毎年、総務省系の財団法人である一般財団法人地域総合整備財団(ふるさと財団)の地域再生事業のアドバイザーとして、外部専門家を派遣している自治体訪問をさせて頂いてきました。今年度は、北海道の寿都町と香川県高松市が担当です。
9月2日、朝から北海道新千歳空港を目指して羽田空港へ向かいました。今回は、台風の影響で岡山からここまでたどり着くのが大変でした。予定通り、9:30発のANA053便に搭乗しました。離陸したとたん、なんだかホットした瞬間に深い眠りについていました。
さて、1時間ほどのフライトで新千歳空港に到着、JR快速エアポート45号からJR特急北斗 8号へ乗り換え、JR長万部駅を目指しました。車窓からの海の眺めは津軽海峡から太平洋側の広い水平線が広がります。見慣れた瀬戸内海とは違い新鮮に感じました。長万部駅では寿都町の方が出迎えてくださり、公用車で一路寿都町を目指しました。丁度、北海道新幹線の工事が進んでいました。
長万部駅から、クルマで1時間ほど走ると寿都町に到着しました。
寿都町は、同町のHPによれば「北海道南西部の日本海に面し、函館、札幌のほぼ中間に位置し、本町西部か ら東部に走る弓状の海岸線が寿都湾を形成しています。全国でも有数の強風が吹く町で平成元年(1989年)に全国の自治体では初の試みとなる風力発電を建設。現在までに13基の風車が稼動しており、強風はクリーンエネルギーに姿を変え、町づくりに還元されています。地勢は、寿都湾を取り囲むように弓状に形成されたそのほとんどが山林・原野であり、町境界線上に連なる山とともに山地が海岸に迫っている地形となっています。気象は、日本海に面しており、暖流(対馬海流)の影響を受けることで、年間平均気温10.5℃(令和5年平均)と温和で、年間降水量は1,378mmとなっています。人口は、令和6年3月31日現在、男1,294人、女1,326人の計2,620人、高齢者(65歳以上)比率は41.3%となっています。少子高齢化が進む傾向にあります。
産業では、寿都町における漁業の歴史は古く、町史によると1600年代に豊富なニシンを背景に和人が集落を形成し、住み着いたことが町の始まりとされています。以来、寿都町は漁業を中心として発展してきました。200海里問題以降は沿岸漁業へ移行し、比較的穏やかな寿都湾の特性を活かしたつくり育てる漁業を展開し現在に至ります。近年は、海洋環境の変化や資源量の減少により漁獲量は減少傾向にありますが、安定した生産の見込める養殖漁業の拡充や漁獲物の高付加価値化・販路拡大により漁業生産力と漁業所得向上を図っております。農業では安定して収穫があるのは馬鈴薯で、令和5年は229.3tの収穫があります。漁業とともに寿都町を支える産業として発展することが期待されます。
観光では、寿都町は、道立自然公園を有する「弁慶岬」、国史跡指定の「旧歌棄佐藤家漁場」(カクジュウ佐藤家)、地域資源の「風」を有効活用した「風力発電施設」、異なる2種類の泉質を持つ公共温泉「寿都温泉ゆべつのゆ」、まちの観光情報発信拠点の「道の駅みなとま~れ寿都」などの観光名所が存在します。四季折々にさまざまな魚種が水揚げされる寿都湾は、その豊富な水産資源がまちの魅力でもある「食」となり、中でも春が旬の「寿かき(ことぶきかき)」や「小女子(こうなご)」は寿都を代表する特産品として多くの方に人気です。それら食の魅力を堪能できるイベントや、歴史・海などをテーマとした寿都ならではの滞在交流プログラムの実施など、交流人口の増加を図る取組を実践しています。一般社団法人寿都観光物産協会が行う食とイベントによるまちのプロモーション活動に加え、新たな特産品である「風のバジル」を使用した加工品などによる消費拡大の促進、ニセコエリアから寿都の魅力を発信する「アンテナショップ寿都魚一心」により、さらなる交流人口の増加による地域活性化を推進しています。ただし、令和2年度から新型コロナウイルスの影響による外出自粛やイベント中止などから観光客入り込み数が大幅に減少しています。」と紹介されています。
まず、北前船で財を成した鰊御殿へ案内いただきました。明治建築の見事な豪邸は、北海道の有形文化財に指定され、現在は改装され、そば処や観光スポットになってます。今度の海は日本海側ですので、また海の顔が違います。台風の影響もあってか、海は鉛色で波が荒く少し怖く感じました。
また、ここ寿都町は日本で初めて、自治体が風力発電に乗り出した実績を持っています。
見事な風車が海岸沿いに並んでいます。「だし風」や「やませ」と呼ばれる強い風は全国的に有名で、その強い風が吹くポイントに巨大風車が並びます。風車の上に登って日本海の見学もできるそうです。時間が無くて残念でした。
そして車中からですが、寿都町の主な公共施設を足早に見学させて頂きました。程よくコンパクトシティになっていることを実感できました。
さて、寿都町では、13時過ぎから2時間ほど、寿都高校を訪問、ベンチャーマインド醸成をテーマにしたアントレプレナー授業を視察させて頂きました。オンラインでオーストラリアと結び、ワークショップ形式で地域人材育成のための意識づけをマインドセットする授業がオーストラリアの日本人講師から学びます。高校生たちが積極的に議論を展開、質疑応答も白熱しました。弊職も岡山県のいくつかの高校生の探究学習のお手伝いをしていますが、昔の高校生より今の高校生の方が自由闊達で元気が良いと感じています。
ここ寿都町でも、みんなが和気あいあい、思う存分、自らの意見を述べ、クラスメイトの発言にも耳を傾ける、そんな光景を目の当たりにすることができて満足でした。総務省のお仕事と言うよりも文部科学省がぴったり、また、ベンチャー育成やアントレプレナーシップ教育との観点では、経済産業省の所管の視察かなと感じながら、官庁も縦割りから横串を刺す時代に変貌を遂げているのだと納得、感心いたしました。
校長先生はじめご指導にあたられた先生、そして寿都高校生たちのお礼を申し上げて高校を後にいたしました。
そのあと、道の駅「みなとま~れ寿都」を見学、観光物産協会、寿都町、外部専門家、財団調査団のメンバーで意見交換をいたしました。
ふるさと財団から派遣された外部専門家たちが、地元の加工製品「寿都バジルソース」に新たなデザインのラベリングを施し、商品の発信力や広報力を高め、ブランディング化を目指しています。特産のホッケの開きなどの塩干魚と共に土産として宅配発送いたしました。インスタ写真と味見担当は孫です。また、寿都の歴史が紹介されたコーナーを、時間をかけて拝見いたしました。ただし、ここまで来るには、札幌からかなりの時間を要しますし、東京や大阪からも最後はクルマ(レンタカー)が無いと苦労します。もちろん、札幌からの高速バスが岩内バスターミナルまでは頻繁に出ていますので、乗り継げば、寿都までこれますし、私たち一行が降りたJR長万部駅からも寿都行きは出ています。こうした路線を何とか維持、確保して欲しいと、寿都バスターミナルを現地調査して、ニセコバスの運行ダイヤを確認しながら痛感いたしました。