地域公共交通総合研究所 理事会


地域社会では、急速な人口減少と過疎高齢社会が進行しています。

政府は、地域社会における足の確保はとても重要な課題であるとして、「交通政策基本法案」を、平成25(2013)年11月1日に閣議決定、27日成立、12月4日に施行しました。

国土交通省HPによれば、この法律では、「我が国の国土を取り巻く状況は大きく変化しており、例えば、本格的な人口減少時代が到来し、2050年には総人口が1億人を下回ることが予想されているほか、都市間競争などのグローバリゼーションも更に進展すると見込まれます。こうした中で、日本の国土をどうするべきか、経済の発展をどのように維持するべきか、そして日本の再建をどう実現していくのか、といった観点から、交通政策に関しても長期の視点に立って推進していくことが必要となっています。

まず、人口減少社会にあっても活力を維持していくためには、地域においては諸機能が集約した拠点とこれを結ぶネットワークが整備されたコンパクトシティを形成することが必要です。また、大都市圏においては成長のエンジンとしての役割を果たせるよう国際競争力を強化するため、ゲートウェイ機能を強化するとともに、情報通信技術を活用したスマートシティ、高齢化社会にも対応したスマートウェルネスシティを実現することが重要です。

さらに、巨大災害にも対処するため、交通施設の耐震性の強化や交通ネットワークの代替性の確保などの防災・減災対策により、災害に強い国土づくりを進めていく必要があります。

平成25(2013)年度以前は、国土政策では「国土形成計画法」と同法に基づく「国土形成計画」が、交通インフラ整備では「社会資本整備重点計画法」と同法に基づく「社会資本整備重点計画」があり、それぞれ総合的・計画的に施策が進められていました。

一方、従来交通政策に関する基本的な法律・計画は存在しておらず、個別法に基づき個々に施策を推進していたことから、交通政策の推進に当たっての基本理念を打ち立て、関係者の連携と役割分担の下に、政策を総合的に推進する体制を構築していくことが必要な状況でありました。
「交通政策基本法」は、こうした交通に対する時代の要請に的確に応え、関係者の一体的な協力のもとに、施策を策定・実行していく体制を構築するものです。今後は、交通政策に関して、政府が一丸となって様々な課題に取り組むとともに、地域の関係者間の役割分担と合意の下で望ましい地域公共交通ネットワークを形成する新たな枠組みの構築について検討を進めるなど、政策の充実を図っていくこととしています。
この「交通政策基本法」では、まず、国民等の交通に対する基本的な需要が適切に充足されることが重要であるという認識の下に、「豊かな国民生活の実現」、「国際競争力の強化」、「地域の活力の向上」、「大規模災害への対応」など、政府が推進する交通に関する施策についての基本理念を定めています。そして、これらの基本理念を実現するために実施することが必要な交通に関する基本的な施策として、以下のような内容を定めております。

・まちづくりと一体となった公共交通ネットワークの維持・発展を通じた地域の活性化
・国際的な人流・物流・観光の拡大を通じた我が国の国際競争力の強化
・交通に関する防災・減災対策や多重性・代替性の向上による巨大災害への備え
・少子高齢化の進展を踏まえたバリアフリー化をはじめとする交通の利便性向上
・以上の取り組みを効果的に推進するための情報通信技術(ICT)の活用

さらに、交通に関する基本的な施策の策定と実施について、国及び地方公共団体の責務を定めるとともに、以上のような交通施策に関する基本的な計画(交通政策基本計画)を策定して閣議決定し、その推進を図ることとしています。」と示されています。


こうした背景のなかで、平成25年(2013年)4月に、元気なまちづくりの一環として、それを支える地域の公共交通を救う一助となることを目的に、この問題に造詣の深い研究者や実務者で構成される一般財団法人地域公共交通総合研究所が設立されました。6月20日は、両備ホールディングスにて同研究所の理事会が開催され、1年間の多彩な活動が報告され、更に今年度の事業計画が示されました。理事長をつとめる小嶋光信会長はじめ松田久社長など幹部の皆様とご一緒させて頂き、久しぶりに小嶋節を拝聴いたしました。

地域社会の足を持続的に確保するためには、様々な課題が山積しています。

規制緩和による交通事業者間の競争の在り方に一石を投じた両備グループです。

小職は交通の専門家ではないため、コメントをできる立場にはありませんが、高齢者が自動車免許を返納して、自らの意思で移動手段を持てなくなり、また、家族や近所でそれを支援する人がいないケースでは、公共交通が唯一の移動手段であると言って過言でないと思います。

少子高齢社会が進む中で、バスの運転手の確保すらままならない事態が全国で発生しています。地域社会における公共交通システムの維持・確保は、日本国憲法が定めた生存権や幸福権の保障にもつながる重要なテーマであります。

小職の専門である、コミュニティ政策の観点から引き続き注視してまいりたいと思います。