6月27日、カナダのCo-op学生2名(男子)と岡大生3名(女子)が真庭市にある「服部興業山林部」さん、と新庄村「國六」さん、にて寝食を共にしながら林業インターンシップ第2週目終了です。同僚の絢野ナチン先生と2人で食料の買出しをして現地へ向かいました。この日は、あいにくの土砂降りの豪雨です。真庭市の旭川上流の水位はあがり、激流に近い流れです。
この雨のせいで、森林での伐倒作業は中止です。まず、「服部興業林業部」に到着すると学生たちは、伐倒した原木を運び出すために使うワイヤーを編む実習を行っていました。鋼鉄のワイヤーを編む作業は相当な力はもとより、工夫が必要となります。それでも学生たちは、服部興業の皆様のご指導により、器用に編み上げていました。こんな技術を持つ大学生は「日本広し」といえども、あまりいないのではないでしょうか。
また、先週訪れた折に炭焼き釜から出ていた煙も消えています。釜戸は閉じられたままですので、中で炭ができあがっているのではと期待しました。
さて、宿舎としてお借りしているゲストハウスで、この1週間の活動についてヒアリングをさせて頂きました。
先週ヒアリングした「ROAD3」の作業工程は、25日(木)に無事終了したとの第一声に、まずは安堵です。週明けの22日(月)は、いつものように7時前に起床後、昼食のお弁当を準備しながら朝食を済ませ出発、8時にラジオ体操、8:30に作業スタート、午前中は、集材(ヤーディング)作業を行い、午後から伐倒作業、この日は、ヒノキに係り木があり、倒した木が他の木に引っ掛り、その重さで掛かった木が途中から折れたそうです。しかし、要領をつかみ、1日当たり、午後2時から4時で6本切ったそうです。朝から伐倒作業だった23日(火)は、3人で合わせて30本切りましたよ、と学生たちの顔がほころびます。つまり、一人当たり10本前後の木を伐採できるようになりました。
カナダとはかなり違う経験を積ませてもらっています、と第1声。彼は、来日するまで既にカナダにおいて2回のCO-OPプログラムへの参加経験があります。1回目、2回目では異なる林産企業(業種は同じ木材生産・加工の工場)へ実習に入ったそうですが、両社とも、3ヶ月間、毎日同じ場所で、同じ仕事をしたそうです。製材工場の現場では、クオリティコントロール業務を担当、監督役の人に従って動き、顧客からのオーダーに基づきレーザー処理される材木のサイズ管理が主な業務で、原木のサイズが合わないケースの確認やカットする際の長さ、広さ、厚みなどのチェックをしていたそうです。具体的には、どんどん流れ作業で来る製材された材木の抜き取り調査を行い、誤差や平均を測る作業だそうです。最初の企業は第1次生産、原材料企業で基礎を学び、2つ目の企業は加工業で、高品質を求める近代化された企業で、コンピュータで管理された製品の種類が異なる3つのラインを受け持ち、サイズがずれていると報告する業務であったそうです。カナダと日本企業の違いは、日本では工程が全部見られる点が長所であると印象を述べてくれました。つまり、カナダでは、1つの部門しか担当できなかったので、全体像がつかみにくかった。ところが、日本では、まず伐倒する木を選木する業務、実際にチェーンソーを使って切る業務、そして運び出す業務、製材する業務、市場(マーケット)で売る業務まで、全工程を体験させてくれた点が、最も大きな成果です。つまり、チームワークによる日本企業の作業システムを現場で見て、実際に経験できたことは、今後の将来を考える上で重要な知見を与えてくれたと高く評価しています、と熱く語ってくれました。
今回のプログラムに参加して伸びた点は、企業、それも野外で働くことで、教室では学べない得がたい経験が得られました。しかし、今回の経験をどのように自らの将来で活かせるかを自分の中で整理するのはとても難しい課題です。特に、私たちは専門科目では無く教養科目としての参加ですので、UBCのマットさんとは違い、活きた語学を学ぶことや林業の置かれた現実を教わることは出来ましたが、林業に関する基礎的な知識もまるっきり無い私たちにとっては、具体的な到達目標のようなものがありません。最初の1週間は、何がなんだか、全てが始めての経験のため、ともかく、足手まといにならないように、怪我をしないように、ついてゆくのが精一杯でした。
