「環境再生の視点から地域開発を学ぶ」キャンパスアジアの留学生、まちなかキャンパスへ参加

キャンパスアジア教育プログラムの目的は、日本、中国、韓国の総合大学3校(岡山大学、中国吉林大学、韓国成均館大学)が、相互を理解し、共通の価値観を持って、協力し課題を克服できる次世代の中核人材の育成を実施することです。そして日本、中国、韓国の共通する学びのベースに「共通善」(個人の利益と社会共通の利益の同時追求、そのための共通価値と共通課題の共有)を置くことを狙いとしています。
「環境再生の視点から地域開発を学ぶ」キャンパスアジア
12月13日に行われた今回の企画は、みずしま財団にコーディネートをお願いし、日本の高度成長以降の経済発展を支えてきた水島コンビナートを実際に見学することにより、その現場体験により経済成長を支える日本の先進技術を学ぶことと、同時に公害問題を発生させた影で地元住民がいかに苦しい生活を余儀なくされ、その犠牲によって現在の繁栄がある点を理解するという、社会を企業と地域住民(市民)の両面から理解することです。またそこでの行政・自治体の役割と大学・大学生として考えねばならぬ点を3国の学生たちが対話により明らかにしようとするものです。
こうした多面的なアプローチながら1日で「環境と地域開発」問題に取り組みました。参加者は、学生が中国人学生7名、韓国人学生3名、日本人学生9名、それに教職員4名です。みずしま財団の塩飽研究員にコーディネートと講話をお願いしました。
まず、大学から水島へのバス移動の時間を利用してビデオ鑑賞により、水島の歴史と海への影響について塩飽研究員の解説により予備知識を学びました。また、現地を一望できる展望台から全景を眺めながらコンビナートの大きさを実感してもらいました。
続いてJFEスチール(日本鋼管と神戸製鋼の合併会社)の工場見学により製鉄技術の高さと環境対策をテーマに見学させていただきました。工場の敷地は広大です。まず、ミーティングルームでJFEスチールの企業概要と鉄ができるまでの工程を学びました。それを受けて、実際の工場内の諸施設の機能や役割を解説いただきながらバスから見学しました。

実際の溶鉱炉から真っ赤な液状の銑鉄が「トーピードカー」と呼ばれる細長いタンク車両に流しこまれ、次の工程へと送られる様に驚きました。また、実際の工場内へ入れていただき、長いレールの上を巨大な立方体の赤い鉄板が、各マシンをくぐり抜けるたびに薄く平たく伸され、次の裁断プロセスへ運ばれるという工程は凄まじく、工場内に響き渡る音と熱気は未経験の領域でした。学生たちからも次々に歓声があがりました(工場内は撮影禁止でした)。
「環境再生の視点から地域開発を学ぶ」キャンパスアジア
 ▲ トーピードカー(左)
こうして工場の見学を終え、次は倉敷市の環境学習センターへと向かいました。そこでは、一転、公害訴訟の歴史についてのビデオ学習に合わせて、倉敷市公害患者と家族の会会長の太田映知さんから講話を受けました。昔、学んだ四日市喘息、水俣病、神通川イタイイタイ病など、忘れかけていた公害の悲惨な記憶が蘇りました。それを受けて3班に分かれてグループワークを実施しました。
「環境再生の視点から地域開発を学ぶ」キャンパスアジア
 ▲ みずしま環境センターにて。太田会長
小職もAグループのコーディネートを担当し、倉敷市環境学習センターの職員の皆さんもサポートしてくれました。発表では、地域開発と環境という問題に対して、それぞれの国の学生で感じ方に違いが出ました。
プログラムの目標は、経済優先の度合い、行政によるチェック機能、技術進歩による環境対策の進展、法律整備による規制の強化、市民運動の重要性と限界といった各要素を学生たちがどのように受け止め、対話を通して持論を展開することにより、互いが国を超えて共通の理解と認識を得ることができるかに置きました。
中国・韓国の留学生にとっては、日本の公害問題を自国の将来を決定する経験知として受け止め、共有すべき課題や現状であると認識できること。また、地域開発が経済成長や企業の発展という光の部分だけではなく、公害の発生や産業廃棄物の処理など、影の部分を生み出す可能性を常に内在していることを学んでもらう、こうした点を重視しました。
「環境再生の視点から地域開発を学ぶ」キャンパスアジア
各人の所属する学部、専攻、コースを踏まえながらも、今回、与えられた課題を、互いの地域社会の問題という視座はもとより、東アジアという広域社会の成員として共有したうえで共働し合うことができれば、大きな成果とすることができると確信しています。
つまり、尖閣や竹島問題ばかりが重要視される昨今ですが、もっと大切なテーマがあることを互の国が認識仕合い、それを共通なる「善」として協力し合いながら課題解決に向かう勇気と自信を身につけることこそが、今の日中韓に求められる平和共存への道筋であると考えます。
「環境再生の視点から地域開発を学ぶ」キャンパスアジア

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