道の駅 保田小学校

過疎化や高齢化が未曽有のスピードで進行、その対策として、全国で地方創生の様々な取組みがなされています。その一つとして、地域の拠点として新たな魅力や機能を備えた「道の駅」のリニューアルや新規整備が進んでいます。

2月17日、水仙の群生地として全国的に有名な、千葉県鋸南町が地域活性化の起爆剤として開校した「道の駅 保田小学校」を訪ねました。この道の駅は、現地案内によれば「かつての鋸南町立保田小学校として、明治31年(1888年)保田高等小学校として設立、平成26年(2014年)の少子化による廃校を迎えるまで126年続いた歴史ある学校であり、リノベーションを経て、その翌年の平成27年(2015年)12月、名前も校舎も残したまま、「都市交流施設・道の駅 保田小学校」として生まれ変わりました。」と紹介されています。

アクセスは、JR内房線保田駅から約15分、県道34号鴨川保田線に面しており、また、富津館山道路鋸南保田インターチェンジから降りて1分です。つまり、鉄路も道路も両方共にアクセス良好なポジションです。さらに向かいの三浦半島からは、東京湾フェリーが、横須賀市の久里浜港から富津市の金谷港を40分で結んでいますので、航路でも訪れることができます。そしてこの道の駅は小学校の懐かしい思い出に浸れる「温泉を備えた」「泊れる」小学校です。充実した手作り感あふれる観光案内所はじめ、黒板や棚、机や椅子がある元の教室を上手に再利用した施設では、宿泊体験や温泉利用をはじめ、音楽室では楽器やダンス練習、家庭科室では加工品の試作などの各種体験やイベントが企画されて、訪れた人たちは滞在時間が自然と長くなりますし、同時に地元の皆さんが集う小さな創生拠点や災害時の防災拠点としての機能も兼ね備えています。また、校歌、表彰台、二宮金次郎像、跳び箱などの小学校の定番備品の数々が、ただ、保全・陳列されているのでは無く、リニューアルにより何らかの新しい命を得て、活き活きとお洒落に有効利用されています。

道の駅に興味がある方は、道の駅の理想が心憎いまでに凝縮実装された感動拠点です。ぜひ一度、訪れる価値ありの道の駅、もちろん、新設や更なる進化を目指す自治体は現地視察をお勧めします。

さて、広い運動場は、駐車場になっており、気候も3月下旬の陽気とあって、ほぼ満車の状態でした。もちろん、大型観光バスの駐車ゾーンはじめRV専用の駐車エリアも確保されています。また、ここの道の駅の第2駐車場は、有名な水仙ロードの入り口にもなっており、シーズンにはマイカーで訪れた人たちの拠点となっています。同時に、レンタサイクルも配備されています。配備されている車種は、水仙ロードにはアップダウンも多いためか、E-bike (電動自転車)が2種類、クロスバイクタイプと折畳みタイプであり、ホームページや電話で予約受付ができるようです。宿泊が良いと思いますが、首都圏からは日帰りでもレンタサイクルが楽しめると感じました。

そして、まず目につくのが長い校舎ですが、その奥の体育館がマルシェらしく目立ちます。そこで、道の駅の定番であるマルシェ「きょなん楽市」から入館しました。千葉の房総半島は花の半島と言われる花卉で溢れる土地柄です。店内は、入ってすぐに、「きょなん花MARCHE」があり、まず美しい花々や加工されたグッズが来訪者を迎えてくれます。実際に暖冬のせいもあり、水仙はピークをやや過ぎており、早咲きの河津桜や菜の花が満開でした。また、「保田小学校」にちなんだオリジナル開発商品の品数の多さに圧倒されました。
さらに、千葉県と言えば落花生の産地でもあり、創意工夫を凝らした、思わず手に取り食べたくなる落花生商品の数の多さにも目を見張りました。そして新鮮野菜や果物も豊富で、採れたての地元産の葉物野菜を中心に、そして苺を2パック買い求めました。こうした農水産物や特産品を買い求めた人には、レジ袋も大中小の3サイズを揃えた「保田小学校」袋が準備されています。ここまでブランドを重視した道の駅は数少ないと思います。企画を担当された方に心憎さを感じました。

そしてお楽しみの飲食コーナーが誠に充実しており、懐かしの給食スタイルで楽しむ鋸南町の里山・里海の素材を活かしたCafé、食堂、レストランが並んでいます。この飲食店群のコンセプトは、どのお店でも学校給食の定番である「アルミのトレーにアルミのお椀やお皿、そして給食用のフォーク兼用のスプーン」の給食メニューが提供されることです。二宮金次郎が目印「Café金次郎」は、ハンバーガーや揚げパン、ソフトドリンク、ソフトクリームなどの軽食中心の給食メニュー、「里山食堂」は本格的で豊富な懐かしの給食メニュー、「GONZO」は、近くの鋸山から切り出された房州石で作られた薪窯で焼く本格ナポリピッツァ専門店で、自家製生地と地物食材を使用した給食メニューです。どのお店も、若いカップルや家族連れ、そして小職と同年代の初老のグループでにぎわっていました。食事を楽しみながら、お爺ちゃんやお祖母ちゃんが、孫たちに、子供の頃の思い出話を語り伝えている光景に、ほのぼのとした幸せな時間を感じ、少しうらやましく思いました。また、「中国料理 3年B組」の店内には、これまで保田小学校の歴代卒業生たちが獲得したトロフィーがずらりと展示されていました。

また、今回は視察することができませんでしたが、ここ保田小学校には、「保田小付属ようちえん」が隣接してリニューアルされて、同じく数々の創意工夫が凝らされた施設が来訪者を迎えてくれます。飲食では「保田食堂」があり海鮮丼と黄金アジフライがメインメニューで「房総の美味しい漁師飯」が有名なようです。また、みまもり広場・ドッグランでは、遊具の設置された大きなひろばがあり、里山の自然のなかで子供たちが愉快な時間を過ごし、同時にペット同伴で幸せな時間を過ごせるドッグランも整備されています。

さらに、地方創生の大きなポイントとなっている、「ようちえんショップ」では、ようちえんの案内や各種アクティビティの紹介、ご相談に乗ってくれる公共サービスが提供されています。そして、さまざまな年齢、職種、所属の人たちが空間を共有しながら仕事を行うスペースであるコワーキングスペース「まちのオフィス・くらしのステーション」が整備されています。地域のわくわく企画を話し合い、地域の課題解決に向けた議論など、地方創生のメイン政策である「移住定住」と「子育て支援」の拠点機能の発揮も視野に入れたインフラであると推察されます。