留学生が鳥取三朝御幸行列へ参加

岡山大学では、グローバル実践型教育を進めています。今回は、GWを利用して、4月28日~30日の2泊3日で、岡山大学惑星物質研究所がある鳥取県三朝町を訪れ、1300年の歴史を持つ日本遺産第1号に登録された「三朝温泉」と「三徳山三佛寺(さんぶつじ)」の伝統的な祭事「御幸行列」への実践的な参加を通じて、留学生15名と日本人学生や社会人と共に、「異社会」(日本の固有性要素を色濃く有する地域社会)、「異文化」(世界遺産と日本遺産からみる日本文化への気づきや神仏習合からみる日本人の宗教観)、「異分野」(惑星物質研究所の有する卓越した世界的研究の専門性)を学びました。また、今回は岡山大学からは学生の指導・引率として教職員7名、さらに鳥取大学農学部の学生たちも多数参加して交流を深めました。

さて、ここ三徳山三仏寺は、その昔、修験道の開祖、役行者(えんのぎょうじゃ)が「神仏のゆかりのあるところへ落としてください」と3枚の蓮の花びらを空に投げ上げると、そのうちの1枚が伯耆国三徳山へ舞い降り、この地に修験道の行場が開かれたという「蓮の花びら伝説」が始まりであり、これにより三徳山は今に続く修験道の聖地として栄えています。留学生たちは、三仏寺境内で修験者(山伏)による法螺貝体験をさせて頂きました。この修行は難行であり、険しい山々を駆け巡り、山へ籠もって厳しい修行を行うことにより、悟りを得るという日本古来よりの山岳信仰が受け継がれている日本独自の宗教です。

また、三仏寺は、神仏習合の地であり、神と仏が共に祀られています。29日の御幸行列では、地域の皆様方のお心使いにより、正式な装束を身につけさせて頂きました。そして役割分担も正式に頂きました。その準備の段階で、こうした日本独特の祭礼・儀式について留学生たちは興味津々です。そして、般若心経と祝詞奏上の儀式を経て、御幸行列が始まりました。かきては息を合わせ、大小2基の神輿を担ぎ上げ、誠に急な石段を麓まで下ります。こうした経験は、私たち日本人でも容易く出来るものではありません。麓では、キュリー広場でのセレモニーから、フィナーレの三朝の温泉街を練り歩く「大回り」と呼ばれる夜の行幸まで、学生たちは懸命に行列を担当してくれました。こうして留学生や学生たちを含む地域の皆さんの一糸乱れぬチームワークに、鳥取県副知事や教育長はじめ来賓の皆さんも感心しきりでした。

2017年4月29日、地元ケーブルテレビの番組「情報ワイド NCNピットステーション」にて、留学生たちの参加の様子が紹介されました。下に動画を掲載しますのでぜひご覧ください。

30日は、三朝温泉観光センターにて三朝の紹介ビデオ(英語版)を拝見しました。続いて日本遺産である三徳山三仏寺の投入堂の歴史・変遷・位置づけについて三朝町教育委員会事務局社会教育課世界遺産推進室主幹藤井紀好さん、三仏寺の山本邦道法嗣から講和を受けました。そこでは、三朝温泉と三徳山のあらまし、六根清浄(シャカの考え方、お経)の意味などが紹介されました。この六根清浄に関する考え方は、日本人でも理解が難しい概念であり、山本邦道法嗣によれば、「六根」は私欲や煩悩、迷いを引き起こす目・耳・鼻・舌・身・意の六つの器官をいうが、欲や迷いを断ち切って、心身が清らかになれば、幸せになれる。「清浄」とは煩悩や私欲から遠ざかり、清らかで汚れがない境地を意味する。さらに、その境地に達すことを、三朝温泉が助けてくれる。三朝の湯に浸かれば、身も心もリフレッシュして、清らかになることができ、それを「六感治癒」という、との説明です。留学生からも積極的に質問が出され、山本邦道法嗣が易しく解説をしてくださいました。まさに異社会・異文化の理解による多文化共生の実践的な学びです。

こうして学びを済ませて、学生たちは神社に参拝したり、河原で遊んだり、温泉街で土産物を買ったりして、帰りの時刻まで思い思いの時をすごしました。

三徳山御幸行列三朝温泉大回り実行委員会の新藤祐一委員長、吉田秀光三朝町長、同町世界遺産推進室藤井紀好主幹、三仏寺山本邦道法嗣はじめ関係者の皆さん、そして鳥取県から岡山大学に出向されている山本直生総括主査に心より深く感謝申し上げます。

この記録は、参加した学生たちに振り返りの時間を設けながら、参加教員が手分けして、きちんとまとめる予定です。