道の駅と岩井滝

津山市にある、道の駅「久米のさと」では、新鮮な地元野菜を廉価で提供しているとの情報を頂き、新型コロナ禍で閉鎖の店が多い中ではありますが、5月9日は、「3密」対策に気遣いながら気分転換を兼ねて参りました。


近所のスーパーマーケットでは高騰し始めている葉物野菜が、確かに安く、そして朝どれという新鮮さで販売されています。買いすぎには気を付けながら、新鮮野菜に飢えていたので、すこし多めに仕入れました。

そして目玉は、お惣菜で並んでいた季節の筍と「そずり肉」の煮物です。「そずり肉」とは聞きなれない言葉ですが、岡山県津山地方では削ることを「そずる」といいます。

岡山県の北部エリアの皆さんは、スネ肉はじめ骨の周りについた肉を削って「そずり」のネーミングでグルメにして楽しんでいます。その「そずり肉」と旬の筍の煮つけは、まさに森と命の恵みであると言えます。


冬場は鍋が多いのですが、いまの旬は筍と山菜、これに鷹の爪や山椒を隠し味に「筍そずり丼」完成。

これはB級ではなく堂々のA級グルメであります。

アツアツのご飯に載せて自宅A級グルメとして楽しませて頂きました。

さて、買い出しを済ませて、かねてより時間があれば拝観したいと思っていた鏡野町にある「岩井滝」を訪ねました。
ここ岩井滝は、岡山観光Webによれば、「岡山県北部の山中に位置する岩井滝は高さ約10m、幅6m。“裏見の滝”の愛称の通り、最大の特徴は滝の裏側へまわり込めるようになっていること。巨大な岩盤の下を通って滝の裏側を歩いてみると、ちょっと冒険気分に浸れます。また、この地方は豪雪地帯としても知られ、冬には滝が凍り、圧巻の“氷瀑”が現れることでも有名です。滝の手前には「日本名水百選」に選定された「名水岩井」が湧き出ているので、味わってみては?この水を21日間飲み続けたら、念願の子供を授かったという伝説があり、「子宝の水」と呼ばれています。」と紹介されています。

鏡野町を奥津温泉から人形峠を越えて鳥取へ抜ける道を、人形峠の少し手前から右に折れて、現地までは細いつづら折りの山道を登ってゆきます。

一般車両は進入禁止の看板があるところまで参りますと駐車場になっており、そこへ車を止め、滝への案内板を確認して、細い川の流れに沿って徒歩にて急な坂道を上りました。

間伐された木々と巨岩が並ぶ道は、新緑が美しく、森林浴を楽しみながら参りますと、途中に湧き水が汲める水場がありました。

これが日本名水百選の「名水岩井」だなと、結構、感激して手で掬って頂きました。新型コロナ禍で、気持ちが滅入っていますし、とりわけ、いつも、どこでも「アルコール消毒手洗い」ばかりに気を遣わねばならない生活パタンに嫌気がさしているためか、この無限に湧き出す「名水岩井」に癒され、ありがたいと思う気持ちで一杯になりました。


そして、いよいよお目当ての岩井滝が見えてきました。

滝の裏側に祠があり、修験道の方が、独り護摩を焚きながら経を唱えておられます。

それ以外に人とは出会いませんでしたので、ここで初めて人の存在を認識しました。

奥の祠に一心に向かっておられましたので、お声をおかけすることも叶わず、滝の裏側まで回り込み、記念に写真だけ撮らせて頂き、現地をあとにいたしました。

かすかながら滝の水しぶきが顔を濡らしてくれました。

自然界の光景に人の信仰が混ざり合い、ひとつの聖域を創り出している様に、神や仏の存在を信ずるか否かは別として、人として生きていることの証を実感できるものです。

山に雨が降り、川ができ、それが滝となり、その水の力が岩を打ち削り、さらに水は川下へと流れ、その途中に木々や草花に生を与え、生を受けた草木が霊を得たように山を活かす。こうした、自然界にも精霊の存在や精神的価値を認め、雨にしずくが木々に落ち、葉を揺らす様と、その瞬間に神の存在を見出すというアミニズム的な心境です。

これも新型コロナウイルスが目に見えぬ脅威であることが深層心理で働いているのかも知れないと思い、ちょっと考えすぎかなあ、と天を見上げて思いました。

とは申せ、自粛規制の範囲内でありますが、人気のない場所まで移動したことで得られる極上の気分転換の時間に満足した一日でした。