9月22日、朝目覚めて部屋のカーテンを開けると、網走湖畔の景色が窓一面に広がります。窓を開けて新鮮な空気を入れました。ひんやりとしましたが、その冷たさが心地よく感じられました。朝食を早めに済まし、一路、知床に向かいました。途中には畑や牧場が数多くあります。朝から牛が草を食んでいます。思わずクルマを停めてカメラを向けました。人にも慣れているようで、近づいて「モウモウ」と話しかけてみましたが、全然、意に解してくれず平気です。また、すぐ近くには高倉健の主演映画「網走番外地」で網走駅のモデル駅としてロケに使われた「藻琴駅」があり、シャッターを切りました。駅舎は喫茶店にもなっているようで、店内ではお湯が沸いて開店の準備が始まっているようです。
さて、その後は寄り道をせず、斜里町の中心市街地を迂回してオシンコシンの滝まで走りました。オホーツク海に注ぐ清水のしぶきが風で岸側まで届き、少し濡れましたが心洗われ爽快な気分です。そこから一走りでウトロに着き、さらにクルマを走らせ知床五湖を目指しました。連休とあって、途中から渋滞です。
渋滞地点から駐車場まで30分ちょっとかかり、ようやく到着です。チケットを買うと証明書が発行され、まず、諸注意をレクチャーされてから、中へ入ることが出来ました。観光協会の解説によれば「原生林に囲まれてたたずむ幻想的な5つの湖です。周りの樹林や知床連山を湖面に写しながら静寂を保っているその姿は、まさに原始の中の楽園にふさわしく、数多くの植物、動物たちを目にすることができます。高架木道の展望台からは第一湖と知床連山の大パノラマが見渡せます。」とあります。
第五湖から順番に番号が若くなるように遊歩道が設置されています。どの湖も自然が手付かずのままで、訪れる人を迎えてくれるため、本当に自然に抱かれている気持ちになれます。また、その中でも一湖はひときわ美しく、知床の山々が湖水に写り見事です。世界自然遺産にふさわしい堂々たる景色といえましょう。多くの人たちが、日常生活に戻りたくないと思うのではないでしょうか。「お見事」としか言い様がありません。
散策を終えて、ウトロまで戻り、「Seicoマート」で、名物「ようかんパン」を買い込み、船で海から知床半島を眺めることにしました。冬季は砕氷船として有名な「オーロラ号」に乗り込みました。海からの眺望は雄大で、切り立った断崖や、オホーツクの荒波にもまれてぽっかりと開いた洞窟など、どこを見ても圧倒されます。昔来た折は、カモメが群れを成して船に餌を求めて近寄ってきたことを覚えていますが、どうやら餌やりを禁止したためか、鳥たちが船に近寄ることはありませんでした。カムイワッカの滝を眺める地点まで船は進み、そこで折り返しました。「知床旅情」が何度か船内に流れます。思わず、口ずさんでいました。知床は来る人の心をつかんで離さない絶景です。
道の駅「知床」で、土産物を買って、再び、網走の宿への帰路につきました。
途中、オホーツク海に夕日が沈みかけた頃合で、丁度よく駐車スペースがあり、クルマを止めました。遠音別川の橋から下を眺めている人々がいるので、傍まで行くと、眼下には鮭が遡上している姿を直接見ることが出来ました。一生懸命に生まれたであろう故郷の上流域へ産卵のために必死です。河口では、釣り人立ちが夕日に向かって竿を振っています。その光景に眼を奪われ、河口まで降りてゆきました。水平線に夕日が沈みきるまで、祈るように凝視しました。
宿へ戻り夕食をとります。家人たちが、少し早い誕生日をサプライズで祝ってくれました。いつも家族に迷惑ばかりかけているため、申し訳ない気持ちと感謝の気持ちが入り混じり、何とも言えぬ嬉しさがこみ上げてきました。家族は本当にありがたいと、しみじみ思いました。
北海道の旅~知床
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