東大阪市訪問① HIGASHIOSAKA FACTORies(東大阪ファクトリーズ)

一般財団法人地域総合整備財団(ふるさと財団)は、地域における民間能力の活用、民間部門の支援策として考え出され、昭和63年12月21日、自治大臣(現: 総務大臣)及び大蔵大臣(現: 財務大臣)の許可を得て、都道府県、政令指定都市の出捐による財団法人として発足しました。
その目的は、地方自治の充実強化のため、地方公共団体との緊密な連携の下に、民間能力を活用した地域の総合的な振興及び整備に資する業務を行うとともに、地方公共団体が実施する長期資金の融資業務を支援することにより、地域における民間事業活動等の積極的展開を図り、もって活力と魅力ある地域づくりの推進に寄与することです。また、財団の複数ある事業なのかで、「地域再生マネージャー事業」は、市町村等が地域再生に取り組もうとする際の課題への対応について、その課題解決に必要な知識、ノウハウ等を有する地域再生マネージャー等の外部の専門的人材を活用できるよう必要な経費の一部を支援する事業です。
この事業は、地域再生に向けた地域の課題が明確になっており、その課題解決に市町村等が戦略・ビジョンの策定を行っている段階において、住民主体の持続可能な体制に整備するとともに、ビジネスを創出して雇用に結び付け、地域が自立的に行動できる仕組みを構築するために、市町村等が外部専門家を活用する費用の一部を助成しており、小職は、その事業アドバイザーを拝命しています。今回の視察先である東大阪市は「ふるさと再生事業」に採択されており、7月20日、21日の二日間、この事業の進捗状況の確認とアドバイスに参りました。
東大阪市は、大阪府の中河内地域に位置する都市で、人口は約48万人(岡山県倉敷市とほぼ同じ人口)であり、大阪市と堺市に次ぐ、大阪府第3位の人口を擁する、大阪市と関係性が深い都市で、面積当たりの中小企業の数は日本最大(総企業数は約約5,500社)であると言われています。
また、高校ラグビーの聖地である東大阪市花園ラグビー場を擁する「ラグビーのまち」として全国に知られています。
最近では、NHKの2022年後期、朝の連続テレビ小説『舞い上がれ』で、主役の舞が操縦する空飛ぶクルマ「かささぎ」が舞い上がり、東大阪の中小企業の実力を象徴する話として一躍有名になりました。

7月20日、ふるさと財団の一行と新大阪駅で合流、東大阪市へ向かいました。まず、東大阪市役所14階西会議室において、外部専門家として派遣されているヒラカワデザインスタジオの平川真紀さんから、今年度事業の内容説明と進捗状況報告を受けました。都市魅力産業スポーツ部モノづくり支援室の尾上雄右都市魅力産業スポーツ部長、辻尾博史室長、浦塘弘太郎室次長、田中健太総括主幹、志水かずな主査が出迎えてくださいました。
デザインの専門家である平川さんが支援している主要事業は、「HIGASHIOSAKA FACTORies(東大阪ファクトリーズ)」活動であり、そのコンセプトは、東大阪市に約5,500社ある中小企業事業所のなかから、3年を1期として、1期4社ずつ(現在8社)、頑張る企業を数社、統合的なデザイン・クリエイティブ戦略で支援することにより、多彩な技術や新たな発見に富んだモノづくりの魅力を、国内外に広く発信するプロジェクトです。今回訪問ヒアリングさせて頂いた2社も、プラスチック成型加工(金型)や電線などの製造を専門にする企業であり、その“高い技術”を持つ中小企業が大手企業の下請けであったステージから、自社の完成品として独立販売するステージにアップしました。その押し上げる魔法のパワーが「モノづくりの技術にデザイナーの“新たな視点”を掛け合わせて、未来への可能性を創造する」です。そのためのプラットフォームがファクトリーズとして活動しています。
