バングラデシュは、北海道の2倍の国土に1億6000万人が住み、その9割がイスラム教徒である国です。その緑に赤の国旗は日本の旗を真似て作られた親日国であることは有名です。7月1日夜、バングラデシュ首都ダッカ市内のレストランをイスラム過激派組織のメンバーが襲撃し、日本人7名を含む22名が殺害される悲惨かつ痛ましい事件が起きました。本来は、親日国家であるはずで、貧困問題や格差問題はあると言いながら穏やかな印象を持つ国家で、JICAの国際支援活動で活躍していた日本人が狙われた事件は衝撃を与えました。彼らはバングラデシュの発展に貢献していたという事実を無視した「イスラム国」系によるテロは、いかなる理由があるにせよ許されることではありません。
7月16日のNHK「ニュース深読み」で、このテロ事件が特集されました。前任校である愛知学泉大学で同僚であった、倉沢宰(クラサワサイ)先生が、日下部尚徳氏(NPO法人シャプラニール理事)、三輪 開人氏(NPO法人e-Education代表理事)と共にコメンテーターとして出演されていました。NHKは二村伸解説委員、ゲストは蛭子能収氏(漫画家)と早見優さん(歌手)でした。倉沢先生は、国立ダッカ大学大学院社会福祉学研究科修士課程修了、慶応義塾大学大学院社会学研究科博士課程修了され、バングラデシュ農村開発研究所(BARD)およびダッカ家族計画教育調査研究所(EPREC)で教官をされたバングラデシュの方で、日本に帰化されています。とても温厚な人格者で、しばしばお話をする機会があり、校務への姿勢や考え方を通じて、尊敬申し上げておりました。この日の放送では、立教大学RSSC兼任講師という肩書きで出演されていました。
今回のテロは、その背景に、急速な経済成長の一方で生まれた、格差の拡大や高失業率といった「社会のひずみ」があるのではと問題提起がなされ、倉沢先生は「国際支援や貢献活動のなかで、結局は安い賃金の劣悪な仕事をせざるを得ない労働力狙いのグローバル企業に対する不満が出るのは当然の流れかもしれない」と指摘され、さらに「援助を終えた後は、その経営やマネジメントを自国民(バングラデシュ)に権限委譲するのが望ましい姿ではないか」と述べられました。つまり、テロは絶対に許される行為ではないと断られたうえで、ひも付き援助や途上国への経済統治への警鐘を鳴らされました。またフランスでテロが発生したばかりですが、欧州などの先進国もさることながら、イスラム教徒が多いアジアでテロの脅威はどこまで広がるのか、「バングラデシュへは行かないから」、「日本の田舎の都市で住む自分には関係ない」といったレベルでは済まない事件であったと思われます。
グローバル社会、国際理解とは何か、真剣に論ずるべき時期であると思いながら、深く考えさせられた番組でした。