「量的・質的金融緩和と金融システム」─ 活力ある金融システムの実現に向けて─です。黒田総裁によれば、「金融システムの安定」については、「現状、わが国の金融システムは、安定性の面で大きな問題が生じているとはみていない」と前置きしながらも、「金融機関は、主力の貸出業務において、収益性が低下を続けるという課題に直面している」点を指摘されました。こうした貸出が伸び悩む中で、「信用リスクは減少するも、債券投資に伴う金利リスクが増す環境のもとで、『量的・質的金融緩和』により、前向きな経済活動が広がれば、金融機関業務にも活気が出始めるはず」と持論を展開されました。
しかし、多くの学者が指摘するとおり、「量的・質的金融緩和」は一種の劇薬である点も懸念され、後遺症が発生すると、後戻りができないところまで、日本経済は毀損する可能性もあります。また、日本銀行のプルーデンス政策(監督や規制による民間金融機関経営の健全化を念頭においた金融システム全体の安定化を目的とした諸施策)についても、「消費者物価の前年比上昇率2%を物価安定の目標として、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」という基本政策について、[1]金融市場調節の目標を、「金利」から、マネタリーベースという「量」に変更して、年間約60~70 兆円のペースで増加させるために、日本銀行が、長期国債を年間約50 兆円のペースで増加するよう買い入れる。[2]「質」の面では、長期国債の買入れ対象を超長期の40年債にまで拡大、買入れの平均残存期間を3年弱から7年程度に延長する。[3]ETF注1とJ-REIT注2を各年間約1兆円、同約300 億円ペースで増加するよう買い入れる、など具体的に解説、披露されました。
黒田東彦 日本銀行総裁の講演
これらの施策により、「[1]資金調達コストの低下を通じて、企業などの資金需要を喚起、[2]日本銀行が長期国債を大量に買い入れる結果として、これまで長期国債の運用を行っていた投資家や金融機関が、株式や外債等のリスク資産へ運用をシフト、貸出を増やしていく=「ポートフォリオ・リバランス効果」、[3]「物価安定の目標」の早期実現を明確に約束、大規模な資産買入れの継続による「市場や経済主体の期待を抜本的に転換する効果」=予想物価上昇率の上昇による現実物価への影響と実質金利の低下を通じた民間需要の刺激」など、いわゆる異次元緩和と呼ばれる黒田マジックの種明かしを本人がされました。
政策論争や学術論争はあるにせよ、誰かが何かをしなければ、デフレスパイラルの呪縛から逃れられない日本経済です。黒田マジックに委ねるほかないと感じました。

(注1)ETF:証券取引所に上場し、株価指数などに代表される指標への連動を目指す投資信託で、「Exchange Traded Funds」の頭文字をとりETFと呼ばれる。ETFの代表的な商品として、「東証株価指数(TOPIX)」に連動するETFがある。
(注2)J-REIT:「Real Estate Investment Trust」の略で、日本では頭にJAPANの「J」をつけて「J-REIT」と呼ばれる。多くの投資家から集めた資金で、オフィスビルや商業施設、マンションなど複数の不動産などを購入し、その賃貸収入や売買益を投資家に分配する商品で証券取引所に上場されている。

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