人を大切にする経営学会が主催する第7回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞表彰式が、3月21日、法政大学市ヶ谷キャンパス・さったホール(東京都千代田区)で開催されました。「人を大切にする経営」と言うは簡単ですが、実践には相当な覚悟が必要です。
つまり、この大賞への応募資格は、過去5年以上にわたって、以下の5つ全てに該当している事が条件となります。①人員整理を目的とした解雇や退職勧奨をしていないこと(東日本大震災等の自然災害の場合を除く)、②外注企業・協力企業等、仕入先企業へのコストダウンを強制していないこと、③障がい者雇用率は法定雇用率以上であること(常勤雇用50人以下の企業で障がい者を雇用していない場合は、障がい者就労施設等からの物品やサービス購入等、雇用に準ずる取り組みがあること)、④黒字経営(経常利益)であること(一過性の赤字を除く)、⑤重大な労働災害がないこと(東日本大震災等の自然災害の場合を除く)となっています。
13:00から始まった表彰式では、冒頭に、主催者挨拶、審査委員長講評、来賓挨拶及び表彰式があり、主催者挨拶では、当学会の顧問である、法政大学元総長の清成忠男(きよなりただお)先生、審査委員長講評は当学会長の坂本光司法政大学教授が行いました。
また、来賓挨拶では、厚生労働省の政務官と中小企業庁の次長から祝辞が寄せられました。
そして「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞授与 、「人を大切にする経営学に関する研究奨励賞」の顕彰と続きました。
また、特別講演では「私を生きる」と題して、内閣総理大臣夫人の安倍昭恵氏が障がい者と寄り添う活動や被災地支援活動など幅広にスピーチされました。
そして、受賞企業代表スピーチでは、経済産業大臣賞、厚生労働大臣賞、中小企業庁長官賞ほかが披露されました。
経済産業大臣賞は「TOTO株式会社」が受賞されました。TOTOの経営理念は、「愛業至誠」良品と均質、奉仕と信用、協力と発展、を掲げています。また、人財マネジメントとして、「よき品質を作る前に、よい人を作る」のが理想であると、第2代百木三郎社長の言葉が、現在まで脈々と受け継がれています。そして、社員の想いや方向性に互いに共感し、役割を理解、自分で考え行動できる社員を育成するとしています。とりわけ、ダイバーシティ経営宣言を行い、「女性の意見を活かせるのは女性」であるとの経営方針により、お客様からの「不安アンケート」から、「洗浄ノズルの汚れ」が気になるとの回答が多く寄せられ、女性チームが、このテーマに取り組もうとしたら、男性社員から、「ノズルは清潔だから」との異論が唱えられたそうです。そこで、女性チームが、「それでは貴方はノズルなめられますか?」と質問したら、男性社員たちは絶句、男性が反対するため言い切り、それから女性視点での除菌水の開発とノズル洗浄の実用化プロジェクトが本格的に開始されたそうです。
ところが、日本全国のトイレに使用する水質はバラバラで、どこでも性能発揮ができる仕組みを開発(塩素・電気分解)、キレイ除菌水の精製(残った汚れを分解・除菌する、トイレ自身が、除菌水を作り出す機能)、そして除菌水が再び通常の水に戻る仕組みまでが生み出されたそうです。仕上げは、顧客からの支持と満足を得るために、ノズルを洗い除菌する作業プロセスそのものを利用者に「見える化」したそうです。この納得の商品開発は女性の目線、つまり女性ならではの視点を大切にする経営の実践により生まれたとの報告でした。
また、障がい者雇用については、グループ全体で302名を雇用、さまざまな部門にて活躍中で、障害の特性、配慮事項の説明を配属部署には周知しますが「特別扱いはしない」、を方針として掲げているとの説明を受けました。そして、北九州市が本社のTOTOは、福岡県、北九州市、TOTO3者で「サンクアTOTO」という障害者就労企業を設立したとの紹介がありました。
創業者理念の一つが「利益は結果である」との思想を理解することができました(その他に受賞・登壇された皆さんについては、後日、HPで紹介します)。
こうして700名を超える参加者により表彰式は終了、続いて17:30から交流懇親会が、法政大学内ボアソナード・タワー26階「スカイホール」にて開催されました。
なお、今年の6月に当学会の中国地区大会を、広島大学を会場にお借りして開催すべく準備に入りました。
午前8時に出て午後8時の新幹線で戻る日帰り学会出張でした。