9月9日・10日、日本計画行政学会の全国大会が兵庫県宝塚市にある関西学院大学を会場に開催されました。今回第39回を数える大会のメインテーマは「多様性ある地域のかたち」(Diversity in Planning and Public Management)です。
名文であり、皆様の参考になると感じましたので、少々長文ですが、学会のHPから大会要旨を引用します。「地域・都市・街など、地域は時代の中にあって、同時に時代の産物であるとも言える。これまで東京・名古屋と開催されてきた大会では、時代として「成熟社会、縮減社会」を挙げていた。そして、『都市・地域を、新しい時代にマッチしたものに切り替えていくかという、フィージブルなヴィジョンを持つこと』、また『地域における生活の質をどのように維持・発展できるか』が、時代に求められるとしていた。地域において、時代の中で過去、現在から未来へ向けて、「どのような」「どのように」架け橋(あり方)を考えるべきだろうか。あり方として、まったく新たなものは困難であろう。地域それぞれの過去と現在を活かす「固有性」、地域の持続的発展を考える「復元性」、地域での「チャレンジ可能性」、種々の分野に広く係わる「総合性」が重要ではあるが、「あり方」として最も重要な軸の一つが「多様性」であろう。
多様性の重要さは認識されていても、地域のプラニングやマネジメントを行う軸として理解が十分かと言えば、そうではない。地域において個性と多様性が混同視されているようにも思われる。個性は現在の特質を掘り起し、生かすことが基本であるが、多様性は生み出すものである。未来を取り入れる中で、過去と現在を共に活かすことが多様性であろう。時間の前後だけでなく、多様性には、地域の生活、生産・消費、文化等の積極的な「混合」「共生」が重要である。
本大会では、「多様性ある地域のかたち」をテーマとして、「どのような」多様性を「どのように」生み出すのか、多様性は地域に理解されているのか、について、広くそして掘り下げて議論していきたい。例えば、多様性ある地域の実態(特性・歴史性ある自立した中規模都市の存在、大都市圏の「経済の傘」が外れ、成長都市からさほど遠くない位置にある過疎の地域の存在)、多様性ある社会経済的実態(地域の多様なものづくり、地域スポンサーとして地元有力企業の社会経済活動、おもてなしビジネス、飲食の業種業態、観光業)、多様性を生み出す(伝統的特色ある文化、独自性・多様性を創る自治体の独自条例、地域のインフラ・建物等の資産のリノベーション、新成長製造業)、多様性の地域理解(混合への市民の理解・評価、国際観光業)などについて、多様性を軸に地域のかたちを発信していきたい。」
岡山大学からは、防災と環境関連をテーマに環境理工学部の氏原岳人先生が2本の報告をされました。災害対応研究特別委員会企画として「東日本大震災の教訓と今後の減災対策」と題した研究です(環境のテーマは、氏原先生が指導する院生による報告です)。
さらに今回の学会にパネル・ポスター展が併設されたため、9月9日は、早朝に大学を出発、関西学院大学の会場へ到着早々に、この展示作業を済ませました。岡山大学は、G7先進国首脳会議「倉敷教育大臣会合」で各国トップ向けに展示した『地域と大学の協働による環境教育の取組』パネルを紹介し、さらに地域総合研究センターの活動資料を配布いたしました。そして、他大学や自治体の展示内容をすべて拝見いたしました。開催校である関学さんや兵庫県立大学など、創意工夫をこらした展示テーマ内容でした。
さて、関西学院大学のキャンパスは、全国の大学の中でも屈指の美観と歴史を誇っていると思います。ちなみに、地域総合研究センターのマネジメントを担当する地域連携支援室のヘッドは出身校が関学です。そこで、訪れる前に、お勧めのランチメニューを聞いたところ、なんとキャンパス内にあると教えられました。半信半疑でキャンパス内を探したら、ありました、ありました、三田牛を本格的に食せる「三田屋」さんです。「確かにうまい」、キャンパスを市民に開放しているため、ご近所のマダムらしき奥様方が、普通にランチをされています。さすが、関西私学の雄、もちろん、キャンパスは外部から人を誘う庭園作りになっています。欧米の大学キャンパスさながらであります。
岡山大学もJテラスと呼ばれるモダンなカフェをオープンするなど、キャンパス改造にまい進・健闘中ですが、私学の自由な雰囲気と個性を自然に醸成するデザインは、国立大学法人となった以上、真摯に学び・見習うべきであると三田牛を食しながらかみ締めました。
そして昼みに、図書館と関学のシンボルである時計台のある関西学院大学博物館を見学させて頂きました。関西学院大学博物館HPによれば、「当館が置かれる時計台は、1929年の移転に際して図書館として建てられました。W.M.ヴォーリズによるキャンパス構想の基点として大学全体を一望できる中心的存在に位置づけられています。建築様式はスパニッシュ・ミッション・スタイルを基調とし、各所には美しい意匠が施されています。時計台塔上部にはモザイクタイルの小ドームを据え、頂きに学院のシンボルマークの新月を冠したクロス、さらに建物に入ると1階ロビーには愛らしい模様のタイルが敷き詰められています。正面の階段を上ると吹き抜けの空間があらわれ、2階展示室(旧図書館閲覧室)には白塗りの高く美しい天井が広がっています。」と紹介されている通り、大学の歴史や人物、過去からの歩み、そして数々の収蔵品などが、わかりやすく展示されています。
クリスチャンの大学では同志社大学、国立大学では金沢大学(旧制第四高等学校)の記念館が、その建物や展示内容では見事であると感じていましたが、ここ関西学院大学も見事であります。岡山大学は旧制第六高等学校の流れを汲みますが、その歴史や歩みを知るには、岡山県立朝日高等学校に行かねばなりません。少し残念であります。
さて、校務の関係もあり、宝塚を後にして、帰路に着きました。帰りに、備前インターチェンジで降り、新しい企画でご協力を頂く事になっている、山陽新聞社の備前支局をお訪ねいたしました。三木良一デスクと平松記者が迎えてくれました。お忙しい時間帯であるにもかかわらず、われわれでは知ることの出来ない貴重な情報をご提供いただきました。
また、夜は岡山大学と岡山市が運営する地域の拠点で、おかやまスポーツプロモーション研究会(SPOC研究会)「おかやまスマート・ベニュー構想第3回MTG」が開催されました。この研究会の代表である岡山経済同友会地域振興委員長である梶谷俊介岡山トヨタ社長を座長として、日本政策投資銀行地域企画部スマート・ベニューご担当二名と岡山事務所長をゲストにお招きし、SPOC研究会からは天満屋女子陸上競技部競技部長、岡山シーガルズマネージャー、岡山大学2名というメンバーで、岡山市におけるスマート・ベニュー構想実現に向けた課題と今後の活動ステップについて、相当に具体的な内容まで踏み込んで議論をさせて頂きました。その後の懇親会の様子を教育学研究科の高岡敦史先生が撮影されました。頂きましたので、ややピンボケ(笑)ですが、貴重な記録として掲載させて頂きます。