5月30日は、総務省の外郭団体にあたる、ふるさと財団の「地域再生マネージャー事業」に選ばれた真庭市へ、財団アドバイザーの立場で参りました。
真庭市の地域再生のテーマは、「歴史を生かした里山資本主義による持続可能な未来集落形成事業」です。
その概要は
- 地域の担い手発掘、組織形成
- 地域の結・地域資産を活用した大御堂茅葺き替えによる地域のつながり(誇り)継承と再生
- 放置竹林の活用や地域循環農業等による商品化および販売方法の検討
- 地域の歴史ガイド等と特産品開発による交流促進と小さな経済創出
- 観光客と地域の高齢者の移動手段に電動自動車を利用するビジネス・仕組みづくり
- 現代のニーズにマッチした手法による演出・情報発信を地域外の若者を巻き込みながら実施
から構成されています。
さて、当日は早朝に岡山の自宅を出発して、一路、湯原温泉を目指しました。
幸い渋滞がなく現地へ到着しましたので、前日から現地入りしておられる財団の皆さんとの合流時刻に早すぎました。そこで、朝から源泉かけながしの『はんざき足湯』につかり、時間調整をさせて頂きました。
ここは「RVパークゆばら湯っ足り広場」として、RVで旅する人々にも人気のスポット、充電機能を備え、トイレも最新のウォシュレットを完備、1泊1,000円/1台(トレーラー含む)で利用できます。
さて足湯の後、旭川の川辺の駐車エリアに移動、愛車を停め、朝食は温泉場によくある老舗の喫茶店兼食堂兼居酒屋が朝から開いていましたので、モーニングを注文いたしました。女将さんと湯原温泉の景気はどうかさりげにヒアリングしつつ世間話を楽しみ、湯原温泉で煎れてくれたホットコーヒーという贅沢なモーニングを頂きました。
そして温泉寺薬師堂に参拝してから、ふるさと財団の皆様と待ち合わせ場所のホテルで合流、温泉場の見学にでかけました。
まち歩きの最初は「湯原温泉ミュージアム」です。1階には全冊1冊80円で販売する古本屋さんが入居していて、観光客を楽しませてくれます。湯治などで長い期間滞在する方には、ゆっくりと時を過ごすポイントになると感じました。
そして施設内には猫が自在に走り回っている様にも親しみを覚えることができました。
また2階には旅行作家 野口冬人氏の寄贈書籍 約1万冊が閲覧できる記念資料室があり、野口冬人氏の遺品の品々や彼が集めた数多くの旅の書籍、とりわけ温泉がある自治体の「年史、市町村史」が数多く展示、所蔵されており、温泉地の歴史を研究するには垂涎の書が並ぶ宝庫であると感じました。
産経新聞(2017.6.19)の記事を引用させて頂くと「野口氏は昭和8年、東京都出身。55年発行の旅行誌で、国内温泉地での「露天風呂番付」を発表し、東横綱を宝川温泉(群馬県)、西横綱を湯原温泉と格付け。旭川のダム直下に24時間無料で入浴できる公設の露天風呂「砂湯」を評価の対象とした。西横綱とされたことを同温泉で当時は若手後継者だった旅館経営者の古林伸美さんらが有効な宣伝素材と着目し、野口氏らから使用許可を得て今日への流れをつくった。62年には6月26日を語呂合わせから「露天風呂の日」と制定し、以後毎年、温泉街挙げてのイベントを開催。ほかにも人間ドック付き宿泊プラン「湯けむりドック」や「温泉指南役」養成などユニークな企画を展開してきたが、いずれも野口氏が監修などで協力した。 これらに敬意を表し、平成21年オープンの「湯原温泉ミュージアム」内には「野口冬人記念資料室」を併設している。」と解説の通り、見事な品々が陳列・展示されています。
われわれは、ここ湯原温泉ミュージアムの会議室をお借りして、地域活動拠点としての機能について説明を受けました。高度成長の頃に全盛期を迎えて、その成功モデルで意識を変えずに営業をしている温泉地の経営は厳しいケースが多く、商店街の活性化同様に全国の課題であります。ここ湯原温泉は、確かに新たな取組や創意工夫を凝らしておられることを、館長さんや旅館組合の方々のご説明で理解することができました。
一方で、最も利用者の多い岡山市や倉敷市を中心とした県南エリア、それに次ぐ広島県や兵庫県のお客様など、リピーターを増やす仕掛けを如何に企画してセットするかが課題であるとのご説明にも解決策の考案に向けたシナリオづくりの必要性を感じました。
そのためには温泉オンリーではリピーターの確保は難しいため、プラスアルファの魅力を創出するために何をするのか、その答えが今回の「地域再生マネージャー事業」を活用した社(やしろ)地区との連携です。湯原温泉と程よい距離で隣接する社地区は、中世延喜式に登場する、神社が数多く残るエリアで、社地域振興協議会が、社地域を訪れて中世の歴史を感じてもらおうと「散策マップ」を作成しており、ここには延喜式の式内八社をはじめ、大御堂や石造物などの遺産がいくつも点在しています。こうした社の歴史文化と湯原温泉の歴史文化が、互いに関係しあうことにより、新たな魅力を発信してくれる流れが醸成されることを祈念しました。
