9月22日、倉敷天文台にてローカルサミット2016 in倉敷おかやまの企画会議が開催されました。
環境省が2015年末に提唱した「つなげよう、支えよう森里川海」プロジェクトの提言案には、「森里川海が連なる流域圏を俯瞰し、上流域と下流域、農山漁村と都市がしっかりとつながり、多様な世代や組織がそれを支え合う。森里川海の循環体系が健全に機能する中で、環境・経済・社会の課題が統合的に解決し、低炭素・資源循環・自然共生社会が同時に実現するような、そんな地域づくり、国づくりを目指すことは、日本の力を高め、国際的にも誇り得るものと考えます。森里川海とそのつながりの恵みを引き出す社会へと転換する歯車を回していきませんか。それは今を生きる私たちから将来世代への最善の贈り物になるでしょう。」とあります。
このような歴史認識の中、約60年前の昭和29年に大原總一郎氏の提唱によって「高梁川流域連盟」が設立された、この倉敷・おかやまにおいて、第9回ローカルサミットを開催し、多くの志民の皆様とそれぞれの実践を交歓し、「確かな未来」構築のための様々な可能性を模索できることは大変感慨深いものがあります。
高梁川流域連盟の設立趣意書は、冒頭にユネスコ憲章を引用して、「世界の平和は心の平和にある。ユネスコが国際間において果たすべく期待している事柄は、同時に国内の隣人同志がなされなければならぬことでもある。」と隣人との関係の重要性を謳っています。そして、「高梁川は多彩の地形と文化とを抱擁する強力な紐帯である。」、「太古から数知れぬ人々がこの流れによって生き、またこの流れによって生きた人々によって守られ、利用され、郷土の文化を生み、産業を育て、歴史の流れと共に人々の生命の糧となり、魂の故郷となった。」、「「高梁川流域の人々はこの川を機縁として互いに理解を深め、相親しみ、協力してこの川を守り、この川で培われた文化や産業の共同体をより美しく、より合理的に築き上げなければならないと思う。」と続き、流域が今後も強力な紐帯として機能するような隣人同士の関係を維持発展させることを切望しています。その後、紆余曲折はあるものの途切れることなく今に続いています。
60年以上前に提唱された「高梁川流域連盟」の趣旨は、今もって色褪せることなく、「森里川海」プロジェクトにより再び光が当たろうとしています。また、地球規模での平和を希求する動きが求められている中、足下での隣人同士のつながりや自然とのつながりを暮らしの中に取り戻す、様々な形でのコミュニティづくりが各地で活発化しています。そうした中、時を同じくして一昨年に(一社)「高梁川流域学校」が開校したことは単なる偶然ではなく、時代の流れを今一度この地から指し示し、国民運動に展開していく、道しるべに他ならないと思います。
いのちを育む川は流域全体を通した水の循環と協働により、その豊かないのちの恵みの機能を維持することができます。いのちがつながる流域思考で志をつなぐプラットフォームを作り上げることが未来のライフスタイルを自分事として構築していく第一歩だと確信しています。新たな流域連盟は単に行政が連携すれば可能なのではなく、様々な世代や主体が関わることで初めて機能します。
「高梁川流域連盟」の目指した姿を皆様と改めて検証しつつ、志をつなぎ、一流の地域づくりの土台となる流域思考を深め、若者世代とともに、倉敷・おかやまから国内はもとよりアジアにも向けて、新たな環境・生命文明の形を共に発信して参るべく、メインテーマを「志つなぎの流域思考」-過去から未来への接点、今をどう変えるか-と設定しました。
11月5日の午後から小職が担当する第3分科会では、流域・命を支える「風土・思想と環境・エネルギー・経済・金融」と題して、倉敷市酒津公園集合、分科会開催地周辺散策する予定です。先人の知恵により、高梁川の風土が育む豊富な水資源が、地域の環境に適した形で、農業利用はじめ地域社会を構成する人々の暮らしに恵みを与えてきた。そして地域経済を支えるエネルギーとして、今なお、脈々とその重要な役割を果たしています。この美しい自然環境の象徴として、また、水資源を活かして地域コミュニティを元気にする取り組みとして八ヶ郷用水沿いで日本有数の「ホタル観賞会」が開催されています。この「疎水百選」にも選ばれた近代を代表する建造物としての評価も高い「東西用水」水門をはじめ、歴史・文化に深い縁のある酒津周辺を見学・散策、そして「ホタル復活への取り組み」を、地域の世話約からお聴きすることにより、第3分科会のテーマの動機付けを行います。
興味深いプログラムに仕上げられるように取り組みます。