沖永良部島は鹿児島県のほぼ最南端に位置する美しい島です。
天候を心配しましたが、8月15日の夕方、無事に沖永良部空港に到着しました。
おきのえらぶ島観光協会HPによれば「沖永良部島は、鹿児島市から南へ552km、北緯27度線の上に浮かぶ周囲55.8km、面積93.8km2の隆起サンゴ礁の島です。和泊、知名両町合わせて人口1万4千人あまり。年間平均気温22度という温暖な気候に恵まれ四季を通じて熱帯、亜熱帯の花々が咲き、エラブユリ、スプレーキクなどの栽培も盛んです。東洋一の鍾乳洞・昇竜洞をはじめ200~300の大鍾乳洞群が見られ「花と鍾乳洞の島」の異名をとっています。また、奄美諸島の中でもハブがいない島として知られています。澄みきった青い海と空、まばゆい太陽、素朴で厚い人情は、あなたにとって忘れ得ぬ旅の思い出を演出することでしょう。ぜひ、沖永良部へ「めんしょうり」(いらっしゃいませ)。」と島を紹介しています。
翌朝、8月16日、朝から宿泊したホテルSEAWORLDの近くを散歩しました。
NHKの大河ドラマ「西郷(せご)どん」で西郷隆盛が流罪になった島として紹介された島が、ここ沖永良部島です。その記念館を訪ねました。また、傍に南洲神社があり、上野にある西郷像と同形の像が迎えてくれました。そして川沿いには第2次世界大戦の時の防空壕の跡がありました。
幕末から近代にかけての歴史の1頁が静かな島に佇んでいました。
さて、ホテルまで知名町の方が迎えに来てくださり、車中で島の紹介を頂きながら町役場へ向かいました。
役場では、今井力夫町長と赤地邦男副町長の出迎えを受けました。
町長室で知名町の魅力と特色、地域の資源、地方創生の方向性などをご紹介いただきました。
そして、今回視察の地域再生マネージャー事業の主目的である、知名町と北海道利尻島の利尻町との連携プロジェクトについて意見交換をいたしました。両島の仲を取り持つのはNPO法人離島経済新聞社の大久保昌宏代表理事です。ふるさと財団から本事業により派遣者となっています。これまでの進捗状況と今後の推進計画について説明を受けました。
今井町長からは、今後、知名町が目指すまちづくりへの抱負と地方創生に向けた熱い思いをお伝えいただきました。
財団側からもいくつかの質問をさせて頂き、また、小職はアドバイザーの立場からコメントを担当させて頂きました。
訪問を記念して写真をお願いしました。
島の公式行事での決めポーズは、右手を胸にかざすスタイルだとお教えいただき、全員がならいました。
ふるさと財団の支援を受けて知名町が進める事業について紹介します。
事業名は「関係人口と地域の担い手獲得のための広域連携事業」です。
事業の背景は、鹿児島県知名町は、奄美群島の南西部、鹿児島市から546km 南にある沖永良部島の南西部に位置し、基幹産業は、サトウキビや花き、ばれいしょ、葉タバコの栽培、畜産などを中心とした農業と観光業であり、人口減少が著しく、それに伴い農業の従事者も減少しており地域における担い手不足が課題となっています。一方で、観光業への就業者比率は増加傾向にあるものの、新型コロナウイルスの影響により、新たな観光形態ニーズへの対応が必要となっています。
そこで、繁忙期の異なる北海道利尻町との広域連携を形成し、両町に訪れるそれぞれの関 係人口やリゾートバイトなどの働き手を共有し、人材不足の解消と関係人口拡大に伴う新しい観光施策の創出、それらの人材による地域経済への波及効果を図ることを事業目的としています。
具体的には、①広域連携による人材獲得・共有のスキーム構築 ② 広域中間支援組織の体制構築 ③ 広域連携による地域産業の受け皿となる中間支援組織体の構築・立ち上げ ④ 地域内空き家等受け入れ人材の拠点整備のための調査 ⑤ 人材獲得に向けた情報発信 ⑥ 地域内事業者向け支援メニューの整備を進めます。
そして、本事業では、①スキーム実施に向けたロードマップ作成/全体図の作成 ②支援組織体を構成する構成員確定と体制図の作成 ③支援組織体の設立 ④空き家等の状況調査報告書 ⑤メディアを通じた人材募集のための情報発信:掲出メディア 2〜3 件/両地域共催によるオンラインイベントの開催:1〜2回等 ⑥地域内事業者支援のためのメニュー:2 件以上を目指します。
