中国地域に住んでおりますと、冬は日本海の荒々しさを眺めに行きたくなってしまいます。また、冬の味覚の王様は、なんと言っても鳥取「松葉ガニ」です。
今年は雪が多いのですが、お休みを利用、降雪状況と路面の状態を確認して、大丈夫と踏んで出かけました。
カニなら、本来は境港へ参るのですが、久しぶりに鳥取砂丘がみたくなって、国道53号線をひたすら北上、岡山から2時間半で鳥取に到着、鳥取駅前にクルマをとめて、鳥取カニの名店「花のれん」を訪ねました。注文は「カニすき鍋」、当店のカニすきは、昆布だけで出汁をとり水炊きのようにポン酢で食するのでは無く、よせ鍋のように醤油とみりんで出汁に味付けをしていただく作法です。野菜を入れる前に甲羅や殻から投入、甲羅は鍋の真ん中に船のように浮かします。殻から出た旨み成分たっぷりの出汁が最高です。
甲羅にはミソがたっぷり、①鍋に溶かすか、②茹でてカニの身に混ぜて頂くか、③〆の雑炊に入れて「かに味噌雑炊」にするか、3択を尋ねられました。担当してくれた仲居さんは、鳥取大学農学部の学生アルバイトでした。将来は「樹木医」を目指しているそうです。ただ、お店からキチンと研修を受けていて、「カニすき鍋」の段取りも心得ていましたので、彼女のお気に入りの食べ方を逆に尋ねたら、「かに味噌雑炊」と応えてくれたので、「かに味噌雑炊」で頂戴いたしました。
さて、腹ごしらえをしてから、山陰海岸国立公園の特別保護地区に指定されている鳥取砂丘に向かいました。お天気は良かったのですが、風が強くて細かい砂が飛んできます。防寒対策をしてきたので安心です。砂の持帰り禁止の看板が眼を引きました。
ここ鳥取砂丘の特徴は、訪れた人は、まず砂丘をしばらく下ってから、今度は小高い頂上へ登ることになります。つまり、地形がすり鉢のようになっており(スリバチと呼ばれる大きく窪んだ場所)、それから海側に隆起する砂丘の一番高い地点を目指すことになります。
広大な砂丘エリアへ足を踏み入れ、一歩一歩、砂の感触を確かめながら、そして砂丘の景観を楽しみながら、日本海が一望できる地点まで歩みを進めました。
少し汗をかきましたが、ようやく頂上の丘まで登りきりますと日本海の大海原が広がりました。視界を遮るものは無く、地球が丸いことを実感です。つがいのトンビが風に乗って頭上を旋回します。しばらく砂に腰を降ろして、はるか彼方の水平線をぼんやりと眺めているうちに、日々の喧騒は消え、心は静かに、そして頭が空っぽになりました。寒さは厳しいのですが、自然が織りなす砂丘と冬の日本海はベストミックス、ひとときの安息を与えてくれました。
さすがに冷えて参りましたので、ドライブインへ引き返し暖をとりました。
店内では、多くの観光客が鳥取名物の「梨」で味付けしたソフトクリームを美味しそうに楽しんでいます。ちょっと迷いましたが、買い求めました。確かに、ほんのりと優しい上品な梨の香りがいたします。先ほどのカニのお味と正反対でしたので、食後の素敵なデザートといったところです。
最後に、砂丘から少し奥までクルマを走らせまして、岩戸漁協のある港へ参りました。
そこから断層が露出している険しい岩場の道を登り、ビューポイントを目指しました。松の木々の隙間から別の日本海が見えてきました。岩場の上が狭いながらも広場になっていて、そこから眼下を覗き込みますと、大きな岩に激しく波が打ちつけられ、高く白いしぶきが舞い上がっています。この荒々しい光景も冬の日本海ならではです。見つめているうちに、岩場に引き込まれそうな錯覚に陥りました。自然のエネルギーの凄さを見せつけられた思いです。
一瞬、日本海に向かって叫んでみようかとも思いましたが、歳も歳ですので断念。
心と身体に良く効くビタミンをたくさん頂いた鳥取でした。