鳥取県三朝町の「キュリー祭」に参りました。「キュリー祭」とは、ラジウムの発見者であるキュリー夫人の偉業を讃える祭りで、今年は60回目を迎え、7月30日~8月6日の一週間をキュリーウィークとして祭りを開催されました。キュリー広場ではお祭りステージ、三朝川では川魚のつかみ取りなどが行われ大人から子どもまで楽しめるイベントです。また、打ち上げ花火も期間中毎日開催されています。三朝へは、5月4日に開催された三朝温泉「花湯まつり」の「陣所(ジンショ)」“大綱引き”に留学生と参加して以来です。
8月5日の午後、大学を出発、高速道路を乗り継ぎ湯原インターまで参り、そこから一般道を三朝へ向かいました。途中、人形峠を越えて鳥取県に入り、しばらくすると三朝の街が見えてきます。三徳川沿いには、「キュリー祭」にふさわしくキュリー婦人出身のフランスの旗と日本の旗が交互にはためきます。
まず、岡山大学三朝宿泊所にチェックインし、その足で岡山大学惑星物質研究所を訪ねました。ここ惑星物質研究所は、「地球の起源・進化・ダイナミクス」に関する先導的研究を実施するなかで、地球を構成した太陽系物質の起源や物質進化に対する情報を求め、地球科学が惑星物質研究を内包する形で研究領域を広げ、ハヤブサがイトカワから持ち帰った鉱物の分析・研究など地球外物質、地球内物質双方の世界最先端研究拠点となっています。地球物質では、現在、三朝温泉はじめ温泉の本格的な成分分析に着手しています。
この日は、中村栄三研究所長の研究室をお訪ねし、三朝地域における地域資源としての大学のあり方と地方創生について意見交換をさせて頂きました。
一旦、宿泊所に戻り、着替えてから、三朝温泉多目的駐車場を会場に開催される三朝マルシェに参加しました。マルシェでは、会場でお借りした長机でプレゼンテーションエリアを設営、スクリーンとプロジェクターを持ち込み、地方創生をメインテーマに、そして山形県かみのやま温泉など全国的に広がり始めている「クアオルト」(森林や温泉などの自然を利用して治療・養生 を行う長期滞在型の保養地)をサブテーマに話題提供をさせて頂きました。長く授業や講演をさせて頂いて参りましたが、屋外でプレゼンテーションをするのは初めての経験です。
倉吉商工会議所の吉田圭子副会頭、地元有名旅館のご亭主はじめ地域の皆さん、地域おこし協力隊、東京の大学から鳥取県に1年間体験勤務しながら地方創生に取り組む皆さん、ベトナムハノイ大学講師の身分を持つ研究所への研究留学生、岡山大学職員など、大勢の方がプレゼンテーションに耳を傾けてくださいました。わいわいがやがや酒をくみかわすうちに、お待ちかねの花火が夜空を照らします。この花火の勢いも加勢して、いよいよ宴たけなわ、議論は大いに盛り上がりました。今回の企画は、鳥取県庁から岡山大学惑星物質研究所へ出向されている山本直生総括主査のコーディネートです。彼のお陰で、地域の皆様と有意義な時間を過ごすことが出来ました。ぜひ、一度「クアオルト」の専門家やビジネスモデル構築に関する専門家を三朝にお招きして、「三朝温泉の更なる飛躍と地方創生」といったテーマで、シンポジウムを開催してはどうかと提案申し上げました。
さて、三朝温泉は「日本遺産指定第1号」です。源泉が見つかり、浴場として人々に親しまれるようになって平成28年で開湯850年を迎えました。今回は、マルシェの帰りに、中心街にある「たまわりの湯」(500円)で汗を流しました。三朝の湯は、高濃度のラドン含有量を誇る世界屈指の放射能泉です。ラドンとは、ラジウムが分解されて生じる弱い放射線で、身体に浴びると新陳代謝を活発にする「ホルミシス効果」と呼ばれる免疫力や自然治癒力が高まる効果があると書かれてあります。まちなかから宿泊所までの帰りの道すがら、地元のスーパーで鳥取名産「二十世紀梨」を購入、頬張りながら風呂上りの三朝の夜を散歩いたしました。あっさりとした甘さが口の中一杯に広がり最高の気分でした。
翌日6日は、宿泊所で朝食をとりました。テレビニュースで、米軍による原爆投下から71回目の「原爆の日」を迎えた、被爆地である広島平和記念公園で黙祷をささげる人々の様子が流れました。私たちも静かに黙祷をささげました。
さて、宿泊所のお風呂も24時間源泉かけ流しです。チェックアウト前に朝湯を楽しみました。それから岡山大学惑星物質研究所の車で市内視察を行いました。三朝は周囲を急峻な山に囲まれているため、研究所の車はランドクルーザーです。これには驚きました。山本直生総括主査の運転で、まず、三朝バイオリンミュージアムを訪問しました。ここは、バイオリンの製造を行う工房を持っています。また、館内では結婚式の撮影を行っていました。とてもハイセンスかつ趣のあるスポットです。クラシック好きには、たまらない時間と空間を提供してくれること請け合いです。
次に、臨済宗相国寺派別院にあたる古刹「南苑寺」に参拝いたしました。緑の大木に覆われた小路を下ると狭いながら寺の境内に出ます。寺院の建物群は急斜面に張り付くように並ぶにもかかわらず、堂々とした佇まいをみせています。ここからは、爽やかな風に吹かれながら、眼下に三朝のまちを一望することができます。南苑寺は「日本遺産指定第1号」の遺産群のひとつです。寺院にあがらせて頂き、ゆっくりと拝観しながら、しばし、心を沈めて休息をとりました。
山本直生総括主査のお心使いにより、三朝名物松之屋の「とちもち」を土産に頂きました。
また、三朝道の駅にて、朝どれの超特大のスイカや野菜を購入、こうして、キュリー祭で賑わう三朝を後に帰路につきました。