夏休みの南国土佐[1]

高知県高知市と愛媛県西条市を結ぶ一般国道として国道194号があります。

この国道は、四国山地のど真ん中を南北に貫くため、整備がされる前は、過酷で危険なコースとして利用者が余りいない幻のような道路でした。特に高知と愛媛の県境にある寒風山トンネルは、今は快適ですが、昔のトンネル周辺は土砂被害が多くて、肝試しに近い伝説のトンネルと言われるほどでありました。

8月12日の早朝起床、いまは快適に走れるこの道路を抜けて高知市内を目指しました。

途中、高知県吾川郡いの町吾北地区にある「道の駅633美の里」で小休止です。この道の駅は国道194号と国道439号が交わる場所にあることから、この2つの数字を足した「633」に、自然の美しさを表す「美」をつけて「633美の里」と名付けられたそうです。入り口にムササビの敷き物が置かれていましたので、「633美」は「ムササ美」をかけて命名したのだと思っていましたら、もっと深い理由があるとわかり、妙に感心しました。もちろん、ここ吾北地区には、むささびが生息しているとのことです。

さて、店内には、変わった野菜が目に付きました。これは、いの町農業公社が、道の駅の目玉にと珍しい野菜のシリーズ化を発案し、「ごほく名珍菜シリーズ」と名付けて販売しているとのこと、地方創生に一役買っているようです。

さて、仁淀川沿いを走るうちに、朝食を抜いたため、小腹がすいてきましたので、少し早めの昼食をとることにしました。丁度、水辺の駅「あいの里仁淀川」の看板が目に飛び込んでまいりました。ごはん処「山屋紅」とありましたので入店しました。そのメニューに「つがにうどん」「つがにラーメン」なるメニューが目に止まりました。一般にはモクズガニ(藻屑蟹)と呼ばれる川蟹のことをご当地ではではツガニと呼び、小職の田舎でも、つがにと呼んでいたかも知れません。幼い頃に、しばしば食べていたのですが忘れました。このカニが入ったラーメンを食すことにいたしました。期待に胸を膨らませて待つこと10分ほど、運ばれてきたラーメンにカニの姿が見えません。一方で、高知のご当地野菜「リュウキュウ(ハスイモの茎)」とナスが、どっさりと入っています。

お店に人に問いましたら、小さい粒状のものが、“つがに”であると言われました。あとで聞いたのですが、実は、ここの近所に「あおぎ」という知る人ぞ知る、“つがに”がどっさり入った食堂があるそうです。残念でした。しかし、ここ「あいの里仁淀川」のつがにラーメンも、確かに“つがに”のダシの香りはありました。また、店の窓から仁淀川の流れが見渡せましたので、つがにラーメン1杯700円の価値はあったと思います。

さて、腹ごしらえができましたので、仁淀川の河原へ愛車を乗り入れ降りてみました。炎天下であり長居はできませんでしたが、清流仁淀川の自然を堪能することができました。

さらに仁淀川を南下、次に、道の駅土佐和紙工芸村QRAUD(くらうど)に立寄りました。仕事柄、相当数の全国にある道の駅に立寄っておりますが、この道の駅は、小職が訪ねた道の駅ではベスト10に堂々と入る、たいそうおしゃれな施設です。HPに「土佐和紙工芸村QRAUDは、高知県中部に位置する、土佐和紙の町、いの町にある「道の駅」です。眼下には、清流仁淀川が広がる自然豊かな場所に位置しています。私たちの施設は、「道の駅」として、地域交流の場としての役割を果たしながら、県内外から訪れるお客様への体験型の観光拠点としての施設づくりを目指してきました。施設内にはレストランの他、古い蔵を改装したギャラリー、産直市、土佐和紙の紙すき体験場の他、周辺観光の拠点として利用出来る宿泊棟もあります。ここ、土佐和紙工芸村QRAUDで、高知県仁淀川流域の魅力をたくさん見つけていただければと思っております。」とあります。

