日本計画行政学会総会

6月18日、一般社団法人日本計画行政学会総会が日本大学経済学部7号館で開催されました。このたびの総会では、岡山大学阿部宏史理事(総務企画担当)・副学長が、学会副会長に選任されました。理科系と文科系の研究者や専門家が集う学会としては、1000名を超えるメンバーが全国規模で揃う名門の学会です。総会の末席からではございますが、阿部理事のご就任を心よりお祝い申し上げました。

総会に続く学会では、『地方創生』をメインテーマとして、はじめに内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局の山崎史郎地方創生総括官による基調講演「地方創生と人口減少克服」がありました。地方創生とは、消滅が危惧される人口の少ない都市ばかりではなく、地方の中核都市はもとより、東京も時間差こそあれ、人口減少に見舞われる地方都市であることに違いはありません。ただし、現行の地方自治では東京もひとつの地方に位置づけられるため、地方分権を進める際には、政策に違いがなければならないのです、と持論を展開されました。

また、札幌市は北海道、あるいは福岡市は九州全域から若者を吸収して人口が増加しているようにみえるが、その実態は、東京への人口の「放水路」のようになっている点は看過できない点、また、女性の社会進出が求められる中で、例えば、奈良県は女性の就業率が極めて低く、仕事を求めて県外へ出てゆく女性が多いという結果を招いている点などを示されました。とりわけ、少子化の課題については、厚生労働省は介護保険制度の確立はじめ、長きにわたり高齢化対策に傾注し、少子化施策が後手に回ってきたという反省もされました。

こうしたなかで、これまでの反省点を挙げれば、①タテ:縦割り行政、②ヨコ:一律横並びの政策、③セン(浅):政策が地域に浸透していない、④タン(短):単年度主義、政策期間が短い、というキーワードに集約される、と総括されました。また、地域の都市間連携についても、これまでは自治体単位で予算がついていたため、本気で地域相互での話し合いが持たれなかった点や、さらに電通の調査を引用しながら、地域の住民は急速に進む人口減少について、未だ多くの国民は認識不足である点について、改善策の実践的な展開が急務であることを指摘されました。こうした「不都合な真実」について理解を得なければ、地方創生は成功しない点、最後に「東京一本足打法」ではダメだめで、地方が頑張らねばならない、代表選手を聞かれると、毎度毎度、高松市丸亀町商店街と富山市だけしか出てこない地方モデルは寂しすぎると指摘されました。

結びには、本気で産官学金労言が一体となって、まちづくりをしなければ、仕事は創造出来ない(雇用は生まれない)、仕事が創造出来なければ若者は流出する、流失が続く都市(特に20歳~39歳の女性が居ない)は消滅するしかない、と断言されました。

続いてパネルディスカッション「地方創生政策の現状と展望」がありました。パネリストは、大西達也氏(一般財団法人 日本経済研究所 調査局長兼地域未来研究センター 副局長)、金野幸雄氏(一般社団法人 ノオト 代表理事)、菅正史氏(下関市立大学経済学部 准教授)、中川雅之氏(日本大学経済学部 教授)、山崎史郎氏(前掲)で、コーディネータを川上征雄氏(株式会社 都市未来総合研究所 特別研究理事)が務められました。

現在、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部から地方創生人材支援制度で岡山県井原市へ派遣されていることもあり、講演いただいた山崎史郎地方創生総括官には、日頃のご指導への御礼を申し述べ、立ち話ながら意見交換の時間を持たせていただきました。

とても興味深い学会の総会でありました。