さて、岡山シーガルズは、女子バレーでは唯一の地域が支えるクラブチームです。私はチームの強さや試合の内容、つまりバレーについては全くの素人です。勿論、本日は、ゲームを一観戦者として楽しみましたが、同時に企業体としての価値やM&Aの企業査定という観点から拝見しました。つまり、本日、試合後にチームの事を熟知されている皆さんからお話をお聴き出来ました。選手に大物の外国人がいるかいないか、日本人でもメダリストやそれに準ずる選手が何人在籍しているか、対戦相手の事情を考慮した攻撃力や守備力、一般的には企業チームがほとんどですので支える企業の力量、監督のキャリアと試合運びや選手育成の方針等々、その論評は流石だなと感心仕切りでありました。
一方で、岡山シーガルズは、地域が支えるクラブチームとして活動するスポーツ事業体であり、そのクラブチームとしての価値を、事業評価、株主価値、企業価値の観点から分析して、これらの価値を検証、そして引き上げるためには、一般の製造業やサービス業とは全く異なる観点からアプローチする必要であると、この度の試合を観戦しながら確信しました。企業価値の測定の際に用いられる一般的な考え方では、企業が行う事業活動により直接生ずる事業価値、その事業価値からマイナス要因として負債等を差し引いた残りを株主価値、また事業価値に社歴はじめ企業のブランド価値や本業とは直接かかわりない保有資産など付随する価値を加えた企業全体の価値を企業価値といいます。そしてM&Aの議論で重要とされる点が、ある企業が対象企業の買収或いは合併を検討する際にキーワードとなる買収或いは合併によるシナジー効果の大きさです。
つまり、シナジー効果とは、2つ以上の事業(事業体)が結びつくことにより、単なる足し算を超す効果を期待する相乗効果をいいます。今回、岡山シーガルズの強化を考えるケースを想定しますと、一般的なM&Aのセオリーでは、企業対企業(複数の場合も多い)の結合が前提になりますが、岡山シーガルズの将来を考える場合には、公共的・公益的価値を高めるために、企業ではなく、地域社会を構成するステークホールダー(産官学民)が、市民にとっての事業評価、株主価値、企業価値の観点から本気で複眼的な議論を深め、具体的なビジネスモデルを策定、実践展開することにより、企業のM&Aの概念を大きく超えて、地域を元気にするためのシナジー効果をあげることができる、岡山シーガルズを起点としたグランドデザインを描ききれるか否かにかかっていると考えます。
例えば、「観戦者を増やすことは試合に勝つこと」と断ずることも正しいと考えますが、同時にシナジー効果を加えることにより、地域にもたらされるであろう公共交通、飲食、宿泊、アフターコンベンションなどの売上アップを目指すインカムシナジーやリテンション率の向上、つまり、従来から試行錯誤がされている奉還町商店街とのクロスセルを始めとした経済効果への波及シナリオの検討が重要であると思います。特に私の立場からは、ゲーム運びの方法や選手の起用などシーガルズが試合に勝つことへの論評は無縁であり(ファンとしては関心事ではありますが、それは監督やコーチ陣が専ら考えられるべきことであり)、客観的第3者からの目線で、企業価値を引き上げるアプローチや仕組みづくりを考えるお手伝いすることが使命であると痛感しました。