「平成30年7月豪雨」真備の復旧・復興に向けて

7月25日、朝から岡山大学は危機管理対策担当の菅誠治理事・副学長と小職の二名で倉敷市を訪問、倉敷市生水哲男 副市長、河田育康 副市長と約40分間面談いたし真備地区の復旧・復興の現状をお聞かせ頂き、岡山大学の具体的な支援のあり方について、本音で意見交換させて頂きました。

冒頭、菅理事より、このたびの水害による死者・被災者の皆様はじめ関係者の皆様に対して、槇野学長に代わり、哀悼の意、および、ねぎらいのメッセージをお伝えして、岡山大学のこの間の主な支援活動について報告しました。

それに対して、生水(おみず)副市長および河田(かわた)副市長より感謝の意が伝えられ、資料に基づき、今回の豪雨災害からの復旧・復興に向けて、①被災状況の概要、②避難の状況、③復旧の進捗状況、④ボランティア活動を含む被災者支援関係について説明を受けました。

その要諦は以下の通りです。

① 被災状況の概要

被災状況では、被害面積が約1,200ha、床下浸水を含む住宅被害が4,600戸、1.8mメートルを超す水害に合い全壊した住宅が2,818戸となっている。これは、倉敷市が示していたハザードマップに符合する結果となっている、としながら「平成30年7月豪雨による倉敷市真備町周辺浸水推定段彩図」及び「同推定浸水範囲の変化(資料3参照)」に基づき図面により説明。多大な瓦礫が発生、全ての処理には1年から1年半はかかると予測しており、また、ようやく浸水した箇所から水は退いたものの、県内はもとより、全国から様々な支援を受けながら、引き続き復旧作業がなされている。

② 避難の状況

真備地区が甚大な被害を受け、当該地区の岡田、薗、二万の三小学校だけでは、到底収容できないため、倉敷、水島、玉島、船穂はもとより、総社市にも支援を仰ぎ、7月25日現在で、2,306人が避難所へ非難している。そこへ倉敷市職員を分担して派遣している。一方、家族・親戚、知人・友人宅などに身を寄せている人も相当数いると思われる。

③ 復旧の進捗状況

まず、ライフラインは、水道が復旧した。ただし、取水量に制限を設けている状況である。下水道についても、一部を除き回復している。ただし、従来どおりのレベルで正常な浄化を行うためには、あと、1年程度はかかる見込み。次に河川の状況であるが、国土交通省の迅速な対応で、小田川本流については修復作業が完了した。また、支流については県が担当、今月末までに修復作業が完了する見込み。倉敷市としては、市が担当する農業用水路などに堆積した汚泥の取り除き作業が今後の課題となる。なお、ポンプが被害を受けているため国のポンプ車を残してもらい、それで作業を継続中である。

次に住宅については、学校を避難所として利用している場合、体育館のみならず、教室を使用している場合もあり、2学期までには空けないと、子供達の教育環境に問題が発生するため、迅速な応急修理や借上型仮設住宅の斡旋、紹介をはじめている。また、仮設住宅の建設(当面は200戸)については、極力、真備に近いほうが良いものの、まとまった敷地を確保するために倉敷市内の公園などから候補地を選定している。なお、水島地区をはじめ、使用していない社宅が多く存在する。耐震補強工事がなされていないため、県から使用許可が下りない。この点については、非常時である点を鑑み、県に期間を決めてでも使用を許可頂くよう、働きかけるなどのアクションをとりたいと考えている。

瓦礫の除去・処分については、現行の処理能力では、到底、追いつかないため、水島エリアに岡山県などがごみの破砕や分別といった中間処理を行う処理プラントを新たに建設することが検討されている。また、医療については、全国レベルで医療チームが現地に入り、活動を展開、災害診療(非常時対応)から一般診療(平常対応)に戻っている。窓口も県の保健所本部から備中県民局になり、保健師などによる巡回活動も開始され、歯ブラシを配るなど口腔ケアも進んでいるため、歯学部からお話があった口腔ケアについて話題提供したが、とりあえず、倉敷の歯科医師会は現地に入っているそうで、当面は、それで様子をみるとの返答であった(緊急の要請は無かった)。

なお、被災者支援ボランティア関係では、真備地区へのアクセスは、中国職能開発大学校(倉敷市玉島長尾1242−1)体育館に設置した倉敷市災害ボランティアセンターを拠点に、加えて玉島ポートアイランド災害VC第1駐車場(岡山県倉敷市玉島乙島玉島ハーバーブリッジ手前)にクルマで入るボランティアや関係者向けの大規模駐車場を用意、鉄道では新倉敷駅北口と、3箇所から真備に向けてバスを出している。ボランティアの方々も、そこから真備町に入っていただくようにしている。

今後の要請事項として、短期的には、猛暑の季節であるので、無理しないようご留意いただきながらも、学生さんに息の長い、復旧支援ボランティアに参加して頂きたい。また、長期的には、当面の復旧に向けたプロセスでも岡山大学に支援を頂きたいが、落ち着いた時点で、次は、「安心安全で、夢の持てる真備地区の復興」を目指したい。復興に向けた組織体制を組成する際に、都市計画、防災計画、交通計画、商業計画、医療ケア、文化・教育、まちづくりなど、幅広い専門的な知見で岡山大学に協力を頂きたい、とのお申し出を頂きました。

今後は、現場の情報窓口を、倉敷市は企画財政局、岡山大学は地域総合研究センターとし、互いに連絡・連携をとることで合意しました。また、具体的な組織体制については、互いが持ち帰り協議の上で、トップの方針を伝え合い確定させることで合意しました。

激甚災害がもたらした事態から一刻も早く脱し、未来に夢が持てる安心・安全に暮らせるまちに再生するまで、息の長い支援活動を全学体制で展開して参ります。

また午後は、岡山放送の番組審議会でした。今回の災害に関するニュースについて激しい議論がなされました。TVを見ることのできない被災された方のことを考えると、ニュースは誰のために流されるのか、避難所に入って被災された方の様子を放映することに果たして問題は無かったのか等々、予定時間を超えた審議が続きました。

審議委員長の大原謙一郎先生(大原美術館名誉理事長)から、大学の活動に期待する旨のご発言を頂きました。身の引き締まる思いでありました。