夏休みの南国土佐[2]

土佐の銘酒に『酔鯨』があります。『酔鯨』の純米、或いは純米吟醸は、味、きれ、香り、そして大切なコストパフォーマンスを勘案すると日本一であると、昔のボスが教えてくれたことを良く覚えています。

さて、この高知県の土佐湾では、クジラやイルカのウォッチングが楽しめると云う事で、早朝、宿の朝食も諦め(おにぎりにしてくださいました)、ホエールウォッチングの船が出る宇佐港へ向かいました。

ここ土佐湾に住むクジラは、ニタリクジラと呼ばれるシロナガスクジラと同じナガスクジラ科のクジラです。ナガスクジラ科には6種類がいるそうですが、上あごに3本の線があることで他のクジラと簡単に見分けることができると教えてくれました。

午前7時30分、期待に胸を膨らませ、土佐湾を知り尽くした現役漁師さんが操る船で、太平洋に出航しました。クジラの出没する海域やスポットを巡りますが、なかなか、そう簡単には姿を現してくれません。1時間が経ち、2時間が経ち、そして3時間、出航前に「あえない日もあるのであしからず」の一言がよみがえり、会えない事への不安が募ります。

そして5時間になろうとした頃、他の船から無線が入り、船はフルスピードで動き始めました。こうして何隻かの船が集まるエリアへ到着、それでも中々姿を拝むことができません。諦めようとしたその時、わずか10メートルほど先に、クジラが姿を現しました。乗客から一斉に歓声が沸きあがりました。この一瞬の感動のために、炎天下の土佐湾に5時間漂いながら、ただひたすら海面を凝視しつづけてきたのですから、感動はひとしおです。この日は、たった一瞬のシーンでしたが、確かにクジラの泳ぐ姿が、いまもこの眼に焼きついています。

このあと船は針路を変え、今度はイルカの群れのスポットに案内してくれました。そのイルカの群れの感動も、テレビで視るのとは訳が違います。視界に海原以外に何もない雄大な太平洋の土佐湾を縦横無尽に泳ぎ廻るのですから、その様は筆舌し難いという表現しかみあたりません。活き活きとした泳ぎは爽快そのものです。

港に帰港したのは午後1時30分、なんと6時間も海上でクジラを探し続けていたことになります(実は、せいぜい2時間程度の遊覧だと高を括っていました)。

宇佐ホエールウォッチング協会によれば「ホエールウォッチング宇佐では、自然とお客様に対して最大限の配慮と努力を行うことを宣言いたします。クジラもイルカも大切、わざわざ遠方より楽しみにして高知まで足を運んで下さったお客様も大切。大切なみんなを育んでくれる自然も大切。全てに対して、敬意とおもてなしの心を」だそうです。

土佐人の心意気とプロ意識に感動いたしました。

予定していた時間を大幅に過ぎてしまいましたので、どうしようか迷ったのですが、思い切って最後のスポット室戸岬へ向かいました。進行方向右側に太平洋のマリンブルーが鮮やかな海岸線が続きます。一部には高速道路が整備されつつあるようですが、宇佐港から桂浜を抜けて室戸岬への道は一般道ですので、到着までに2時間がかかりました。

足摺岬と並ぶ土佐が誇る絶景の地である室戸岬は、澄みわたる空、吸い込まれそうな海、青い地球が育んだ大地躍動の痕跡、期待通り太平洋の荒波が巨岩にたたきつけ、そして岩礁に砕け散るスケールのダイナミックさに感動です。

ここ室戸岬の海岸では、自然観察としては、フィリピン海プレートの沈み込み帯に沿って起こる巨大地震によって引き起こされた大地の隆起の証拠を、あちらこちらで見ることができます。自然の力が創り出した岩の造形美に興味津々でした。

また、歴史の面では、坂本龍馬とともに明治維新に向けて活動した勤王の志士、中岡慎太郎の銅像があり、はるかアメリカを見つめるように海に向かって立っています。維新を目前にしながら京都の近江屋で龍馬とともに暗殺された話は有名です。

また、ここには室戸岬灯台があります。解説によれば、明治32年以来、 航海者たちの安全を照らす水先案内人として活躍、レンズの大きさは直径2m60cmと日本最大級で、光達距離は49kmと日本一だそうです。

室戸岬の先端から遊歩道があり、途中、亜熱帯植物や巨岩を眺めながら散歩を楽しみました。その後、室戸の海が一望できる素敵なレストラン「ジオパーク夢路灯(6610 GEO PARK MUROTO)」にて、とても遅い昼食をとり、ここでは全国的に有名になった海洋深層水を使ったご当地ラーメンを食しました。

ジオパーク夢路灯

(この他の写真は夏休みの南国土佐[2]の記録(三村聡研究室)にまとめていますので、よろしければそちらもご覧ください)

最後に室戸世界ジオパークセンターに立寄りました。「大地との共生ゾーン」、「大地と歴史文化ゾーン」、「大地のいとなみゾーン」など、興味深い展示にしばし見入ってしまいました。

こうして2泊3日の愛媛、高知の旅を終えました。