なお、東大阪市の企業の実態を東大阪市「市内中小企業動向調査報告(令和 5 年 1 月~3 月期)」から引用しますと「令和5年1月~3月の市内中小企業動向調査(対象企業1,500社 回答企業412社)によると、製造業の「景況」DI (前年同期比)は、前回調査より7ポイント減少の(-)20となった。また、「受注額」DI は3ポイント減少の(-)12、「生産・売上額」DI(前年同期比)は5ポイント減少の(-)13となるなど、4期ぶりに回復した前回調査時より悪化した。非製造業の「景況」DI(前年同期比)は、前回調査より9ポイント増加の(-)14となった。また、「受注額」DI(前年同 期比)は、前回調査より8ポイント増加の(-)14、「生産・売上額」DI(前年同期比)は、5ポイント増加の(-)14となるなど、持ち直しの動きが見られた。新型コロナウイルス感染症の抑制と社会経済活動の両立が進んだことから、製造業の「来期の見通し(令和5年4月 ~6月期)」DI(前年同期比)は11ポイント増加の(-)19、「来々期の見通し(令和5年7月~9月期)」DI(前年同期比) は6ポイント増加の(-)19、また非製造業の「来期の見通し(令和5年4月~6月期)」DI(前年同期比)は4ポイント増加 の(-)18、「来々期の見通し(令和5年7月~9月期)」DI(前年同期比)は4ポイント増加の(-)17となり、見通しDIは改善している。ただし、今後の景況に影響を与える要因では、「原油価格」の上昇や「個人消費の動向」、「内需の動向」、「人材の確保」が依然として高い水準で推移しているため、引き続き注視する必要がある。」となっています。なお、DIとはディフュージョン・インデックスの略で、景気拡張の動きの各経済部門への波及度合いを測定することを主な目的としており、採用系列のうち改善している指標の割合を意味し、景気の各経済部門への波及の度合いを表しています。月々の振れがあるものの、DI一致指数は、景気拡張局面では50%を上回り、後退局面では下回る傾向があります。なお、DIは、景気の拡張が経済活動のより多くの分野に浸透していったことを示す指標であり、景気拡張が加速していることを示すものではないことに注意が必要です。
ところで、『大阪』という都市の地名は、『東京』、『京都』、『ニューヨーク』などと同じく、ひとつのブランドと言えます。日本で面積当たりの中小企業の数が多い都市が東大阪市です。中小企業のまちとしてのイメージは定着していますが、『東大阪市』という都市ブランドが、どのくらい発信力のあるブランドであるかについては、まだまだ課題が多いとの認識です。このブランドイメージを高めるためには、核となる中小企業1社1社のイメージを、下請け企業が持つ3K(きつい・汚い・危険)のイメージを払拭して、魅力ある世界に輝く中小企業に押し上げる必要があります。そのためには1社1社も大切ですが、複数の企業が統合して、ひとつの統一ブランドイメージを形成することが有効だと思考され、今回のブランド形成に向けたデザイン・クリエイティブ戦略が推進されてきました。これまでの創意工夫の取組みについて貴重な報告を受けることができました。
そして、ミーティングを終えてから、地域のランドマークと言うにふさわしい、高層の市役所22階の展示スペースを見学、拝見しました。東大阪市は花園ラグビー場を代表とした「ラグビーのまち」です。この「ラグビーのまち」が持つ「力強さ・たくましさ」「連帯性・団結力」「友情・すがすがしさ」といったイメージをマスコットキャラクターにした「トライくん」が迎えてくれました。また、NHKの2022年後期、朝の連続テレビ小説『舞い上がれ』で、主役の舞が操縦する空飛ぶクルマ「かささぎ」が舞い上がり、東大阪の中小企業の実力を象徴する話として一躍有名になりました。この番組に関連した展示品が展望に訪れた人たちの目を楽しませてくれました。さらに、今回の事業に深く関連する「HIGASHIOSAKA FACTORies(東大阪ファクトリーズ)」活動に参画した企業の経営者と製品が紹介されたデジタルビジョンが目をひきました。そして360度のパノラマの眺望も見事でした。