▲ 熊本城と路面電車
10月18日(木)、今回で第3回目となる熊本大学まちなか工房を訪問しました。ご対応いただいたのは、工学部の溝上章志教授です。交通まちづくりの第一人者の先生です。熊本大学まちなか工房では、「まちづくりの家庭医」となることを最重要任務であると位置づけ、2005年5月に発足され、以来、(1)研究教育と連動した地域情報の蓄積、(2)官民まちづくり組織の連携支援、(3)市民のまちづくりに関する学習交流会の提供、(4)地元民間まちづくり活動支援を柱に活動を続けておられます。
体制は、工学部教員を対象に、工房利用研究プロジェクトを公募し、採択された教員(まちなか工房教員)数名と指導を受ける学生30名弱、特任教員2名であり、事務担当職員1名がまちなか工房に常駐という体制です。
まちなか工房では、2006年の中心市街地活性化協議会発足から参画され、学生も出して教員が活動計画の提案や意見調整役をしています。また、「まちづくり学習会」を主宰し、2005年からこれまで78回、毎月のペースで年間9回~10回の開催実績を持っています(お盆や正月を除く)。こうして熊本市やまちづくり団体(すきたい熊本や商店街など)と関係を密にしながら、まちなかの課題発見と専門的知見からの現地調査、そしてその解決策の提案によるまちづくりの実践展開をしておられます。
▲ 上通り商店街
さらに、中心市街地をとらえれば、7つあった商店街団体の協力体制確立(7商協)や商店街の活性化、市電やバスなど公共交通の活性化に取り組んでおられ、最近の活動としては、下通り商店街でのショッピングモビリティ施策の実施(電動車いすのレンタルなど)、駐車場代だけでなく電動カートや公共交通、タクシー利用に際しての交通券(100円補助)発行を計画しているそうです(導入に際しては課題はあるとのことです)。
▲ 下通り商店街
さて、熊本市は、全国最大の交通センターを有するバスや鉄軌道(鉄道と路面電車)のまちであり、現在、市営を含むバス事業者5社を一元化して、バス路線や運行ダイヤなどを利用者の観点から大再編する計画が大詰めを迎えているそうです。そこではバスの計画と運営は第3者機関(熊本都市バス(株))で決定し、運行だけを従来のバス会社が担当するというスキームが動き出す予定です。この提案と調整を熊大がリードしておられます。
▲ 軌道緑化された熊本駅前
併せて、熊本市のヒアリングでは、公共交通基本条例の制定に動き出しているとの説明をいただきました。この背景には、高齢化対応、コミュニティの活性化(通勤・通学はもとより買い物や医療)、市内ゾーニングの明確化と交通不便地域の解消(新しい熊本市のグランドデザイン)、観光客の呼び込みなど、総合的な知見からまちづくりを行うという熊本市の総合計画を基本に据えています。
岡山のまちづくりや大学の活動の面で、大いに見習うべき点が多々あり、とても有意義な訪問でした。