瀬戸内市裳掛合宿

学生サークルまちづくり研究会の瀬戸内市「裳掛合宿」です。学生サークルが、瀬戸内市裳掛地域で学びながら地区の地域活動を支援します。

9月2日、朝9時前にJR邑久駅に集合、長島愛生園の送迎バスが駅に迎えに来てくれています。午前中は第1号国立療養所である長島愛生園を見学させて頂きハンセン病と差別の歴史を学びました。18名の学生たちは1年生が多く、初めての学びに真剣な表情で聞き入っています。持ち帰り多面的な視点で議論したいと思います。


愛生園から裳掛の地域拠点「あけぼのの家」へ移動しました。あけぼのの家の前にあった、古いJAの建物が撤去されており、とても眺めが良くなりました。

今回の活動目的は裳掛小学校保護者主催による恒例の夏祭りイベントの支援です。会場は瀬戸内市裳掛小学校体育館です。まず、学生たちは、校舎脇にある耕作放棄地を活かした「サツマイモ作り」を行っている畑で草むしりをしました。ここでも良い汗をかいています。


小学校の先生方は総出で頑張っておられました。また、地元の伝統的な和太鼓のリハーサルを拝見しながら、この指導にもご苦労が多いと拝察しました。本番はとても感動的な演奏でした。今年の夏祭りを彩る目玉イベントは、学生が独自に作成した「手作りUFOキャッチャー」です。思わず「やるなあ!」と声をかけました。

学生たちがお祭りの準備に入った時間に、隣の牛窓にいる母を見舞いました。ちょうど、牛窓では「牛窓八朔ひなかざり」が開催されており、足早に拝見させて頂きました。歯科医院の建物を改装した新しいショップがオープンしていました。いつもながらほっとする風景がそこにはあります。

地域創生活動と大学の役割について現状と持論を述べます。

まず、サークル活動は学生たちの自主的な活動であり、ゼミや研究室の教員の直接指導による専門性を重視した活動と異なり、教員は学生から依頼があった場合にアドバイスをしたり、学内事務手続き上の指導を顧問という立場で行い、必要に応じて活動現場へ出かけています。

サークル活動の良さは、学部を横断して自由闊達、伸び伸び動ける点です。

一方、地方創生に向けた地域の期待は高く、政策的な課題まで踏み込んだ領域で学生たちに期待が寄せられます。

また、学生たちは、年間計画を立てて行動していますが、いかんせん、1年ごとに卒業と入学を繰り返すため、核になるメンバー(執行部)も毎年変わります。また、3年になると、専門分野の学びが本格化するのと同時に就職準備がメインの課題になる。そのため、活動現場へ赴く時間が制約されるのが現状です。

その結果、サークル活動の主体は、1年生と2年生になっているのが実情です。地域の課題を解決するためには、目標に定めた活動を継続し、深みを出し、地域課題と対峙しながら地域創生活動を展開する必要があります。そのための経験不足、ともすると、その場限りの刹那的な活動になるケースもあります。それでも地域の皆様方は学生が来るのを楽しみにしてくださっており、学生たちは、地域の皆様や地域おこし協力隊の皆様により、教室で学べない多くの経験や知恵(社会で生きる力)を得ています。

あと、頭が痛いのが交通費の問題です。原則、サークル活動には大学の交通費の補助は出ません。ここ裳掛を例にとると、毎週、裳掛小学校の放課後に開催される「寺子屋」に交代で欠かさず学生たちが出かけ、子供たちの学習支援や話し相手になっています。今回の夏祭りでも、子供たちがお気に入りの学生の所へ寄ってきて、追いかけっこをしていました。特にある法学部の男子は人気が高く、その訳を聞いてみると、彼は休みの日も自費でしばしば現地に出かけているといいます。岡山市内からだと往復で運賃は2,000円を超えます。

現在のサークルメンバーは40名となり、この交通費の問題が課題として重くのしかかっています。中山間地域を、1回限り、学びの体験やワークショップで訪れるなら何とかなりますが、具体的な活動で支援を続けようとすると、情けないながら「交通費」の壁を突破できないのです。現在は、地元の皆さんのご好意や、今回は長島愛生園の専用バスに最寄のJR邑久駅まで来ていただき、現地まで移動することを学生たちが直接交渉して何とか足を確保しました。

職業柄、地方創生にまつわる国から自治体への交付金が、東京のコンサルティング会社へ流れ、中途半端な地域のことを理解していない計画が示される様をみることがあります。その一方で、地域がKPI(Key Performance Indicator=重要業績評価指標)達成ということで、汗を流すことを余儀なくされるシーンに遭遇します。こうしたケースは、決して目指すべき市民参加・市民協働と言えるものでは無いと思います。

大学として、自治体からの依頼によるアリバイ作り的な審議会や協議会でハンコをつくために使われるようなケースに遭遇した場合、今まで以上に毅然とした態度で臨むことが必要であると考えます。また、丁度、議会シーズンであるため、あえて生意気な事を申し上げれば、人口減少、高齢・過疎対応、財政の逼迫など、地域社会が崖っぷちである点を踏まえて、議員の先生方も本質的な政策論議でもって、地域社会の持続可能性を見つめて頂きたいと切に願うものであります。

学生の交通費を工面する手立てや妙案をご存知の方、ぜひ、ご指導を賜りたいと思います(残念ながら、ここ裳掛地区は中山間地域の指定を合併前に受けていません)。

最後に、こうした活動の様子を紹介したり、ネットにアップする際に、プライバシーや個人情報保護の観点から仕方ないのですが、特に子供たちの笑顔を紹介したり、アップできないケースが多いのが残念です。

学生たちが地域の顔役の皆さんにスマホの活用指導をしている風景は温かで、気持ちを穏やかにしてくれました。


夜空に打ち上げられる花火を見つめながら関係者の皆様と学生たちに感謝しました。