真備復興記念シンポジウム

倉敷市は、今年度が復興計画の最終年度となることから、復興を記念した市主催行事として「真備復興記念シンポジウム」吉備真備公と真備の歴史・文化・復興~これまで、これからの真備を考える~を、8月11日、倉敷市真備にあるマービーふれあいセンターにて開催いたしました。

シンポジウムでは、平成30年7月豪雨災害から5年を迎えて、真備地区の復興が進む中、吉備真備公の物語「ふりさけ見れば」の著者である安部龍太郎先生の基調講演や、真備地区の復興に携わる有識者によるパネルディスカッションを通じて、これまで、そしてこれからの真備を考える内容となりました。

会の冒頭、伊東香織倉敷市長が、吉備真備に扮したコスチュームで登場、真備の災害からの復興が、住民や地域関係者の皆様方の努力によりまして、また国や県や倉敷市の支援により、ようやくここまで進んできたことを宣言いたしました。約700名のご参加者で満員のホールからは、大歓声と大きな拍手がありました。

そしてオープニングを飾る、真備地区にある二つの中学校のブラスバンド演奏がありました。先の豪雨災害では、真備地区のすべての学校が甚大な被害を受けました。一時は授業の再開も危ぶまれた事態となり、倉敷市は生徒たちが離れ離れのばらばらにならぬよう、近隣エリアの学校の校庭に仮設教室を設け、住まいを失って、親戚知人宅、仮設住宅や賃貸住宅などへ離れ離れに避難した子供たちを、倉敷市が莫大な費用を投じて交通手段を確保、クラスメートが引き続き一緒に授業を受けられる環境を維持した政策は有名になりました。こうした努力が実を結び、その証として、一糸乱れぬ見事な演奏を聴くことができました。
嬉しさがこみあげ、思わず、目頭が熱くなってしましました。

さて、基調講演では、「吉備真備の物語」と題して、直木賞作家の安部龍太郎(あべ・りゅうたろう)先生が登壇されました。安倍先生は、東京都大田区役所職員、図書館司書として働きながら小説の執筆を続け、1990年「血の日本史」でデビュー。2013年「等伯」で直木賞受賞。その後、山陽新聞に「家康」を、そして、令和3年7月から令和5年2月まで567回にわたって日本経済新聞に「ふりさけ見れば」を連載された歴史小説家です。
吉備真備は、安倍仲麿と共に遣唐使として唐に渡り、様々な知恵や技術、発明品や特産物を日本へ持ち帰り、法治国家としての律令制度を核とした国の礎を築いた、真備が生んだ偉人です。真備の復興では、地域の皆様方の結束力の強さ、絆の強さが多くの催事や活動のシーンで実感することができました。そのDNAの根源でも申せましょうか、住民パワーのルーツを安部龍太郎先生の深くて澄んだ講話に中に見つけることができました。そして吉備真備が、大和朝廷との関係において吉備王国の期待を一身に担って、大和朝廷のもとで気概を持って遣唐使に臨んだことを知ることができました。

休憩を挟んで、吉備真備公と真備の歴史・文化・復興をテーマに、「これまで、これからの真備」についてパネルディスカッションです。
パネリストは、歴史小説家の安部龍太郎先生に引き続き登壇いただき、加えて、西洋中世哲学研究者の広島大学名誉教授博士(文学)の水田英実先生、地域防災研究者の立場から東京大学生産技術研究所教授博士(工学)の加藤孝明先生、地域のまちづくりの担い手として真備地区まちづくり推進協議会連絡会の高槻素文会長、そして伊東香織市長といった多様な顔ぶれです。真備地区復興計画推進委員長の立場で、コーディネーターを担当させて頂きました。
誠に複眼的、多面的な視点で真備の歴史と文化を活かした未来のまちの方向性について議論が展開されました。岡山大学の立場からも学生ボランティアや専門性を活かした多くの先生方の支援活動についてご紹介、振り返らせて頂きました。
会場の皆様からも復興をさらに進めようとの力強いパワーを頂きました。
誠に復興を記念するにふさわしいシンポジウムとなりました。
微力ながら、復興計画の策定から推進まで、ここまで5年間お手伝いをさせて頂いて参りましたが、その甲斐があったと、しみじみと実感することができました。
さらに輝くまちづくりの推進に向けてお手伝いを続けて参ります。