岡山大学ティーチング・アワード

9月1日、“第19回桃太郎フォーラム”「共育力」を高める~教員・学生・職員による三者協働型の教育に向けて~(H28年度岡山大学教職員研修)が、外部からゲストや研究者をお招きして全学を挙げて開催されました。

岡山大学ティーチング・アワード表彰と受賞者プレゼンテーションでは、岡山大学ティーチング・アワード表彰選考委員会委員長の佐々木健二教授が司会をつとめられました。先進教育賞「アクティブ・ラーニング分野優秀教育賞」及び大規模授業部門では、「生命の基本原理と生活の中の生物学」と題して、異分野融合先端研究コアの佐藤伸准教授が、先進教育賞社会連携・社会実践教育分野では「現代コミュニティと地域経済」と題して小職が、先進教育賞外国語による授業分野では「観光文化交流論」グローバル・パートナーズ小野真由美講師が、そして優秀教育賞中規模授業部門では「対人援助のためのメンタライジングとマインドフルネスの心理学」と題して教育学研究科上地雄一郎教授が壇上に促され、許 南浩(ほう なんほ)理事(教育担当)・副学長から表彰状と副賞(研究費10万円)を頂き、受賞者プレゼンテーションの機会を頂戴しました。


表彰されるのは小学校のときの図工コンクール以来50年ぶりであります。

小職の授業内容を簡単にご紹介しますと、岡山大学がめざす、実践型授業の試行版として位置づけました。授業の基本形は、「スーパーグローバル大学創成事業」で目指す、「グローバル実践知修得と社会との互恵性保持」の考え方を基礎として、「準備学習」、「現場実践」、「振り返り」という3段階で進め、大学(異分野)、地域(異社会)、国際(異文化)の3要素を構成する授業を目指しました。

また、実際に岡山県内の自治体やNPO、経済界や地域団体と共に活動する学生の紹介等を行い、気づき、動機付けを支援するという授業スタイルを取り入れました。

なお、成績評価では、「アクティブ・ラーニング」と「アウトカム基盤型教育」重視の観点から、成果報告を実施して、学生相互の投票により順位付けを行い、その結果を成績に反映する手法を用いました。

表彰状は、施設で暮らす母のもとへ届けました。たいそう、慶んでくれました。

「社会連携・社会実践教育」私見

文部科学省の主導により“アクティブラーニング”という言葉を巡り、全国の学校現場でその対応がなされています。そのなかで、社会連携・社会実践教育という分野について小職の持論を簡単に申し述べます。

最近の流行というとでも申しましょうか、まちづくりや地方創生のさまざまなシーンで「ワークショップ」という手法が用いられます。参加者が自由に考えを述べ、他の参加者の意見にも耳を傾け、本音をキーワードでポストイットに書き記し、それを同じカテゴリーに集約、その結果にみなが納得する、そこから今後の課題解決に向けた方向性を見出す、というものです。

確かに、参加者は、もやもやしていた悩みが晴れた気がします。しかし、「ワークショップ」を実施したことで満足して、そこから先に物事が進まないことが、いかに多いことでしょう。

こうした手法を授業に持ち込む場合に、私たち教育者は何に留意しなければならないか、これが大事なポイントになります。さまざまな知見から膨大な研究がなされていますが、小職が大事にしている留意点がひとつあります。それは、自分自身が、学生に与える授業(課題)に対して、その地域の現場へ入り、その現状と直面する課題、その課題がなぜ解決できないのかを、可能な限り複眼的に調査・ヒアリングすることにしています。そして授業の準備段階で、自らが解決策への仮説シナリオを複数持つことにしています。その上で、学生に対して当該地域を題材にした、チームによるフィールドワークやワークショップを含む「社会連携・社会実践教育」を実施いたします。

つまり、現地現物に自らの足で接した結果をまとめ、さらに過去からのまちづくりの経緯(なぜ、どのような理由で課題が発生し、解決しようとしたが、どのような理由で合意形成ができなかったか、自治体(法規制など)の限界はどこにあったのか)、さらに関係する文献や最新資料、国も含めた地域の時系列データ等を読み解いた上で、学生をフィールドに出す、そのためには、座学オンリーの授業に比べ、数倍の準備時間を要します。それでも、なかなか満足な授業をする力量が無い自分に気がつき、へこみます。

そして理想は、授業は単位取得が目的でありますが、単位を取得した学生が、次は自主的に当該地域へ出向き、具体的な課題解決に向けて動き出してくれる事であります。

そこに到達した学生は、必ず「生きる力」が身につくと確信しています。