日本金融学会2017年度春季大会が、5月27日・28日の両日、早稲田大学国際会議場を会場に開催されました。
朝、岡山を発ち、お昼前に早稲田へ到着、午前の部は間に合わないため、まず、久しぶりに穴八幡宮へ参拝をいたしました。そして早稲田へ行くと立ち寄る、お気に入りの「金城庵」にて天丼・もりセットで腹ごしらえをして、午後のセッションから参加いたしました。
今回の学びは、最新の中国、韓国、アセアン諸国の経済と通貨体制(為替)の事情についてです。そして日本経済や通貨(円)との関係性や今後の見通しについても大きな収穫を得ることができました。とりわけ、マスコミ報道では、中国について政治ネタが先行するきらいがあり、マイナスイメージが強かったのですが、実体経済の姿については着実な進歩を遂げていることを理解することができました。 また、初日の最後は、黒田東彦日本銀行総裁の講演がありました。黒田講演のポイントは、現在、アベノミクスや国債のマイナス金利政策で議論を呼んでいる「非伝統的金融政策」についてです。この間の日本銀行の政策スタンスと考え方を次のように述べられました(講演後に即日公開された日銀HPより引用します)。
「これまで伝統的には、中央銀行の行う金融政策は、短期国債の売買などを通じて短期金利に働き掛け、これが長期金利や他の金融資産の価格に影響を及ぼすことを主たるメカニズムとしてきました。もっとも、グローバルな金融危機後、各国の中央銀行は、名目短期金利のいわゆる「ゼロ金利制約」に直面するもとで、経済の大幅な落ち込みに対応するため、長期国債やCP、社債などのリスク性資産の買入れなどを行い、長期金利や各種のリスク・プレミアムに直接的に働きかける政策を実施してきました。いわゆる「非伝統的金融政策」と呼ばれるものです。この結果、中央銀行の市場におけるプレゼンスは格段に大きくなり、金融市場との関わりも従来とは変わってきています。こうした「非伝統的金融政策」は、金融市場の安定を確保し、経済活動をサポートするうえで大きな効果を発揮したことは間違いありません。ただし、それと同時に、様々な経済主体の行動や予想を織り込んで形成される「市場価格」の分析において、「中央銀行による政策の効果」との間の相互作用という新たな課題をもたらしており、今後、研究を深めていく必要があります。」(中略)その上で金融分野の研究者や実務家に対して「そうしたもとで、日本銀行は中央銀行として、金融市場に関する理論の発展から大きな恩恵を受けるとともに、政策運営や金融市場調節、分析等の実務を通じて得られた知見を活用しつつ、自らも理論の研究にも力を注いでいます。このようなユニークな立場から、今後も、理論と実践の橋渡しの役割を果たしていけることができればと考えています。本日、このような場において、学界を代表する方々と金融市場の実務家による議論が行われることは大変意義のあることだと思います。本日の会合が皆様にとって有益な機会になるとともに、金融市場に関する研究の進展が、金融市場に関する理解を深め、経済社会のさらなる発展に寄与するものとなるよう、心より祈念しております。」と結ばれました。
正直申し上げて、現在の金融政策については多くの研究者や実務家が疑問を呈しています。二日目28日のセッションでも、支持派、反対派によるディスカッションも開催され、多くの参加者が耳を傾けました。
初日終了後に、昔の恩師である大村敬一早稲田大学ビジネススクール(大学院経営管理研究科)教授にお声をかけていただき、この日、大村先生と共同報告された、みずほ銀行業務監査部の鶴沢真調査役と3人で、近くの喫茶店で2時間近く懇親と岡山大学での現状報告をさせて頂きました。大村先生は、早稲田大学ファイナンス大学院の責任者や内閣府審議官の経験のある、金融・証券研究分野を代表する先生です。久しぶりに「大村節」を拝聴できました。黒田総裁の講演についても鋭い解説をしてくださいました。
わが国の近い将来を考える上で、重要な学会であったと感じました。
さて、久しぶりに東京の自宅(空き家)に帰宅しましたら、庭一面にどくだみが繁茂していました。まるで「どくだみ荘」であります。今回は、除草する時間がないので、なすがまま放置にすることといたしました。愛媛の実家も空き家となっており、何とかせねばなりません。