美作市上山集落訪問

美作市上山地区の棚田

美作市上山地区の棚田

5月23日全国的に地方創生の取り組みが進むなかで、この4月から文部科学省高等教育局大学振興課へ戻られた荒木秀治さんにお誘いいただき、岡山県美作市にある若者を集めて「棚田の再生」に取り組んでいる上山地区を訪問しました。
山間に広がる上山地区は、懐かしい日本の里山の原風景である棚田とトタン葺きながら茅葺屋根の古民家の景色が一面に広がり、思わず息を呑む美しさです。それを囲む山には松林や広葉樹が多く、都市の喧騒から隔絶された癒しの空間、心のオアシスといえます。

大芦池推移調整口

大芦池推移調整口

ご案内頂いた「一般社団法人上山集楽」の西口和雄代表理事と同社団社員で美作市英田上山棚田団の松原徹郎理事によれば、「上山地区は、主に広葉樹から構成された山林約1000haに囲まれた谷あいの地形であり、奈良時代から形成された棚田が8300枚(およそ100ha)あり、その規模は世界的に見ても大きい。地域には67戸、180人程度が居住しており専業農林業者は少ない。年齢構成は65歳以上の高齢者が過半数を割る程度である。昭和40-50年頃より、棚田の大部分が耕作放棄されたが、2006年より主に京阪神の都市住民や移住者が棚田復活と地域活性に取り組み、2015年までに移住者20人、交流延べ人数は5000人を数え、全棚田の25%の再生に成功している。今後数年で全棚田の再生を完了予定であり、上山棚田は文化庁の「重要な文化的景観候補」、2013年にはその棚田再生活動が日本ユネスコ協会より「未来遺産プロジェクト」に選定され、世界遺産の候補になる可能性が高まってきた。」だそうです。西口和雄代表理事のご自宅に到着しますと、さっそく集落廻りにお連れくださいました。

西口和雄代表理事と荒木秀治さん

西口和雄代表理事と荒木秀治さん

まず、標高550メートル、集落で一番高い展望台(ヘリポート)へご案内いただき、集落全体が一望できる見晴台とも申すべき鉄塔に登り、集落での活動の様子と、今後の事業活動の方向性、将来ビジョンをお聞かせ頂きました。次に、棚田の水源となっている大芦池にて水を棚田へひく仕組みとその管理の状況を、さらに温泉施設や宿泊施設、運動場や体育館などの拠点にて、現状の活用状況や課題について説明を受けました。そして一旦、西口代表理事のご自宅へ戻り、セグウエイを2台、荒木さんと私のために準備していただき、私たちはセグウエイで活動の拠点である「いちょう庵」へ移動しました。

フランスのモビリティ調査の折にパリでセグウエイに乗車体験をしたことはありましたが、中山間地域、それも棚田を眼下に眺めながらセグウエイで移動する体験ができるとは想像がつきませんでした。アップダウンがありますが、セグウエイは軽快に風を切って走ります。これだけで極上の観光になると思います。

「いちょう庵」にて地元食材で作られたカレーライスとサラダをご馳走になりました。お肉は鹿肉です。味も抜群でお替りをさせて頂きました。農作業をしていた皆さんが昼食に戻られ、庵内は活気にあふれます。棚田団のスタッフの皆さんや広島県の呉市から参加されている親子連れの方としばし談笑させて頂きました。夏には学生たちを連れて泊まりでこようかと思います。

いちょう庵囲炉裏端での昼食

いちょう庵囲炉裏端での昼食

昼食を済ませて再びセグウエイで西口邸へ戻り、ご自宅を案内頂きました。古民家本体は堂々とした造りでありますが、裏山の開墾に併せて増築を重ねておられ、はしごを使って隠れ家のツリーハウスへお邪魔させてもらいました。その手作りテラスからの眺望は見事であり、目の前を燕が飛び交い、遠くから鶯の上手な鳴き声が聞こえてきます。しばしソファーでまったりです。そうこうしている内に、トヨタモビリティ基金のお二人が東京から到着され、超小型モビリティを活用した集落活性化について意見交換をさせて頂きました。とても有意義な時間を過ごすことができました。そして、なんと最後に展望台まで参り、ヘリコプターで上空から上山集落をご案内いただくことになりました。これはまさに「天にも昇る」体験であり、改めて上山の美しさを鳥になった気分で味わうことができました。

上空から見た上山地区

上空から見た上山地区

地方創生を若い力と地元が力を合わせて手作りで行う美作市上山地区の取り組みに感服です。そして西口代表理事はじめ棚田団の皆様方に感謝です。
上山の棚田全てが蘇る日が訪れることを心より希求いたします。