4月5日(木)、ホテルグランヴィア岡山「ルビーの間」において、岡山商工会議所と岡山大学のトップ懇談会が開催されました。出席者は、岡山商工会議所から、岡﨑 彬会頭、若林昭吾副会頭、古市大蔵副会頭、剱持 一副会頭、畠平泰彦理事の5名、岡山大学からは、森田 潔学長、荒木 勝理事・副学長・地域総合研究センター長、三村 聡地域総合研究センター副センター長・教授(小職)、高月希一郎企画・広報課長の4名です。
▲ 会議所懇談会風景。左側中央が岡崎会頭
メインテーマは、岡山大学が進める「『森田ビジョン』に基づく地域連携の取組み等について」で、冒頭に岡山大学側から岡山商工会議所に対して、学都構想への取り組みの現状についてご説明を申し上げ、続いて、地域との関係、海外の大学との関係、国内の大学との関係、文部科学省プロジェクトとの関係(『キャンパスアジア』、『留学生の街』)などの具体的な取組内容をご紹介申し上げました。これを受けて、岡山商工会議所と岡山大学の協力体制を念頭に置いた今後の進め方について、フリーディスカッションがなされました。
また、この場では、岡山大学が考える「学都」の定義について明示いたしました。
“『学都』とは、森田ビジョンにあるように、大学と都市・地域が共同で作り挙げていく魅力的な空間である。そこでまず『学都』の構成部分が明らかになる。大学という高等教育機関と、都市とその周りに存在する地域社会が不可欠の構成部分である。さらにこれまでの我が国の『学都』という言葉に込められた意味として、歴史的に形成された高度な学術機関の存在、またその歴史のなかで形成されてきた、固有の佇まい、風景、地理的集積というものがある。したがって、それらの構成部分が『学都』に不可欠であるが、さらに今回われわれが追求している『学都』は、これらの構成部分が有機的に結びあい、共同して『学都』を創生するという動的な、機能的な、意志的な側面が含まれている。したがって、当面『学都』を以下のように定義しておく。”
つまり、『学都』とは、高度な教育機関と、都市・地域が、それぞれ固有の伝統・風景を持ちながら、知的・美的な意味において魅力的な、また経済的社会的にも豊かな生活空間を、共同的意志を持って、その担い手とともに、生み出そうとしている複合的地域。であると言えます。
続いて、荒木勝理事・副学長(地域総合研究センター長)から、学都を目指すための現状認識と今後に向けた課題提起をご提示しました。
その要諦は「これらの都市は高度な学術機関を有した存在であるが、この学術機関が都市の生活に有機的に意志的に関わっていることが重要である。人材養成の循環が実現しているだけでなく、都市も大学も、その固有の意志として、共同して魅力的な生活空間を実現しようとしていることが重要である。逆に言えば、大学と都市が単に並存しているだけでは、学都としては死んでいるのである。私たちが研究し、実現しようとしているのは、いわば生きた『学都』である。
また、以上の意味において、巨大な都市においては、学都形成は極めて困難であり、他方で、都市的機能が弱い小都市でも学都形成は困難であろう。中核的な都市と総合的で高度な大学を擁する地方の中核的都市においてこそ『学都』形成の客観的条件はある程度備わっているといってもいいであろう。また同時に今日の高度な科学的水準にかなう高度な機能を持った大学・都市空間を創造することが求められている。
さらに今日求められているのは、大学と地域・都市双方における、共同して『学都』を作ろうとする主体、担い手の形成という主体的条件である。その意味において『学都』を作ろうとする人を作る人づくりこそが最も重要な課題である」
この課題提起に対して、岡山商工会議所岡崎彬会頭から、「岡山大学がめざす学都の意味を良く理解することができました。会議所としても共通するまちの課題や協力できる領域については、互いに知恵とそれぞれが持つ資源を出し合い、未来の岡山をより良くするために力を尽くしましょう」というお言葉を頂きました。
特に森田学長が、大学としても路面電車の延伸を大きな施策として取り組みたいとの意思表示をしたことに対して、会議所側からも、大変に難しいテーマであるが、もう一度、知恵を出し合う方向で調整・検討に入りたい、との回答を頂きました。この話題のなかで、岡山大学が学都の海外における研究都市・大学と位置付けているフランスのストラスブール市(大学)について、小職より3月に訪問調査した写真をお示ししながら、ストラスブールと岡山の類似性、学ぶべきコンセプト、公共交通と個別交通が共存する交通まちづくりについて話題提供をさせていただきました。
今後は、引き続き両者で検討会を継続してゆくことで合意しました。未来の岡山のまちづくりに向けて大きな一歩を踏み出した、大変に意義深い懇談会であったとの印象です。