それが、2週間目に入り、ようやく少し仕事に慣れて余裕が出ました。それでも、人生の目標を定めている彼を目の当たりにして、自分がこれで成長したとは言いがたく、恥ずかしい気持ちさえ抱きます。ただし、学校では座学を通して単なる知識として学んだことが、企業では現実世界のなかで詳細な部分まで具体的に自らの行動に問われてきます。こうした経験が、大学へ戻った際に自信につながると信じたい気持ちでいっぱいです。特に、飲食のアルバイトをしているのですが、アルバイトでは、業界のおかれた状況や、正確な業務計画の立案と収益構造、チームワークの大切さ、作業の段取りと仕事の流れ、そして効率性について学ぶことは無く、単にお金儲けのために働いているのが実情です。ところが、服部興業さんでは、こうした諸点を真剣かつ丁寧に教えていただいています。実社会で働くことの厳しさとやさしさの双方を教えて頂いていることに心より感謝しています。
残りの1週間を悔いのないように頑張りたいと思いますが、やはり、3週間の実践型教育では、教育期間が短すぎると痛感しています(互恵性が出せないまま終わる)。そして、こうした現場体験や受け入れ企業のご苦労を、岡山大学では、私たち3人(「國六」さんの1名を含みます)しか得ることが出来ないことは、誠にもって「もったいない」気持ちでいっぱいです。
ROAD3が終了しました。売上は40万円です。先週の段階では、売上を24万5千円(1週間前)と見ていましたから、先週よりアップしたことになります。正直申し上げると、売り上げは、あまりあがらないと思っていたと言うより逆にダウンすると思っていました。その理由は、指導担当のKさんが外部研修で1名欠員になったこともあり、学生たちの安全面を考慮すると仕事量は減ると予測していたためです。しかし、効率を落とさないために学生たちも協力してくれたおかげで、22日(月)の集材がスムースに運び、それにより先行伐倒の作業がうまく行き、こうした先を見越した段取りをすることで、製材を担当するMさんまで、流れを止めずに作業が出来て、能率が落ちることなくチーム力を活かせたために40万円という数字が出ました。ただし、この売上には学生たちの人件費を乗せていないため、その資料も併せて作成してみます。との嬉しい報告を頂きました。
また、学生たちは、選木作業、伐倒作業、そして技術面で言ったことはきちんと守り、そして慣れが無い点が良い(マンネリ化が無い)、さらに安全面にも配慮して、真剣に業務を続けている点は高く評価できます。あとえば、それは安全に気遣い、チェーンソーにはロックかけてきちんと使っていたことなどです。
企業側からの学びについて感想をお話しますと、マットさんは懸命に覚え、彼女たちも負けずに頑張っている、そんな姿を見ていて一緒に学べてよかった、と感じています。今回の学生受け入れによる現場指導を含め、3ヶ月間の研修期間が終わった後で、前段取りの担当になる当社のAさんはじめ、職員全員が、こうして真剣に学ぶ学生たちに業務を教えることで、何の仕事を、だれに、どのように指示することが大切か、こうした頭を回すことは、平素はあまり考えていなかったように思えます。特に山の仕事は、基本的なマニュアルはありますが、現場環境や天候の状況は千差万別ですので、その場その場で、作業の順序や段取りが変わることが、ままあります。そうした際に臨機応変に的確な指導や指示ができる指導者になるためには、このたびの学生受け入れは、貴重な経験とさせていただくことができました。そして、彼や彼女たちが、自分たちの仕事に誇りが持てることを再認識させてくれました。企業としても学んだことは大きいです。
ありがたいコメントに思わず目頭が熱くなりました。