GW後半、5月2日から5日まで3泊4日の日程で、2019年度(令和元年度)岡山大学教養科目実践型教育『留学生と学ぶ日本伝統文化』を実施いたしました。
本科目は、山陰を代表する名湯「三朝温泉」がある「日本遺産指定第1号」の鳥取県三朝町で、国指定重要無形民俗文化財に指定された三朝温泉花湯まつりの中で、陣所(ジンショ)と呼ばれる大綱引きへの参加体験を主眼に置いた授業で、今回で4年目を迎えます。
さて、陣所とは、五穀豊穣と商売繁盛を願う綱引きであり、東が勝てば豊作、西が勝てば商売繁盛になると言われ、留学生と日本人学生約20名は、120年前から伝わる祭りに参加しながら、地域の皆さまと共に日本の歴史・文化・祭礼を学び多文化共生について話し合いました。この期間中は天候にも恵まれ、山や里は新緑にあふれ、まちのあちらこちらには、旬のタケノコや山菜、野菜が所狭しとならんでいました。
まず初日の5月2日は、つたを編む綱作りの事前準備作業です。まず綱を編むためには、つたを柔らかくしなければならず、そのため川に浸けておいたつたを取り出す作業から手伝いました。
二日目の5月3日は、「陣所(ジンショ)」“大綱引き”準備開始です。つたから綱を編む作業「綱がらみ」を、地域の皆さんのご指導の下で終日実施しました。そして夜には留学生や学生たちは、東西二本の巨大な綱を編みあげることが出来ました。天候に恵まれ、爽やかな風が川面を吹きわたります。
そして三日目の5月4日は、朝から三徳山三徳寺の国宝「投入堂」に参拝しました。ここは三朝温泉と共に、日本遺産第1号に認定されており、日本で最も参拝が難しく危険な国宝のお寺とも言われており、参道は険しく、真剣に向かわねば事故を起こします。この参拝により、霊験あらたかな人と自然が融合する修験道を体感することが出来ました。
つまり、「三徳山投入堂」への道は六根清浄を表し、断崖絶壁での参拝により「六根(目、耳、鼻、舌、身、意)」を清めます。そして六感治癒として、麓の三朝温泉での湯治により「六感(観、聴、香、味、触、心)」を癒すという、日本独特の自然と人間の調和を説いた教えを、留学生も学びました。そして夜は「陣所大綱引き」の本番に参加、そして後片付けまでフル参加することで、伝統文化の保存と地域の取組み、そして日本文化体験を行い、最終日の5月5日は、合宿所において、気づきと振り返りの授業を通して、多文化共生の大切さについて理解を深めあいました。
また、三朝町長さんとは、岡山大学の連携や観光まちづくりについて意見交換を行うことが出来ました。
今回の学びでは、三朝温泉花湯まつりの意味とその成り立ちを学び、留学生と日本人学生が地域の皆さんと一緒の行動をとることにより、学生も地域の人々も海外に向けて日本の文化を紹介する力を養い、こうした実践的な学びから多面的に生きる力を学び養うことにあります。こうして、学生たちは、地域で伝わる伝統文化に対する興味や運営スタッフの苦労について理解すると同時に、将来、まちづくりに関わる人材となることを期待しています。
3泊4日という滞在期間ながら、合宿の事前の準備と、事後の振り返りを大切に、令和元年度は、留学生と日本人学生合わせて20名を超える大所帯の参加となり、このような規模で実践型の教育が可能であったのは、地域や三朝町役場の皆さんより、授業の組み立て段階から、大きな支援を受けることができたおかげです。
それは、岡山大学と三朝町との間で、顔の見える関係が構築できたためであるとも自負しています。
*本授業の合間に撮影したこの他の写真は下記リンク先に掲載しています。あわせてご覧ください。