オムロングループのヒューマンルネッサンス研究所が主催された「比叡山未来会議2023
— 人、社会、技術を照らす想像と創造 —」に、6月29日、参加させて頂き、真のウェルビーイングをテーマに深い議論を拝聴させて頂きました。
この会議では、「自然災害、パンデミック、戦争、私たち人類は今、想定外の渾沌の渦の中で、悲観や不安を募らせています。人類は、このまま未来への道筋を見いだせずに落ちていくのでしょうか?いや、こういう時代だからこそ、人類は手を取り合い、問いを持ち寄り、共感できる未来への様々な知を集め、よりよい社会を想像、創造していく時ではないか―。未来の兆し、未来への知を照らし出し、私たちが未来を生きる人々にとって、よりよき祖先になるための未来創造の出発点をめざす場として、社会の変化がさらに加速してきている2023年より「比叡山未来会議」を開催いたします。未来を描き出す羅針盤として、「SINIC(サイニック)理論」という、1970年の発表以来オムロンが未来経営の羅針盤としてきた未来予測理論から、「自律社会」「自然社会」という未来仮説を置き、未来解像度を上げる議論の場にしたいと考えています。」と問題提起がなされています。
朝、岡山駅を出発、京都駅11時集合です。
貸し切りバスで比叡山延暦寺に向かいました。延暦寺は新婚旅行で参りましたのが初めてで、その後も何度か参拝させて頂いておりますが、今回の訪問は何年ぶりでしょうか、琵琶湖を見下ろす景観は見事であり、こうした場所で未来を見つめる会議が開かれることに、わくわく感を覚えました。
され、「比叡山未来会議2023」は、定刻どおり13:00に開始され、冒頭、いけばなパフォーマンスとして、桑原専慶流十五世家元の桑原仙溪氏が、会場中央に設けられた花瓶に、ささゆりを投げ込み、見事な腕前をご披露くださいました。
開会ご挨拶は、オムロンCTO兼代表取締役執行役員副社長の宮田喜一郎氏が務められました。そして基調講演は、総合地球環境学研究所所長の山極壽一先生(前京都大学総長)がされました。地球の創造と進化、そして哺乳類の登場とサルとゴリラと人の違い、さらに人間社会の特徴、デジタル社会の進展による人間性への不安、そして未来に向かい私たちは何を大切に生きるべきか、誠に目から鱗の箴言の花束を頂戴することができました。
また、わたくし自身が、京都大学で博士号の学位記を壇上にて山極総長から直接頂いた栄誉を糧として励んでまいりましたので、山極先生と休憩時間にお話の機会を頂けたことは望外の喜びでありました。
さらに、イントロダクション「SINIC、自律社会、その解像度を高める」と題して、主催者を代表してヒューマンルネッサンス研究所エグゼクティブ・フェローの中間真一氏と共催のNPO法人ミラツク代表理事の西村勇哉氏の進行と「SINIC理論」に基づく興味深い話題提供がなされました。
休憩をはさみ、後半は、セッションA「自律を支える基盤と未来社会への実装」として、東北大学大学院情報科学研究科の大関真之先生、関西大学文学部の石津智大先生、そして宇沢弘文先生の長女になられる宇沢国際学館代表の占部まり先生が、それぞれの知見から話題提供と未来社会の在り方につて持論を展開されました。占部先生にもご挨拶させて頂く機会を得たことは、経済学を学ぶ者としては、誠に栄誉なことでありました。
最後は、セッションB「身体、生命、知と未来」として、京都大学人と社会の未来研究院 の熊谷誠慈先生と広島大学大学院統合生命科学研究科の長沼毅先生、一般社団法人イノラボ・インターナショナル共同代表の井上有紀氏による議論が展開されました。これもテーマが幅広であり、何か、無理矢理に結論を得ようとする会議ではなく、ますます、参会者へ深く考えるためのヒントを発信いただくといった感じの議論がなされました。
そして、閉会ご挨拶は、主催者であるヒューマンルネッサンス研究所代表取締役社長の立石郁雄氏で結ばれました。
