利他の心

1月17日は、倉敷市でのミーティングの前に、大原本邸で開催中の特別展「大原孫三郎展」を拝観させて頂き、心に勇気と余裕を頂戴いたしました。

大原孫三郎翁は、言わずと知れた日本を代表する実業家です。

翁は、明治以前の日本が育んできた歴史や文化と維新以降の西洋文明の摂取という狭間にありながら、単にその差分を埋めるとした思考回路とは異なり、新たな日本国が進むべき真理や制度を見出そうとしました。そのために、倉敷に関係する先人や周囲の地縁、人縁に支えられつつ、広い世界で出会った人々の教えにも耳を傾けながら、様々な諸相の真贋を自ら複眼的な視点で見極めるために、現在の大原美術館(芸術・文化)、法政大学大原社会問題研究所(社会)、倉敷教会(宗教・福祉)、労働科学研究所(労働)、倉敷中央病院(医療)、中国銀行(経済)、岡山大学資源植物科学研究所(農業)、倉敷紡績・クラレ(産業)、中国電力(社会基盤)といった機関や施設の創設をはじめ、様々な社会貢献事業を展開されました。翁の偉業は、研究者の視座から見つめると、「科」に分化してしまった領域を、官に頼らず民の立場から、戦前の理不尽な社会環境にも屈せず、社会を俯瞰しつつ綜合的にとらえる運動体を設立した点にあります。

こうした事業は、科学の定義と同じく組織的に細分化した国が主導するだけでは不十分であり、企業や自治体、大学や、広く一般市民の自助努力と参加が必要であることを私たちに教示し、その教えは綜合的に近代日本に求められる真理と社会正義を探究した大原孫三郎翁の「徳」として、今なお私たちの眼前に燦然と光を放ち続けています。
さて、この日は倉敷市役所で「高梁川流域や水島を拠点とした滞在型環境学習」企画会議を行ってから、倉敷市内で有志が集い新年会でした。

SDGsをテーマとした地域での実践活動について、熱い意見交換がなされました。

その底流には大原家の築いた理念が息づいています。