実際に「豊かな自然に包まれた静けさの中、洗練された大人のための寛ぎの時間と、カヌーや紙すき、そして機織体験等、様々なアクティビティがあなたを待っています。」に惹かれて、全国的に名高い土佐和紙の「紙すき」を実体験、オリジナルはがきを製作してみました。体験教室はハガキ8枚草花入りのコースで600円でした。乾燥させる待ち時間を含めて約60分の工程です。参加者に外人さんが多いのに目を見張りました。待ち時間には、土蔵を改装したギャラリーや特産品コーナーも洗練され楽しませてくれました。また、仁淀川でカヌーを楽しむ人たちを眺めても飽きません。大人の時間を満喫させて頂きました

さて、午後3時には、高知市内から田園風景が広がる春野町にある、今夜の宿「天然温泉はるのの湯」に到着いたしました。宿と言っても、本来は11種類のお風呂やプールがウリの立寄り湯がメインの施設です。はるの温泉(28.3度)、泉質はナトリウム/カルシウム、塩化物温泉です。口に入ると、まことに塩辛い泉質でした。

一風呂浴びてから、今夜はよさこい祭りのフィナーレ後夜祭と言うことで、高知市内へ出かけました。よさこい祭りは、毎年8月9日(前夜祭)10日、11日(本番2日)、12日(後夜祭・全国大会)の4日間、高知市内9カ所の競演場・7ヶ所の演舞場を中心に約200チームが参加、踊り子は皆さん手に鳴子を持って踊ります。また、大型トラックを改造した派手な飾り付けに大音響のアンプとスピーカーを搭載した、祭りの車両が何台もまちに出て祭りを盛り上げています。

そもそもは、戦後の荒廃期に、まちや商店街を盛り上げ、不況を吹き飛ばそうと、高知商工会議所が中心となり始まったお祭りだそうです。その後、参加団体と人数は増え続け、いまや“よさこい”は全国区の祭りに成長を遂げています。大学でも地元はもとより、早稲田大学や同志社大学チームの姿がみえました。絶えず新しいものを取り入れ、参加するチームは個性化が進み、高知県の伝統的な民謡からロック、サンバ、クラシック調の音楽まで多様ですし、化粧や髪型、衣装や道具立ても多種多彩でした。お決まりと言えば、「鳴子を鳴らしながら踊ること」だけながら、大人数の踊り手の息の合った演舞と音響の凄まじさに圧倒されました。丁度、高知城の場内に大きな演舞場が設営され、歴史に彩られた高知城の追手門や堅牢な石垣の隣に花道まである演舞場がしつらえてありました。そこで順番に繰広げられる“よさこい”は圧巻です。最初は袖のあたりで立って見物していましたが、幸運なことに、途中でステージの最前列のいす席が空きましたので、1時間ほど、ゆっくりと、いろいろなチームの演舞を堪能させて頂きました。

手に汗を握りながら演舞に見とれるうちに、さすがに喉が渇いてまいりましたので、土佐へ来たら“鰹のたたき”です。鰹を肴に喉を潤そうと「ひろめ市場」へ移動しました。ところが平日でも昼間から賑わうスポットであり、こちらは空席が見当たりません。

よさこい祭り ひろめ市場

よさこい祭り ひろめ市場 (この他の写真は夏休みの南国土佐[1]の記録(三村聡研究室)にまとめていますので、よろしければそちらもご覧ください)

かといって、歳をとりますと、屋台のたこ焼き、焼きそば、という訳にも参りませんので、仕方なく群集を掻き分けるように商店街の裏通りを抜けて、昔訪れた記憶をたどりつつ、ようやくお目当ての寿司屋さんを探し当てました。そこで念願の“鰹のたたき”はじめ名物“皿鉢料理”にありつきました。

ヨーロッパでは夏至の日の夜に妖精たちの力が強まり、祝祭が催されるという言い伝えがあると言いますが、まさに土佐でみる「真夏の夜の夢」と言った生涯思い出に残る一夜でありました。