スポーツを生かした岡山のまちづくりを考える「おかやまスポーツプロモーション(SPOC)研究会」は、岡山経済同友会、岡山商工会議所、岡山大学、山陽新聞社、バレーボール・Vプレミアリーグ女子の岡山シーガルズなど複数の団体で構成された組織です。11月8日に開催された「おかやまマラソン」では14、000人のランナーが県都を駆け抜けました。本研究会では、スポーツは地域を元気にする重要なファクターであると位置付け、岡山の生活を豊かにするため、市民参加によりスポーツ機運を高める方策の提案や、競技施設周辺のJR岡山駅西口一帯の活性化につなげることをめざしています。また、現在、岡山市では新しい総合計画の策定作業が進んでいます。こうした流れを加速化させる一助となることを目的にシンポジウム「市民参加による岡山市の地方創生」を12月21日に開催しました。会場は岡山駅西口にある国際交流センター8階イベントホールです。
まず、開会に先立ち、梶谷俊介SPOC研究会代表が主催者挨拶に立ち開会を宣言いたしました。第1部「スポーツで盛り上げるまちづくり」では、パネリストに大森雅夫岡山市長、ファジアーノ岡山からホームタウン推進室の上條仁志室長、岡山シーガルズから高田さゆりマネージャーが、そして、岡山大学経済学部4年生(おかやま百年構想代表)の長宗武司君が登壇しました。
コーディネーターは、岡山大学教育学研究科高岡敦史講師がつとめました。そこでは、「現在、岡山市はスポーツ熱を帯びており、まちはスポーツで元気になっていて、第一回おかやまマラソンの成功は、今後のスポーツを活かした地域活性化に可能性があるという期待感を大きく拡げてくれたと思う。岡山市をホームタウンとする2つのプロ・スポーツクラブの活躍も目覚ましい。相手のあるスポーツなので勝ち負けやリーグ内順位はミズモノであり、大事なことは、多くのスポーツファンがホームゲームに集い交流することと、岡山市民の誇りや愛着の対象として活動されていることである」と問題提起がなされました。そして、おかやまスポーツプロモーション研究会でも、スポーツでまちを盛り上げ、地域を活性化し、生活をスポーツ文化溢れる豊かなものにしていくための取り組みを進めているところであり、Vサマーリーグ岡山大会と連動したまち回遊性向上のクーポン付マップの配布、岡山シーガルズのタペストリーの掲出、プロ野球選手自主トレ誘致などの活動振りが紹介されました。
今まさに岡山、とくに駅西口エリアは、スポーツをひとつの起爆剤として地域活性化が動きだしていると言え、今後、この熱を今以上に大きくし、岡山市を明るく豊かなものにしていく好機である点を、実際に岡山マラソンに参加した大森市長が、「32.195キロにわたる沿道では、手を振り応援する市民の姿が途切れることはなかった」点を強調されました。また、岡山出身のオリンピックメダリスト有森裕子さんの完走の様子やエピソードなどを披露くださいました。さらに、プロスポーツ団体からは、地域と密着した子供向けのサッカー教室やバレーボール教室の開催状況、プロ精神を地域の子供たちに伝える姿勢などが話題提供されました。そして、長宗君から全国を廻って収集したプロスポーツと地域社会との連携の実態、そうした活動が地方創生につながると確信して岡山駅西口や奉還町商店街を拠点に活動を続けている様子が報告されました。
こうして第一部では、岡山市中心市街地の地域活性化に向けて、スポーツをどのように活かしていけるのか、そのとき、プロ・クラブができること、行政ができること、経済界や市民ができること、大学や学生たちができることを考え、バラバラな取り組みにならないように、つなげていく方向性が確認されました。また、大学生である長宗君が大森市長に、今後のスポーツを起点とした市政の進め方について問うシーンや、参加していた岡山シーガルズの選手が、まちとスポーツの関わり方について、「積極的な連携を進めてゆきたい」と力強く宣言するシーンでは、会場は拍手に包まれ、大いに盛り上がりました。
続く第2部では、第1部での議論を踏まえて、スポーツに限らず、幅広に岡山市中心市街地の活性化について、これまで、本格的な議論があまりなされてこなかった「東口と西口の連携」をキーワードに議論が進められました。パネリストは、岡山大学から阿部宏史理事・副学長(岡山市基本政策審議会委員)、そして、梶谷俊介代表(岡山経済同友会地域振興委員長、岡山市基本政策審議会委員)、岡山商工会議所まちづくり委員会から高谷昌宏委員長、 奉還町商店街振興組合振興組合岸卓志理事長、山陽新聞社岡山一郎論説副主幹が登壇しました。そしてコーディネーターは、岡山大学地域総合研究センターから小職が担当させていただきました。