こうして館内見学と併せて、具体的に突っ込んだ意見交換により、地方再生に向かおうとする皆様方の心意気をお聞かせいただき、感動の時間を頂きました。
さて、ミュージアムを後に、「湯原振興局 真庭市オオサンショウウオ保護センター(はんざきセンター)」を見学いたしました。
ここ真庭は大山椒魚(オオサンショウウオ)の生息地として世界的に有名です。地元では「はんざき」の名称で親しまれています。
口から粘膜を出しているのですが、その匂いが山椒の香りに似ていることから山椒魚の名称がついたと説明を受けました。
水槽の中の山椒魚、のろのろと動く姿は、とても愛くるしく、ずっと見ていても飽きません。
時間を忘れて見とれてしまいました。癒し効果は抜群です。
この「はんざき」を活かした地方創生も大きなカギであり、湯原温泉を知っていても「山椒魚」のことを詳しく知っている人は、実は岡山県内でも少ないのではないでしょうか。
旭川にはコイノボリの変化形として「はんざきノボリ」が、皐月の川面に影を映しながら、長閑にたなびいています。
こうした長閑な雰囲気の中で、昭和26年に湯本小学校校舎として建設後、昭和45年からは湯原町役場、平成17年からは湯原支局・振興局として使用されている真庭市湯原振興局の2階会議室をお借りして、今回のプロジェクトの説明や意見交換会が開催されました。参加した全員が互いに積極的に意見を述べ合いました。
私の子供の頃の本当に懐かしい小学校の建物が役所として今なお利活用されています。耐震基準を満たしていないため、大規模な地震の発生など激甚災害の際には倒壊の恐れがあるため建て替え移転の計画があるやに聞いていますが、歴史と風情を感じる中での会議に、外から訪れた参加者は皆満足でした。
会議では、全員が創生事業に携わる専門家ですので、あるべき論は無く、具体的な施策についての有効性について議論が白熱いたしました。
とてもさわやかな時間を過ごすことが出来ました。
こうしてお昼になりましたので、温泉地を後に道の駅「ひまわり館」へ向かい、昼食をとることにいたしました。ここ道の駅「ひまわり館」は、下湯原温泉との位置づけで、温泉が湧いており、ペットも入れる湯治場として売り出し中です。地元の野菜や土産物が並んでいましたが、私は、湯原特産の青大豆を使用した「青大豆豆腐」、地元の方々が漬けた「らっきょ」や「高菜」、「山椒煮」や「川魚の煮つけ」など漬物類や佃煮をどっさり買い込みました。
食事の注文は、蕎麦打ち道場「元気庵」もあることから、ザルそば大盛(2枚を食しました。まずまずのお味でした。
また、ここ下湯原には、道の駅に隣接して病院があり、地域医療を担う拠点になっていますので、地域生活の拠点としての機能を兼ね備えているエリアであると言えましょう。
昼食を済ましてから、一路、旭川を下り真庭市役所を目指しました。
真庭市役所本庁舎で、もう一段の意見交換会を行い、議論も煮詰まったところで、朝からの議論や意見交換を終え、今回のヒアリング調査は終了いたしました。
自家用車でしたので東京組の皆様方とここでお別れし、真庭市から岡山市へ旭川沿いを下る一般道のルートをとりながら吉備中央町を抜けて帰路につきました。
新緑の旭川は見事な風景を見せてくれます。
途中で、「備前岡山池田藩営小森温泉」との大きな看板が目に飛び込みました。営業しているかどうか、いささか不安な心持で、クルマをUターンさせました。恐る恐る玄関を開けると、確かに営業しているようです。
靴を脱いで廊下を進むと、「いらっしゃいませ」の声にようやく出会いました。
金600円を支払い、地下への階段を下ってゆくと、これは素朴な湯船がありました。さっそく、一風呂浴びることにいたしました。
小森温泉のHPによれば、開湯は「享保17年(1732年)岡山藩主の池田継政が湯治場の設営に着手するまでさかのぼり、古文書によると、この工事は、享保18年(1733年)まで岡山藩直営の大普請として、莫大な費用と延べ一万の人夫を注ぎ込み、広さ約3アールの土地を掘って四方を四段の石垣で囲み、中央に縦約4.5m、横約5.4m、深さ約1.5mの湯壺とその外に直径約1.5mの湯壺2個を置いた湯屋を設営したとあります。当時は領内唯一の湯治場として賑わいをみせていた云々」とあります。
湯船に独特な香りが広がっていますが、入浴すると格別なつるつる感が身体を包んでくれました。
鉱泉なので沸かしていますが、正真正銘の源泉かけ流し、これは事前の期待をはるかに超えており、本当にびっくりしました。
他に誰もお客さんはいませんでしたので、眼下の川のせせらぎに目をやりながら、しばし仕事の疲れを癒しました。
秘湯ファンの方は、湯原温泉は別格ですが、ここ小森温泉にもお立ち寄りになられてはと思います。
最後は、吉備中央町にある道の駅「かもがわ円城」に立ち寄り、しばし休息、名物の「鯖寿司」を買い求め帰路につきました(この鯖寿司は格別に美味しいです)。
こうして行きは高速道路でしたが、帰りは旭川沿いの一般道でドライブを楽しみながら帰りました。
仕事は充実しましたし、気分転換もできた一日でした。