この会議では、立石郁雄研究所社長とも意見交換をさせて頂き、オムロングループは岡山大学とも医学部を中心に関係性があること、さらに、岡山にR&D機能を有する研究拠点をお持ちである点、さらに具体的な地方都市を舞台に、未来志向で地方創生に取組んでおられる点などを勘案頂き、機会を改めて岡山大学との意見交換の機会を、お持ちいただくお約束を頂きました。
さらに、情報交流の場では、大学発ベンチャーで飛躍している東京大学大学院の若き社長さんや東北大学の産学官連携担当の先生など、得難い識者の方との出会いを頂くことができました。
通常の学会とは、一味も二味も違う、誠に有意義な時間を過ごさせて頂いた比叡山勉強会でありました。
せっかくの機会であり、下記に登壇された方のプロフィールを紹介させてくださいませ。
桑原 仙溪 氏 / 桑原専慶流十五世家元
1961年生まれ。1984年、十四世家元の長女櫻子と結婚、家元を補佐しながら教授活動を開始。古典の継承といけばなの普及に力をいれる。2004年に家元襲名。自然を見つめて感じたものを表現する。一瞬一瞬の花と器と空間とそして人との出会いに自分の美意識を集中させて代々伝えられた精神と技に磨きをかけ花の方から秘密の美しさを見せてくれるまで生涯いけばなの道を模索しながら多くの人に生け花の魅力を伝えていきたい。
山極 壽一 氏 / 総合地球環境学研究所 所長
京都大学理学部卒、同大学院理学研究科博士課程退学、理学博士。
(財)日本モンキーセンターリサーチフェロウ、京都大学霊長類研究所助手、京都大学理学研究科助教授、教授、同大学理学部長、理学研究科長を経て、2020年9月まで京都大学総長を務める。日本霊長類学会会長、国際霊長類学会会長、国立大学協会会長、日本学術会議会長、内閣府総合科学技術・イノベーション会議議員を歴任。2020年4月より総合地球環境学研究所所長を務める。環境省中央環境審議会委員。鹿児島県屋久島で野生ニホンザル、アフリカ各地でゴリラの行動や生態をもとに初期人類の生活を復元し、人類に特有な社会特徴の由来を探っている。近著に、『ゴリラからの警告』(毎日新聞出版)、『スマホを捨てたい子どもたち』(ポプラ新書)、『京大総長、ゴリラから生き方を学ぶ』(朝日選書)、『人生で大事なことはみんなゴリラから教わった』(家の光協会)、『京大というジャングルでゴリラ学者が考えたこと』(朝日新書)など。
中間 真一 / 株式会社ヒューマンルネッサンス研究所 エグゼクティブ・フェロー
1959年生まれ。慶応義塾大学工学部卒業、埼玉大学大学院(経済学)修了。株式会社ヒューマンルネッサンス研究所の創設メンバーとして参画し、オムロン創業者らによる未来予測理論「SINIC理論」を活かした未来社会研究に従事して現在に至る。「自動」「自律」「自然」をテーマとした人とテクノロジーのインタラクション、「遊」「学」「働」の未来展望など、創設以来Do tankを目指し、フィールドで未来予兆を探索し、「てら子屋」など未来の担い手が育つフィールドづくりも手がける。著書に『SINIC理論』(日本能率協会マネジメントセンター)、共著書に『スウェーデン―自律社会を生きる人びと―』(早稲田大学出版部)、『北欧学のフロンティア』(ミネルヴァ書房)など。
1981年大阪府池田市生まれ。大阪大学大学院にて人間科学の修士を取得。人材開発ベンチャー企業、公益財団法人日本生産性本部を経て、2011年にNPO法人ミラツクを設立。セクター、職種、領域を超えたイノベーションプラットフォームの構築と、大手企業の新領域事業開発支援・研究開発プロジェクト立ち上げの支援、未来構想の設計、未来潮流の探索などに取り組む。2021年に株式会社エッセンスを設立。2021年9月に自然科学、社会科学、人文学を領域横断的に扱う先端研究者メディアesse-senseをリリース。知のアクセスを実現するKnowledge Tech企業として、偶然の幸運に出会えるメディア空間の構築に取り組む。滋賀県大津市在住、3児の父。
大阪大学社会ソリューションイニシアティブ招聘教授、大阪大学人間科学研究科後期博士課程(人類学)在籍