10月9日のこの日の金沢市内は台風の接近に伴い、暴風警報が出され武蔵が辻のオフィス街を歩くのに難儀どころか少し怖さを感じるほどでした。とは申せ、2015年春の北陸新幹線開業を控えた金沢のまちは、ますます気品に磨きをかけながら、しかも活気に溢れている印象です。
初日は、コミュニティバスで「近江町市場」まで参り、午前中の市場を見て歩きました。
改装・お色直しを済ませた場内は、市場というより地元生鮮食材が並ぶ商店街と言ったほうが正確でしょう。能登沖をはじめ近港で水揚げされた活の良い魚介類や北陸のみずみずしい野菜が、所狭しと並びます。魚介類では、ノドグロ、甘エビやイカ・タコ、ズワイガニ、香箱がに、野菜は、秋本番とあって松茸をはじめ珍しい地元のきのこ類、自然薯、加賀レンコン、加賀野菜、能登野菜の数々が見事に陳列されています。
岡山市でも、駅前の岡ビル(市場)の建て替え計画が進行中だとか、ぜひ、こうした近江市場にみられる地元の海山物や野菜のブランディング化、そして観光スポット化を視野にいれた取り組みにとの思いを強くしました。
近江市場をあとに、徒歩でステンドグラスの神門が目を引く「尾山神社」へ参詣して、武蔵が辻を香林坊へと歩き、金沢市役所に隣接する「金沢21世紀美術館」をゆっくりと時間をかけて見学しました。
この美術館は従来型の作品をジッと見つめるスタイルの美術館とは全く趣が異なります。ぜひ、一度、お出かけになられてはいかがでしょうか。きっと現代美術に対する認識や常識に変化をもたらしてくれると思います。
初日のまち歩きでは、片町1丁目から、途中に金沢パティオや堅町ベルセルをみながら新しい商店街に衣替えをしている堅町通りを堅町交差点まで歩きました。この通りは、金沢の伝統の工芸品や書店から流行の先端をゆくアパレルショップまで、トラディショナルとコンテンポラリーが共存する、未来型の商店街に仕上がろうとしています。大型ショッピングモール何するものぞ、との意気込みが感じられました。
また、後述する「学生のまち市民交流館」を外から眺めさせていただきました。複数組の学生たちが、活き活きとした輝きを放ちながら議論を繰り広げている姿がみえます。座敷では立ち上がって熱弁を振るう学生もあれば、テーブル席では手に資料を掲げ皆に説明する学生、パソコンを駆使して、なにやら解説する学生など様々です。
金沢では、金沢大学をはじめ、ほとんどの大学が郊外移転をしていると聞きます。授業のあと、ここ片町の中心市街地までみんな集まるだけでも一苦労なのに、そんな様子は微塵も感じられません。次々と台風の影響で雨が降りしきる中を集まるのです。われわれもまちなかキャンパスを開講していますが、この光景には遠く及びません。岡山にも欲しい光景です。
二日目は、朝から犀川沿いを散策しました。早くから釣り糸を垂れる人々、犬の散歩を楽しむ人、ジョギングする人、そこには、ゆったりとした川の流れを眺めながら至福の時を過ごす市民の日常がありました。こうした光景は岡山城、後楽園付近の岡山市内と変わりありません。歴史ある県都を流れる犀川と旭川は市民にとってかけがえのない自然資産です。
さて、犀川沿いバス停で観光バス(社内はレトロ調の木造)に乗り込み、近江町市場で下車し、「駅前ふらっと通り」と名付けられた町並みを金沢駅まで歩くことにしました。
まず東本願寺金沢別院を拝観して、老舗の仏具屋などが並ぶ町並みを散策、安江町北にある照円寺を金沢駅の方角へ向かい、此花町の古い商店街を見学して駅まで戻りました。最後にイオンモール岡山出店を踏まえて金沢駅バスターミナルに隣接する7階建て金沢FORUS(イオン)を全フロアウォッチして帰路につきました。