また、本事業の特徴は、北海道利尻町という日本最北端の町との広域連携により、農業と漁業という異なる産業領域で、それぞれの産業を担う地域外人材を受け入れ、共有し合うための受け皿となる中間支援組織体の構築を、互いの特徴を活かしながら持続性を高めようとする点がユニークであり、ビジネス創出の観点からは、全国的にも自治体主導で特定地域間の広域連携による人材バンク構築と運営等は事例がなく、競合もいないため、本事業を通じて構築する仕組みそのものが新たなビジネスモデルとなる可能性を秘めている点です。
事業継続方針としては、令和4年度までに広域中間支援組織の運営強化を行い、令和5年度には、ワーケーション誘致や域内事業者の支援を通じて中間支援組織の自走体制の構築をめざします。そして令和6年度以降には、常時500人以上の登録を目指し、各種広報 PR とプロモーションを実施して、広域中間支援組織体の完全自走化を図ろうとしています。
財団の支援で派遣されている専門家は、大久保昌宏氏(特定非営利活動法人離島経済新聞社代表理事)です。知名町と利尻町の両町を担当しながら結びつきを深め、事業連携の実装化を図っています。因みに大久保氏は東京都福生市のご出身であると伺いました。
また、知名町では、企画振興課の元栄吉治(もとえよしはる)課長、原田孝二課長補佐、坂井輝喜(さかいこうき)さんが案内役をご担当くださいました。
今回の視察調査は、自らにとって、大きな学びとさせて頂きました。
また、参考として、先行する利尻町の事業を紹介します。
利尻町は、人口:2,037 人 面積:76.51 ㎢の利尻島にある漁業中心の町で、今回、知名町との広域連携を目指しています。
利尻町では、広域連携事業に先行して、まず単独事業として利尻町漁業の担い手獲得・育成のための支援組織運営事業を進めています。その事業目的を本事業の実施を通じた新たな漁業人材の獲得・育成のための支援組織の構築、支援スキームの整備、体制運営はこれからの町の地方創生施策の一つとして捉え、本事業の実施によって、既存施策や関連団体(利尻漁業協同組合や「NORTH FLAGGERS」)との連携を行い、漁業の担い手獲得・育成による定住移住推進と基幹産業である漁業の活性化を図り、地域内の 人口減少に歯止めをかけることを目指しています。
具体的な事業概要は、①漁業の担い手獲得・育成の支援組織「利尻町定住・移住支援センター」の運営 ②人材獲得・育成のための支援メニューの実施 ③新規事業創出(体験型観光関連) ④漁業の六次産業化推進のための加工場整備に向けた調査 ⑤新規事業創出(水産物の六次化関連) ⑥担い手獲得に向けた情報発信です。
その目標達成のために、ふるさと財団は、外部からの専門家として大久保昌宏氏の派遣を支援、そこでは、①支援組織運営のためのコミュニケーションサポート、マニュアル等の作成サポート ②支援メニューの実施に向けた関係各所とのコミュニケーションサポート ③新規事業創出に向けた計画等の作成サポート ④六次産業化のための加工場整備に向けた調査 ⑤六次産業化のためのスキーム検討、事業計画の作成サポート ⑥情報発信のための企画設計と実施を担ってもらいます。
また、具体的な成果目標は、①支援組織の運営に係るマニュアル、就業希望者のカルテ、事業管理シート、会議議事録の作成 ②人材獲得・育成メニューの実施 ③新規事業の創出 ④加工場整備に向けた調査結果報告書 ⑤六次産業化に向けたスキーム作成、支援メニューの実施 2 件以上 ⑥情報掲載メディア 2 件を掲げています。
こうして現在は、漁業の担い手獲得・育成の窓口「利尻町定住移住支援 センターツギノバ」の運営 ②人材獲得・育成のための支援メニューの実施 ③漁業の魅力化のためのガイド手配事業の運営 ④漁業の六次産業化支援事業の運営 ⑤新規事業創出(町内に不足している機能としての不動産 事業) ⑥担い手獲得に向けた情報発信を展開中です。
この先行活動を参考にしながら、両町の広域事業連携の実現を目指すことになります。
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