まず、テーマ設定のコンセプトと問題意識は、地方創生が言われる中で、来年度から岡山市においても新総合計画がスタートすることや、イオンモール岡山が開業1年を迎え、イオン進出が岡山の街にインパクトを与え、商店街や百貨店、専門店も独自色を打ち出した戦略を展開しつつあることを紹介申し上げました。また、路面電車の延伸、コミュニティサイクル「ももちゃり」の普及や西口への展開、岡山市民病院・川崎病院・済生会病院の新築、市民会館の新築計画、まちなかでの交通社会実験、市民マラソンの開催、市民主役の西川緑道公園・石山公園イベント、奉還町でのプロスポーツと市民参加によるまちづくりなど、新たなムーブメントが沸き起こりつつある点を確認させていただきました。こうしたなかで、パネリストからは、岡山県と岡山市の連携体制も良好な関係を築きつつあり、この流れを加速させる必要がある点、また、こうした環境がプラス面で整いつつある中で、今回のシンポジウムでは、従来、東口を中心とした1キロスクエアでの中心市街地化活性化の議論が多いが、西口には大学や専門学校、高校が集積し、さらに動物園や植物園、そして総合グラウンドを舞台にプロ、アマ問わず、スポーツを起点に若者や市民が集う機会に恵まれており、いまこそ、東口と西口が連携した総合的な岡山市中心核のまちづくりの議論をすべきタイミングが訪れている、と全員からメッセージが伝えられました。高谷氏から商工会議所が進めてきた1キロメートルスクエア構想との西口側との連携ストーリーを描く重要性、岸理事長からも東西の商店街連携の可能性やイオン効果の波及シナリオ策定の大切さ、阿部理事、岡山論説副主幹の両名は、長く岡山市のまちづくりを指導、論評してこられた立場から、これまでの取り組みの歴史と現在の課題について、今こそ最後のチャンスである点を強調されました。
こうした課題提起に続き、2巡目では、今回の企画を主催された、梶谷俊介氏が、こうした岡山市の新たな動きをSPOC研究会の目的や狙いを踏まえて持論を披露頂き、次に、深く岡山市のまちづくりに関わってこられた高谷氏からは、現在、岡山商工会議所まちづくり委員会で議論されているテーマや問題意識、そして今後の課題について、さらに、西口エリアを代表して岸氏より、イオンモール岡山の出店による西口エリアへの影響、また、イオンとの共存共栄を図るうえでの、奉還町商店街の目指すべき姿について、先ほどの学生たちのスポーツによるまちづくり活動への評価、そして奉還町の直面する今後の課題も含め忌憚の無い意見が出されました。こうした経済人からご意見に続き、岡山氏が、長年、マスコミの立場から岡山の街づくりを見て、参加して、そして検証して感じた点を「記者の眼」から述べ、最後に、これまで多面的な角度から、岡山市のまちづくりに関する様々な計画や実施、検証を有識者としての責任者の立場で、長きにわたり見てこられた、阿部先生より、ここまでの道のりを振り返っていただきながら、いまの岡山市に求められているキーワードについて、岡山市の次期総合計画にも深く関わっておられる立場から持論をご披露頂きました。
会場の皆様にも小職からマイクを向けさせて頂き、今回のテーマである「東口と西口の連携」の焦点をあて、何が東口と西口をつなぐ突破口となるか、何をしなければならないか、岡山経済同友会代表幹事の松田久様はじめ多くの方々から貴重な意見を頂くことが出来ました。こうした点を踏まえ、梶谷SPOC代表はスポーツプロモーションの観点から、高谷委員長は経済界の観点から、岸理事長は商店街の観点から、岡山論説副主幹はマスコミの果たすべき役割、そして阿部宏史理事・副学長は、地域資源としての大学の果たすべき役割という観点から、考えを述べて頂き、結びとして、ここまでの議論を踏まえて、岡山市の未来に向けて、最も重要である考えを「提言」として全員から宣言いただきました。
こうして、岡山地域総合研究センターが地域社会と協働して開催する今年最後のシンポジウムでした。スポーツとコラボレーションしたまちづくりを展開する学生サークル代表が、岡山市長、プロサッカー、プロバレーボール代表に話題提供して意見を求めるスタイルで進めました。後半は岡山のまちづくりを進める経済人、大学人、マスコミの代表が、現在の課題と展望を本音トークでした。
閉会の辞を、岡山地域総合研究センター長でもある荒木勝社会貢献担当理事・副学長が述べさせていただき盛会のうちに終了いたしました。
シンポジウムの終了後、会場を奉還町商店街にある居酒屋に移して反省会と1年の活動を振り返る納会が開催されました。岡山シーガルズの河本昭義監督も駆けつけてくださり、会場の熱気は一気にピークに達しました。
関係者の皆様、ご苦労様でした。