さて、公務では、金沢市役所にて金沢市商店街連盟からご紹介いただきました金沢中心商店街まちづくり協議会の山本隆文前会長から20年以上に及ぶまちづくりの取組み、そして金沢市市民協働推進課と企画調整課から行政として学生参画への支援のあり方についてヒアリングさせていただきました。
金沢市は「学都金沢」(金沢市HP:金沢は、明治19〜20年(1886〜1887年)に、全国五学区の各学区において官立の高等中学校(※)が設置された5都市のうちの一つ。その後、金沢市及び近郊には、次々と高等教育機関が開学し、現在、18の大学・短大・高等専門学校と、29の専門学校が集積(平成21年度学校基本調査による))の伝統を活かし、「学生のまち推進条例」(金沢市HP:学生がまちを学びの場又は交流の場としながら、まちなかに集い、市民と親しく交流し、及び地域における活動等に取り組むほか、市民、町会等、高等教育機関、事業者及び市が一体となって学生の地域における生活、自主的な活動等を支援することにより、学生と市民との相互の交流及び学生とまちとの関係が深まり、にぎわいと活力が創出されるまち)を制定、さらに広く学生たちが集い、まちづくりについて語り合い、その結果を実践する取組み拠点として「学生のまち市民交流館」(住所:金沢市片町2丁目5番18号 施設規模:敷地1,458.89m2、学生の家;木造瓦葺2階建延べ床面積590.93m2、(主な施設)1階;和室、サロン、土蔵 2階;和室。交流ホール;鉄骨造瓦葺平屋建延べ床面積300.20m2)を開設し、年間に学生達を中心に約2万6千人の利用があると言います。
若いエネルギーが、金沢のまちづくりに遺憾なく発揮されているのです。経済界や商店街、行政、大学が一体となったまちづくりの手本が金沢にはあります。
さらに金沢大学地域連携推進センター(金沢大学HP:金沢大学は、「地域と世界に開かれた教育重視の研究大学」として「教育」「研究」「社会貢献」を使命としています。金沢大学地域連携推進センターは、この3つの使命のうち「社会貢献」を担う役割を期待されています。大学の有する人的・物的資源を活用し、地域社会との連携を推進し、総合大学にふさわしいグローバルな視点を持ちながら地域の課題解決に取り組んでいます。)へ横山壽一センター長をお訪ねして、金沢大学の地域貢献・創造、社会貢献・創造への取組みついてお話をうかがいました。
横山センター長のお言葉をHPから引用させていただくと、「地域には、あらゆる人間の営みが集積され反映されています。その営みに応じて地域は多様な姿をとり、時にはより快適で豊かな人々の暮らしを支え、時には人々の暮らしを脅かして住み続けることすら困難にすることさえあります。どのような地域を創り上げるかは、何よりもそこに住む人々の選択に委ねられるべきですが、時代の変化のなかで、住民の意思では如何ともしがたい状況におかれ、人々の希望とは異なる姿に変わってしまった地域も少なくありません。その背景や要因を明らかにし、地域再生のために必要な条件を科学的に明らかにし、住民のよりよい選択に寄与することこそ大学が果たすべき社会貢献の柱です。
地域は多くの要素に影響を受けるがゆえに、いつでも多様で複雑な姿をとり、解決すべき課題も多様かつ総合的です。したがって、地域 との連携も、より包括的で総合的な方向をめざす必要があります。金沢大学は、総合大学として自然科学、人文科学、社会科学のすべての 分野の研究者が揃い、様々な側面から地域の課題にアプローチできる力を備えています。しかし、地域との連携でこうした総合力を十分に発揮できているとは言えません。これまでの成果を踏まえつつ、分野を超えて総合力で地域と関わる取り組みを広げていきたいと思います。」と記されています。
まさに岡山大学も、学都岡山の創成をめざして、これからが本番であると意を強くさせていただきました。
金沢の皆様方の熱意とたゆまぬ努力に脱帽です。まさに「学都の気骨」をお教えいただきました。