5月15日、ストラスブールのまちづくりの専門家であるヴァンソン藤井由実先生を岡山大学へお迎えして、シンポジウムを開催しました。今年2月にストラスブール視察では、ヴァンソン先生に大変にお世話になりました。今回のシンポジウムでは、フランス・ストラスブールの市民参加、スポーツ振興、公共交通政策について、市民の皆さんや学生に参加いただき、岡山市の交通まちづくりに、その経験とノウハウを生かすために活発な議論を展開いたしました。
全体の司会進行は、岡山大学地域総合研究センター石丸香苗准教授です。まず、開会挨拶が岡山大学 荒木 勝 社会貢献・国際担当理事・副学長からありました。基調講演では「フランスと日本の都市交通政策地方創生への”考えるヒント”」と題してヴァンソン先生より、フランスの最新の都市交通事情の紹介と公共交通を活用した都市活性化政策を進める上での合意形成について、その仕組みやプロセスを丁寧にお話頂きました。豊富な資料と実際の写真を組み合わせたお話は、とても説得力があり、参加者は全員が深く聞き入っていました。また、地方中核都市である岡山市が、今後、いかに公共交通を中心とした都市交通政策を進めるべきかについても大いなるご示唆を頂くことができました。
▲ ヴァンソン先生
岡山大学側からは、「フランス視察に学ぶ岡山市の地方創生」と題して、まず、岡山大学地域総合研究センター岩淵泰助教が「フランスの大学改革と地域振興、続いて岡山大学大学院教育学研究科の高岡敦史講師から「市民参加によるスポーツまちづくり」、そして3番手として小職より「おかやまモビリティ研究会」の設立提案について話題提供をさせて頂きました。そして会場と活発に質疑応答がなされ、最後に「総括」としてヴァンソン先生から「岡山市都市交通政策へのアドバイス」、荒木理事から「地方創生と国際学都への道筋」についてコメントを頂き盛況のうちに閉会となりました。
今の岡山市に求められていることは、地域コミュニティの根源的役割である生活者の視点に立つ住環境の改善や安全・安心のできるまちづくりに向けた検討であると思います。こうした検討を「おかやまモビリティ研究会」を設立して進めることにより、地域の持つ歴史的資源・自然の豊かさを維持・継承しながら、新たな都市・交通計画を住民参加でプランニングして参りたいと思います。そこへ経済界や交通事業者、そしてNPOや企業、さらにはマスコミも参加しながら新たな都市交通政策が地域へもたらす経済波及効果について理解を得る活動が重要となりましょう。そうした活動が実を結べば、地域コミュニティと産官学言が真の意味で共生することが可能となり、かつ、地域の進化・発展に結び付く地域住民・NPO(モビリティの主役)、行政(専門ノウハウと資金提供、実施責任)、企業(地域経済の担い手としての誇りと地域へのCSR)が一体となりまちづくりが実現すると確信しています。
例えば、岡山市においても岡山市コミュニティサイクル「ももちゃり」の利用が高まりを見せていますが、フランスのパリやストラスブール、リヨンで行われている官民連携によるレンタル自転車プロジェクトへの取組みは興味深く、そこでの行政、企業、住民の立場については、「伝統的な地域づくりの発想から脱する」というコンセプトが貫かれています。伝統的とは、行政だけが計画立案のプロであり、地域住民への情報公開は混乱を引き起こすだけであると考えられ、企業は自社のメリットだけを考えた企業誘致や活動に専念していた時代をさします。
今日では、構想・計画段階から地元との徹底した協議とそれによる合意形成、そのための情報公開が、地域づくりにとって、益々、不可欠となってきています。重要な点は、計画決定の場に地域住民が参加可能な基盤の整備です。合意形成は、そのプロセスが透明で、かつ、参加の機会や自由が保障されていること、「施策の決定・実施段階における施策内容の提示」だけではなく、「施策立案段階からの情報共有、コミュニケーション」を目指すことが求められます。これは、合意が形成されるプロセスにおいて、「決定手続きの公正さ」が重要な役割を果たすためです。設立準備が進む「おかやまモビリティ研究会」では、こうした点に留意して、よりよい岡山市の交通まちづくりを進めて参る所存です。皆様方の応援をよろしくお願い申し上げます。
▲ 2015年2月ライン川にて