台風17号の影響が心配されるなか、9月23日から一泊二日の予定で地域総合整備財団(ふるさと財団)地域再生マネージャー事業のアドバイザーとして、『熊野筆』で有名な広島県熊野町で開催された「筆まつり」を視察、24日は朝から熊野町役場を会場として、役場の地方創生のご担当、ふるさと財団の担当者、小職で、地域再生マネージャー事業「事業名:熊野町観光コンテンツ創造事業」の進捗状況についてミーティングを実施しました。
本財団は、民間能力を活用した地域の活性化を支援するため、全国の都道府県及び政令指定都市が出捐して設立された総務省の外郭団体で、地域活性化につながるふるさと融資、地域再生の取組、公民連携の推進、地域産業の創出・育成支援など「ふるさとの元気を引き出す」支援事業を実施しています。
台風17号の接近により、中止の場合は23日朝6時に連絡ありとの事前申し合わせがありましたが、連絡が無かったため支度開始して早めに現地へ向かいました。
それにつけても、天候不順が原因で、準備に汗をかいた企画やイベントが中止や延期になるケースが増えすぎる昨今に閉口です。
広島駅で、台風の影響により、呉線の発車が10分ほど遅れましたが、JR矢野駅で下車、バスで、日本の筆の80%を生産する広島県熊野町へ向かいました。
広島電鉄熊野営業所は、規模の大きなバスターミナルだと感じました。
9時50分に「第85回筆まつり」会場へ向かう無料送迎バスの始発便に乗り込みました。
これまで85回の開催という数字が示すように、ここまで積み重ねられてきた歴史と伝統を感じます。
まず小高い丘の上に「筆の里工房」があります。工房の中は見事で美しい様々な筆のオンパレードです。ここまでくると芸術作品の展示販売といった印象です。書は素人ながら、気持ちは昂り、目の保養にもなります。
ベランダに出ると熊野町が眼下に広がり、蝉の鳴き声がまだ聞こえるなかで、床にオニヤンマが止まっていていました。
大きなため池のわき道を抜けて坂を下ってゆくと、熊野中学校が見えてきました。この運動場にステージが組まれたイベント会場がセットされていました。
数多くの屋台が出そろい、その入り口にお目当ての、ハーブを活用したおしゃれなブースが目を引きました。
まず、手作りの商品の数々を眺めながら説明をお聞きしました。ポプリやリースなど丁寧な作りです。軽トラを改造した生花を販売するエリアも確保されていました。
お勧めの「特製ハーブティ」とハーブの香りがたつ「ベーコンポテトチーズ」と「ハーブマヨたこ焼き」を購入して、さっそく賞味させて頂きました。味は上出来で、ぱっくり完食いたしました。
ステージの様子をしばらく眺めてから、熊野本宮神社がある伝統ゾーンの見学に参りました。
ここでの圧巻は熊野高校書道部5名による「大作席書(たいさくせきしょ)」でした。
畳12畳ほどはあるでしょうか、約5分間、息を合わせて大きな筆を使い、曲に合わせて力強く一気に書き上げました。
去年の7月豪雨災害への復旧・復興の祈りを込めた書に感動いたしました。
これを見学させて頂ける経験だけにでも来場する価値があると感じました。
それから自作の筆づくり体験をさせて頂きました。
筆の制作のプロセスを理解でき、とても面白かったです。
傷つけず持ち帰れるよう、丁寧にオリジナルの紙袋へ入れて頂き、結構な記念になりました。
このように、歴史と文化に彩られた「筆まつり」は、新たなまちづくりへのチャレンジをお題にしながらみどころ満載、町内を徒歩で巡りながら、熊野町役場での熟議に備え、時間の許す限りあちらこちらでヒアリングを実施しました。
外国人の姿もある中で、ランチも凝ったおしゃれなお店で共に楽しみました。
夕方、ふるさと財団の皆さんと合流して、イベントを再び一回りして、宿である民宿に荷物を置いてから夕食を中華飯店で共にいたしました。
いろいろな地方創生談義を、ここ熊野に重ねながら、明日の会議に備えて濃密な時間を過ごしました。
24日は、朝9時から熊野町役場3階会議室をお借りして、町役場のご担当2名から、地域再生マネージャー派遣による熊野町観光コンテンツ創造事業の進捗状況について、計画書とのすり合わせを実施、予定通りに進捗している点と苦労している点に分けながら、事業の効果や評価をさせて頂きました。
事業展開に際しては、まず事業の目的、ねらいは、熊野町は、広島市、東広島市、呉市のベッドタウンとなっており、人口は約24,000人であり、徐々に減少しており、観光振興上の課題は、観光資源が筆に特化されており、新たな観光コンテンツを生み出していく必要がある点であり、観光コンテンツとしては、「食」が重要であること、筆による外面の美との関係性から、内面の美を追求することが重要であると考え、町職員からの発案によりハーブに取り組むことになったことが経緯です。
こうして2018年度から、「熊野町観光コンテンツ創造事業」として、地域住民向けのセミナーの開催を予定するも、平成30年7月豪雨災害の影響によりスタートが遅れたが、2018年度はセミナー2回、ワークショップ2回を開催しながら、人の輪を広げ、ハーブ栽培に着手、今回の「筆まつり」に、ハーブブースを出店、商品販売にまでこぎつけたという報告がありました。
概ね、事業計画通りに事業が進んでいる点に安堵いたしながらも、新たなチャレンジの可能性について言及させて頂きました。
そのあとで、ハーブ栽培をしている現地の畑を見学させて頂きました。
加工や流通販売も重要なわけですが、まずは原材料となるハーブ栽培が、夏場は雑草の伸びが早いことや猛暑対策としての水やりの苦労など、現地を視察しなければ理解できない苦労話をヒアリングさせて頂くことが出来ました。
拙いながらアドバイスをさせて頂きましたが、同時にとても多くのことを学ばせて頂くことが出来ました。
熊野町の「世界一の筆」が、ますます世界に向けて美を創る「道具と技」の発信に向け、また、ハーブ事業との組み合わせによる、身体のなかから美を奏でるハーブ事業と融合することにより更なる飛躍を遂げられることを祈念して広島を後にいたしました。